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第4回「抜歯」

...その2週間後。3時の予約だったが、しばらく待たされた。まぁ、こんなことはどうってことはない。どうってことがあったのは抜歯する歯が増えたことである。X写真を入念にチェックした所、上の歯が4本増えたそうな、…そんなの有りか?と言っても仕方なか。上の歯、しめて13本…そんなに沢山、歯があったの?下の歯、2本は変わらず。でもって合計15本、抜歯することになった。これって、すごいことだよね?一度に、こんなに抜いて大丈夫なのかなぁ...心配である。が、何を心配していいのか判らない。例えば、出血多量で生死をさまよう?口の中だから、その血を飲めば身体に戻る。…なんてことを考えたりしても時間の無駄か。

「痛かったら言ってね」なんて言いながら麻酔の注射を景気良く打ち始めるドクター…それが、もう痛いんやけど。2時間近く、口を開けっ放し。あごが疲れた。唯一の救いはアシスタントの女の子がオージーにしてはスタイルも良く、モデルみたいでとても可愛かったこと。私の手を握り「頑張ってね」と微笑んでくれたりしたら、もっと嬉しかったのだが...。
所変われば品変わる。日本では抜けた歯を屋根の上や縁の下に捨てるというシキタリがある。こちらでは枕元に置いておくと「歯の妖精」が来て、コインに変えてくれるという…。ドクターから見せられた悲惨な15本の歯。「フェアリーが来るから持って帰る」と言うと「こちらで処分する」と却下された。フェアリーはコインに変えてくれなかったけれど、ドクターが50%ディスカウントの大判振る舞い。「君がフェアリーだったのか?私は悪魔だと思っていたのに...」それでも1500ドル強の出費。「歯の悪魔」は痛いおもいをさせて、歯とお金を持っていくのだ。

「妙安寺ファミリーバンド」 http://www.myoanji.com/

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住所:526 City Road, South Melbourne VIC 3205
TEL: (03) 9696 6794

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第3回「入れ歯を作ろう」

 ♪明日でボクは60才、歯のない口で唄っています~♪これは20代中頃に書いた歌詞の一節。予言が的中!来年、その60歳になる私の歯に限界が来た。14、5年前、大金をはたいて歯の矯正をした。うーん、矯正かな?すきッ歯だった前歯にプレートをつけたのだ。本当の歯は残っている。その歯を削り、プレートをつけた。歯並びがよくなった。笑顔が美しい、と誰も言わなかった…。当時、一枚1000ドル。見かけを良くするために上の前歯6本。合計6000ドル。6000ドルの笑顔だった。一年前、その一本が抜けた…すると、いきなり野卑な笑顔に変わった。これはまずい。人前で笑えなくなった。しゃべる言葉はその抜けた歯の隙間から逃げていく。うーん、大いにまずい。笑わない無口な私は私ではない。なんとかしなければ…。
と、思っているうちに2本の歯がグラグラ。1本は虫食い状態。そして、やっと心を決めた。「入れ歯を作ろう」。言わなければ入れ歯とは気づかれまい…と、言いながらこれに書いてしまえば誰にでも知るところとなる。まぁこれも前回同様、羞恥心が薄れてきた証し。

 通訳に一平(註・親に似ず真面目な性格に育った不思議な奴)を伴い医者に行った。仕事柄、通院できる時間が限られる。親の権限、一平に仕事を休んでもらった。レントゲンを撮って、歯を見てもらって、今後の方針。「2週間後に上の歯9本と下の歯2本を抜歯しましょう。」とにこやかにのたまうドクター。…へっ、いっぺんに?殺す気?「抜歯は1本につき200ドル。」…げっ、11本だから2200ドル?今、ぐらついている歯3本を自力で抜くという手もある…怖いけど。これで600ドルは浮く。この案は真面目な一平に却下された。「この奥の4本は根っこだけだから半額になるかなぁ」私の心を読むドクターでもあった。抜歯する2週間後に仮の入れ歯(1400ドル)を装着。その3ヵ月後に本入れ歯となる…。私は歯によって全財産を失うことになる。

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第2回「おっぱい」

「Take Awayを注文したいけど、どうしたらいい?」「どうしたらって…?食べたい物を注文してくれれば、良いんだけれど」「そうだね。何がありますか?」「何があるって…沢山あるけど…」
流暢とは言えないが日本語を話す若い娘からの電話。「来てもらって、注文してくれる?」「うーん、そうだね。じゃぁ、行くよ。」最近、また視力が衰えてきた私。店に入ってきた小柄な客が男か女かわからなかった。キャップを被って、弛めのランニングシャツにGパン。先程の電話の娘だった。

「さっきの電話の?」「そう、です。」「はい、これメニューね。」「ありがとう」メニューを渡す時、彼女の胸元に目が行く。多少の膨らみにポッチがぽつん。「…私、日本人じゃないから。」「えっ?ああ、そうだよね。でも日本語上手だよ。」「「そう?よかった。」そういうとメニューを見始めた。前かがみになった胸元からおっぱいが丸見え!…わぁ、良いのかなぁ。不安と感動が入り混じる。

以前なら、こういう状態になったら、見たいのを我慢して視線を逸らしていたのだが…もう、釘付け状態。彼女はメニューを見ている、私はおっぱいを見ている。この時間が永遠に続くことを…。ふと、思った。この子は自分が女だと気づいていないのではないか?顔はスッピンだし素振りも男の子っぽい。きっと、そうだ。だから自分の胸を見られても気にしないのだ。私はそう勝手に解釈した。注文の品を作って手渡す。「あっ、飲み物、買っていい?」「ああ、いいよ。」冷蔵庫からドリンクを取り出し、小銭を出そうとする。「ああ、いいよ。それ、サービスね。」「え、いいの?どうして?」「いっぱいおっぱいを見せてくれたから。」以前なら、こういう言葉を思っていても口に出すことはなかったのだが…今は思ったことがぽろりと口に出る。「ふふふ。ありがとう。」意味深な笑顔を浮かべて彼女は帰っていった。

歳を経て羞恥心が薄れてきた、気がする。元来、むっつり助平タイプ。人前では理性と羞恥心でそれを出さないようにしていた。理性は残っているが羞恥心が…。これで理性まで失うと完璧に変態の助平親父になる…可能性は大。見るだけで済まなくなる。手を伸ばす…ああ、犯罪だ。

知人の結婚パーティで若く、理知的で美しく、しかもスタイルの良い娘を見かけた。「うわぁ、完璧。」それから私は彼女の姿を目で追っていた。そして、彼女に近づいていった。「君みたいなきれいな娘がメルボルンにいるなんて信じられない!」別に彼女を口説こうと言ったわけではない。思ったことが素直に口から出た。若いころ、女の子を目の前にして、こんな風に言えてたなら人生変わっていた、かなぁ…。

前回が「はだか」で、今回は「おっぱい」。こういうテーマで書けるのも薄れていく羞恥心のおかげ?思ったことを口に出す。人によっては反感を買う。そんな時は理性とユーモアでオブラート。時々そのオブラートを忘れる…。本当の「言いたか放題」が出来る年齢になったということかな。

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第1回「はだか」

夜風が火照った頬に当たり、心地よい。春の宵である。「今夜はちょっと飲みすぎたかなぁ…」元来、酒を好んで飲む。気の置けない友人と飲むと饒舌になり、酒がすすむ。しかし前後不覚になるほどの量ではない。男は少し酔いを醒ますため歩くことにした。家まではたいした距離ではない。ふと、立ち止まり、夜空を見上げた。超高層のビルやマンションの隙間から見える区切られた空である。「あれ?星…?」夜空に小さな光が一つ瞬いていた。「へぇ~。星だ。星が出てる。」男は得した気分になった。他に星が見えないか、目を凝らして夜空を見続けていた。すると、その小さな光が明るく、大きさを増してきた。「えっ?なに…」男は思わずたじろいだ。その光は急激に男に向かって降ってきた。閃光!「うわぁ!」男は眩しさのあまり、手で光を遮りながら、強く目を閉じた…。恐る恐る目を開ける。夜空を見る。いつもの闇だけの空がそこにある。男は何事もなかったように、また歩き始めた。角を曲がると青い空と海が見えた。男は駆け出して波打ち際に行った。親しい友人が泳いでいた。男は彼の名を叫んだ。彼は男に気づくと笑いながら手招きした。男は海に入るために服を脱ぎ始めた…。海に入ろうとした瞬間、数人の男たちに身体を押さえられた。「お前、こんな所で裸になって何をするつもりだ!」男は必死に抵抗した。「(ここは海だ。)裸になってなにが悪い!」

大分県中津江村のキャンプ場。男が4人、テントの中で酒を飲んでいる。生憎の雨。作業は中止。酒を飲むしかない。広場にはステージが組み立てられている。照明のスタッフがテストを行っている。明日はここで24時間の野外コンサートがある。男たちは、そのステージの仕込みに来ていた。照明のテストを眺めながら一人の男がポツリと言った。「あのステージで裸にならん?」2人の男が何も答えず、いきなり服を脱ぎだした。「えっ?えっ?」言いだしっぺの男はその反応の速さに驚きながらも服を脱ぎだした。3人に見つめられた最後の男は首を横に振った。1人を残し3人の男たちは雨の中を全裸でステージに向かった…。3人の男たちがステージに上がった瞬間、照明が消えた。テストが終わったのだ。最後の男が照明のスタッフにかけあって、再び照明が点いた。3人の男たちは全裸でステージを駆け回り、踊り狂った。ああ、この開放感(解放感?)裸になるって心地よいのだ…。

初めての登場で、こういうテーマはどうかと思いながら書いてしまいました。上がフィクションで下は私のノン・フィクション。私はこのほかにあと一度、あるパーティ会場で全裸になりました。30代で自分の身体に自信があったのでしょうかね。だからと言ってはなんですが、裸になる気持ちというのがよくわかる。他愛ない遊びですから、逮捕ってのは大人気ないですね。おまけに家宅捜査、あり得ないです。昔はトラ箱というのがあったそうで(ヨッパライを大トラと言ってたんです)一晩保護する留置場です。ここで酔いを醒まさせて、朝、トラから猫になった時「以後、気をつけろ」と説教して終わったらしいのですが…。警察も人情味がなくなったというか…ですね。

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