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第12回 「ザ・バトル ラウンド3」

 前回、投稿してから2年が経った。その間私は何をしていたのだろう?…記憶がない。昔のことは憶えているが最近のことは忘れている。いや、忘れているのではない。記憶するような出来事がない繰り返しの日々を過ごしているから、記憶がないのだ。呆けが始まったわけではないと自分では思っている。痴呆症(今は「認知症」…痴呆症のほうが症状として解りやすいと思うのだけど)は自分ではその異常な言動に気づかない。だから自ら認知症だと自覚し宣言する人はまずいない。本人はごく正常に生活しているのである。しかし他人がそれを異常な言動だと判断したら認知症となってしまう。そう判断されないために、私は常日頃から異常な言動をとるように心がけているのだ。で、今回はこの2年の間に起こった唯一記憶に残った出来事の話である…。

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 2010年5月4日。私はケンジントンにあるトオル君の家に招かれた。焼き鳥パーティーをするからと誘われたのである。何軒も同じような外観の家が立ち並ぶ住宅地。トオル君一家が住む前の住人、ハルキ家の時、その前のシノザワ家の時、はたまたその前のヒラタ・ジュンが住んでいた時にも来たことがある家なのだが正確に覚えていなかった…。「ここいらだなぁ」と思ったら、行き過ぎていた。車をバックさせた。後ろの確認を怠った。「どすん!」何かに当たった。後ろに車が居た…


 ナンバープレートの周り3箇所に微小のキズがついた。私なら「気をつけろよ」と言って笑って済ませる、その程度のキズだった。しかし相手の車の持ち主は笑って済ませてくれなかった。

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 2~3ヶ月ほど経って、相手方の保険会社から請求書が来た。修理費3000ドル。「げぇ~っ」私は思わず声をあげた。目を疑った。耳を…耳はなんにも出来なかった。あの微小の3箇所のキズからどうしたらこんな高額の修理費になるのか? 刷毛でぺっぺっと塗れば隠れるキズである。修理明細を見た。当たってもないボンネットの交換、壊してもないランプの交換、どこを塗り替えたか塗装費用、人件費等々。「う~ん、これなら3000ドルはかかるだろう」と納得した。納得したが事故には関係ない修理である。

 保険会社AIOIに事故直後の写真を送った。(この時、運良く携帯電話で写真を撮っていた。事故に気づいたトオルもデジカメで記念写真…。)「この修理には納得いかない。従って支払いはしない」と手紙を書いた。「第3者の査定によりこの修理費の金額は正当である」と返事がきた。私は金額についてクレームをしていないのだ。修理費用としては正当な金額だろうと納得している。しかし、事故とは関係ない箇所の修理費用の請求は認めないと言っているのだ。

 支払いを拒否したまま、それから数ヶ月経った。ある日、AIOIから委託されたというリカバリー(債権取立て)から手紙が来た。電話もかかってきた。日本の取立て屋を想像したからちょっとビビッた。しかしこちらの方は紳士的なのだ。無視するのも悪いから、同じように写真と手紙を書いた。しかし、彼らはただただ依頼された債権の回収のみが仕事である。「気持ちは解る。で、いくらだったら払える?」と聞いてきた。意外といい奴なんだと思った。「300ドルなら…」。話にならんと怒られた。それでも1000ドルディスカウントするからどうだ?うん、やっぱりいい奴なんだ。でも「300ドルなら…」交渉決裂!

 リカバリーの捨て台詞が耳に残った。次は裁判所で決着をつけることになる。裁判で負けたら裁判の費用を支払うことになる。今だったら修理費用だけで済むぞ。うーん、ちょっと動揺した。

 裁判になったら弁護士も雇わなければいけなくなる。負けたら裁判費用、修理費用、弁護士費用…相当な出費になる。覚悟を決めた。裁判所に行こう。納得できない金額を払うより、数倍の費用がかかったとしても納得いく金額なら払ってやる! なにより、私の主張が認められなければオーストラリアには正義はない! …私はこんなに頑固で強い人間だったのか?
AIOI側の弁護士から手紙が来た。裁判所へのお誘いの手紙である。しかし具体的な日時等は書いてなかった。行く気満々の私は次の手紙を待った。半年待っても次の手紙は来なかった…。

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 事故から一年経った頃、別のリカバリーから再び支払い催促の手紙が来た。もう面倒になったから写真も手紙も送らなかった。このリカバリーは1500ドルのディスカウントを提示してきた。私のほうも妥協して「500ドルなら」と…再び交渉決裂。そして再び捨て台詞。私は声を大にして答えた。「私は裁判になるのを楽しみにしているのだ!」


どんたく レストラン
住所:526 City Road, South Melbourne VIC 3205
TEL: (03) 9696 6794

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