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カジノ2007 落陽にのせて

5月2日(水)

帰国を明日に控えた朝。さすがにこの日だけは先にカジノに行って待っているからという訳には行かない。昨日から荷物のパッキングはある程度やっていたらしいが、そのスーツケースをベットの上に上げろとか降ろしてとカーちゃんは朝からなにかとうるさい。しかし、すべてを任せっぱなしで、カジノのことだけしか考えていない私はただ従順になるしかないのである。

やっと二人揃って出掛けられたのは昼ごろで、マホガニーに直行した。いまの状況では大きく勝ち越すのはまず無理。それならばせめてカジノに預けた虎の子だけはそっくりそのまま持ち帰りたい。そのためにはあと千ドルは勝たなければならない。などと20日間もカジノに現を抜かした泡沫ギャンブラーはいかにも小市民的な考えに落ち着く。

ところが思い通りにならないのがカジノで、バカラで逆に千ドル溶かしてしまい、この期におよんでトータルまでマイナスになってしまった。やはり博打は下駄を履くまで判らない。バカラを諦めてBJに切り替えることにして、誰も座っていないテーブルにカーちゃんと並んで座った。やはり賭けるボックスはひとつだけ。しばらくすると良い波がやってきてチップが増え始めた。調子が良くなったところで他の客がやってきて、ここに座って良いかと聞くから、即座に「ぷりーず、わんぼっくす」と答えた。この波を逃すものかと、もうなりふり構わずなのである。その波が崩れ始めたなと思ったとき席を立った。そして、また誰もプレイしていないBJテーブルに移動した。すると今度はいきなりビックウェーブである。このときほど一方的に勝ち続けた記憶はこれまでなく、我を忘れるほどだった。やがて小康状態になったと思ったときまた席を立った。背水の陣のヒットアンドウェイは計算されたものでは決してなく、ただのひらめきだった。

そして、また次に移ろうとする私をカーちゃんが押しとどめた。「アパートメントの精算していないんじゃないの?」時計を見ると午後6時。確かオフィスが閉まるのが7時頃ではなかったか遅くても7時半のはず、これは遺憾と慌ててアパートメントに引き返した。そして、この瞬間に私の20日間におよぶカジノ三昧は幕を閉じたのだった。

アパートメントのチェックアウトを終え、再びカジノにとって返した。今度はプレイするためではなく、こちらにも大事な精算があるためだ。コンプは1,400ドルだった。これを航空券代として受け取るのだが、私の航空券はほぼ1,000ドルで400ドルは無駄になってしまうのかと思いきやカーちゃんの航空券代の方に振り分けてもらって全額消化。さらに明日の空港までのリムジンの手配。そして、なによりも預けた虎の子はそっくりそのまま戻ってきた。ということは、滞在中の費用一切合切はカジノの勝ち金で賄ったことになるわけで、いろいろあったけどこれならカーちゃんにそこそこ大きな顔が出来るというもの。

まずはシャンパンを飲んで、わはは。

帰りにバカラをプレイ中のアノおじさんに「明日、日本に帰ります」と声をかけたら、日本語で「さよなら」と言ってくれた。


カジノなんて所詮やくざな遊び。でも、カジノにまつわる事柄のひとつひとつが私には一大事だった。カジノで20日間、メルボルンで20日間、それもいまは終わるが善きにしろ悪しきにしろそれは私の人生の彩りとなるのである。

カジノ2007 おわり

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カジノ2007 博才は忘れた頃にやってくる

2007 年 4月29日(日)

ランチはバークStのパブに行ってギネスとフィッシュアンドチップス。夕食はカジノ内の中華レストランで軽く取るなど、徹夜明けにも関わらずまったくカジノ中心の生活。このところトータルはプラス二千ドルを境にチップを減らしたり増やしたりの攻防。

今更ながらだけど、正直に言って私には博才がない。ここでいう博才とは確信を持って大玉を賭けられる才覚のこと。私はカジノでよく後悔する。勝てば勝ったでなぜあのとき大玉勝負に行かなかったと後悔を仕舞いこみ、負ければ負けたで一度も勝負手を打たなかったと後悔をあらわにする。あれこれ後悔があるから、こうしようああしようと考えてテーブルに着く。しかし、いざゲームが始まるといつもの小心が前面に出てしまうのだ。

カジノでは確信などといっても所詮はただの思い込みに過ぎないのだから、
博才があるからといって易々と勝てるわけではないが・・・


その青年は私の背後からプレイヤーに200ドル賭けた。それが外れると改めて1,000ドルをバイインする。小柄で童顔のチャイニーズ系の青年は人の良さそうな表情を浮かべながら、またプレイヤーに200ドルをおく。それが当たって次に400ドルにチップアップするとそれがプレイヤー側のビックベットになって、ディーラーが彼に向かってカードを滑らす。彼は立ったまま絞った。プレイヤーウイン。それを見てカーちゃんを促して席を詰め彼の分の席を空けた。次に彼が賭けたのは千ドル近いブラックチップ。それを絞り勝つと今度は小さくガッツポーズした。私はギャラリーから賭け始めて倍々にチップアップする人間がいると、その逆張りをするか、その人間が負けてしまうか居なくなるまで見をすることが多い。しかし、その時はカーちゃんに彼と同じ目に100ドルずつ賭けてくれと言い残してトイレに立った。戻ってくると案の定彼はチップの山を築いていた。そして、いまや2,000、3,000ドル単位でベットしているのだった。まもなく彼は一万ドル以上のチップを持って席を立った。見事な勝ち逃げ。同じ1,000ドルバイインでも私の方と言えばチップアップしても200ドルという細々とした賭けを続けて700ドル溶かしたのだった。

結局この日は一般フロアーと合わせて千ドルの負け。あと数日の勝負。
 

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