インタビューinterview

グルメgourmet

NOBU Chef de Cuisine 高橋 正司さん インタビュー

トップレストランのヘッド・シェフとしてグローバルに活躍

 

[プロフィール]

高橋 正司さん (通称:タカさん) Takahashi Tadashi
東京都出身、江東区育ち。
世界でも有名な高級日本食レストラン「NOBU」のメルボルン店にて、ヘッド・シェフとして活躍中。 

                                                          

インタビュアー:岸本 麻利


--料理の道に入ったきっかけは何ですか?

姉が料理を作るのが凄く好きだった影響もあり、小さい頃から料理をするのが好きだったんです。
あと、小学校の時に、義理チョコをよくもらったんですけど、そのお返しに手作りクッキーをあげたら、それが凄く好評で!!
それがはまったんでしょうねぇ。
あと、アルバイト先がずっと飲食関係だったこともあります。飲食店関係の面接は絶対に受かったんですけど、何故かコンビニのアルバイトは絶対に落ちたんですよ(笑)
 

--では、料理を学んだのは、まずはアルバイトの経験でですか?

そうです。高校の時、友達の親父さんが営んでいた鰻やさんでバイトをしていました。
高校卒業後に、料理の専門学校に1年間行って学びました。
卒業後は、東京の目白にある懐石料理屋さんに就職しました。お茶料理というジャンルですね。



--日本では、どのくらい働かれたんですか?

7,8年です。最初は寮住まいで初任給は6万円弱くらいだったんですが、出来るだけ月に1回はいいところにご飯を食べに行って、自分に投資してました。


--その後は、どこか他の国に行かれたんですか?

イギリスに行きました。知人の息子さんがロンドンでお店を開くことになり、そこで働きました。
色々あって、半年ぐらいでその職場を離れて、2ヶ月ぐらい仕事もお金もなく途方に暮れていたんですが、
縁があってロンドンのNOBUで働き始めました。
2年ぐらいしてから、メルボルンのNOBUがオープンするという事で、NOBUメルボルンで初めはSUシェフ(副料理長)として働き始めました。


--その後、ヘッド・シェフに就かれたわけですね。ちなみに、NOBUメルボルンでのヘッド・シェフとしての役割を教えて下さい。

スタッフ育成なども含めたマネージメントと、新しいメニューの考案ですね。NOBUの場合は、NOBUという既に確立したスタイルのメニューがあるのですが、それを基にアレンジしてスペシャルメニューとして出したりします。
プライベートでよくご飯を食べに行きますが、常に勉強だと思って、新しいメニュー考案に繋がるよう意識してます。NOBUでは使ったことない部位のお肉が調理されて出てきたりしますから。例えば、和牛のほほ肉とか。どうやって調理してるのかを聞いて、それを和風っぽくアレンジしたりして。


--NOBUは一番有名なニューヨーク店を筆頭に、ロンドン、東京、ラスベガス、ミラノ、香港、ワイキキ、そのほか南米各国など世界中に店舗がありますが、他のお店と異なるメルボルンならではのこだわりは何でしょうか。

食材が違います。オーストラリアは魚の種類が豊富で、特に白身の種類が多いですね。


--白身と言えば、Black Cod with Miso (鱈の味噌漬け料理)がNOBUのシグニチャー料理と聞きました。

そうです。どこの店のメニューにも必ずある定番料理です。
 

--ではメルボルンの定番料理は何でしょう。

定番料理というか、先にも述べましたが、メルボルンは、白身魚が豊富で美味しいので、白身魚のお料理が強みといえます。イギリスで働いていたから、余計に思うかもしれません。あとはウニが美味しい。タスマニア産のウニなんですが、日本人が食べても美味しいと思えるほど、クオリティーが高いので、お薦めします。
 

--NOBUメルボルン店では、日本人のお客様は比較的少ないですか?

日本人のお客様は少ないですね。だからこそ、日本人のリピーターのお客様のお顔と、その方の好みなどはいつも把握してます。
日本人のリピーターの方は、大体、お寿司カウンターにいらっしゃいます。僕と直接お話しして頂くか、他の寿司シェフとお話してもらう感じが多いですね。


--そういったお客様には、オリジナル料理などを出されますか。

そうですね。僕のバックグラウンドが懐石料理なので、やはり自然と和食料理になります。

 


--NOBUに行ってみたいけど、敷居が高いのではと思われる方もいるようですが。

そんなことないですよ。例えば、ランチスペシャル(前菜とメニューのコースか、メインとデザートのコース)は$45からあります。
あと、月、火、水のディナーには、ディナースペシャル($45のランチメニュー+サイドディッシュ+グラスワイン2杯+コーヒーか紅茶)$65というのがあります。ぜひ皆さんに気軽に来て頂きたいと思います。
 

--NOBUのお料理は、和をベースに南米や欧米のエッセンスを取り入れた創作料理と言われてますが、タカさんから見たNOBU料理のユニークなところを教えて下さい。

食材の組み合わせが面白いですね。
例えば、普通の和食の感覚だったら、お刺身にわさびをつけます。
それがNOBUだったら、Yello tailのお刺身にわさびではなく、スライスしたチリをのせます。(イエローテイル・ハラペーニョという料理で、NOBUの定番料理の一つです)方向性としては一緒だと思うんですが、そういった発想が面白いかなぁと思います。
 

--では次にスタッフの育成について。メルボルンもロンドンも多国籍で、様々なバックグラウンドの人々が集まってると思いますが、多国籍のスタッフをまとめるのは大変ですか?

NOBUメルボルン店のキッチンスタッフは、ほとんどアジア人なので、特に違和感を感じないですね。
ただロンドン店のスタッフはイギリス人を筆頭に、フランス人、イタリア人、スペイン人などヨーロッパの人たちが占めていました。
彼らはフードのカルチャーがあるんですよ。なので、プライドを持って料理をしているというのが大きいです。
ですから、逆に、僕は彼らから沢山のことを学びました。

 

--メルボルンの印象はどうですか?

イギリスよりも住みやすいと思います。僕は東京で育って、便利なところに慣れているので、便利な都市がいいです。メルボルンでも、たまに不便さを感じますね。コンビニでビールを買えないのが不便だなぁと感じます。
 

--オフの日は、よくご飯を食べに行かれるとのことですが、メルボルンで好きなレストランを教えて下さい。

お寿司だったら、ソフィテルホテルの乾山さんです。あとはクラウンの中にある、フレンチのThe Brasserie by Philippe Mouchelというレストランもよく行きます。


--今後のご予定を教えて下さい。目標は何ですか。

8月にNOBUを退社して、その後シンガポールに行きます。新たにオープンするカジノ(クラウンカジノやNOBUとは関係ありません)の中にある日本料理レストランでヘッドシェフを務める予定です。まだオープンしていないので、具体的な名前はまだお伝えできないんですが。。
なので、NOBUの仕事を次の人にきちんと引継ぎして、シンガポールでの新たな仕事を成功させることが、今の目標です。


--最後に一言お願いします。

上にたつ人間の教育が昔だったらあったと思うんですが、今の世の中にはエリートの教育がないですね。みんな上にたったら楽できると思ってる。でも僕が上にたっていて、もしビジネスが利益を出せていなければ、みんなが職を失うわけじゃないですか。僕は、いつもそれを意識して仕事をしています。 
NOBUの経営をしているクラウン・グループには色々なことを学ばさせてもらったし、本当に2年間お世話になりました。 
それと、いつも心がけているんですが、下を育てていきたいです。僕はいつも尊敬できる上司に恵まれていたので。
僕が携わっていることは、忙しくないときでも10人ぐらいいるんですが、やっぱり一人で出来る仕事ではないので。
ちゃんと仕事を教えてあげたいし、ここに来たから仕事を覚えられたっていう経験を全員に積ませてあげたいです。

「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上。」ということですね。
 

--お忙しい中、どうもありがとうございました。

<取材後記>
高級レストランのヘッド・シェフという立場ながら、とっても気さくなお人柄で、面白いお話を沢山して下さいました。世界中から集まった同僚から「TAKA san」と慕われています。
ちなみにロンドン店で一緒に働いていて出会ったノルウェー出身の彼女と7月にご結婚予定のタカさん。人生のパートナーと共に、8月からシンガポールで新たな門出を迎えられます。まだNOBUに行かれたことがない方は、ぜひ行ってみて下さい!

NOBUメルボルン店:http://www.crownmelbourne.com.au/nobu
ランチメニュー:http://www.crownmelbourne.com.au/Assets/Files/Nobu_Lunch_Menu_24Mar10.pdf
ディナーメニュー:http://www.crownmelbourne.com.au/Assets/Files/Nobu_Dinner_Menu_24Mar10.pdf

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