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4大大会で線審を務める鶴淵志乃さん

全豪でも大活躍

錦織圭や国枝慎吾、上地結衣といった日本人選手の活躍が話題となった全豪オープンだが、選手を支えるスタッフとして多くの日本人が活躍している。Go 豪 メルボルンでは2年前に、ストリンガーのスパイキー細谷さんのインタビューを掲載したが、今回は試合の線審(ベースラインもしくはサービスラインでアウト・インの判定をコールする人)として活躍する鶴淵志乃さんのお話を伺った。

 

—線審を始めたきっかけとは何でしょうか?

私は徳島に住んでいたのですが、結婚して主人の転勤で千葉に引っ越したのですが、そこで入ったテニスクラブに国内の審判の最初の資格であるC級というものがあるのですが、それの募集要項が置いてあったんですね。それで興味があったので、2002年の12月に受けてみて通ったのが最初ですね。千葉という土地柄沢山トーナメントがありますから、そこでジュニアの審判に入ったのが初めての審判経験でした。それからフューチャーズの審判を4月にやったのが、国際試合としては最初ですね。それが凄く楽しくて、その後は東レオープンや、Japan Openで審判を務めました。

 

—最初に海外に行ったのはいつ頃でしょうか?

2007年にドーハに行ったのが初めてですね。その後WTA(女子テニス協会)やATP(男子テニス協会)のツアーを回るようになりました。2007年は本当に色々ありまして、ITF(国際テニス協会)の資格であるホワイトバッジ(資格の階級で、ホワイトは1番最初の資格)を5月に受けたのですが、バッジを取る前でしたがUS OPENでの仕事が決まりました。その後WTAのTour Finalsなどの採用が決まり、ドーハに行っていなかったら今のようになっていなかったと思います。そこから全てが始まりました。

 

—ドーハの時はITFの資格を取る前とのことですが、どのようにして国際試合に採用されたのでしょうか?

その仕事は日本の、JTA(日本テニス協会)の資格で出来たのです(JTAとITFでは共通の資格もある)。

 

—今大会では線審を務めていますが、今の仕事は線審のみでしょうか?

日本では主審もしますが、海外では線審のみですね。やはりホワイトバッジではなかなか難しいですし、他のトーナメントで線審として働いていると時間が無いのです。多い時は年間7ヶ月海外にいますから。

 

—全豪オープンでの鶴淵さんの1日のスケジュールはどうなっていますか?

朝審判のチェックインの時間に会場に来て、部屋が有るのですが苗字のアルファベット順に自分のスケジュールが並んでいるのですが、そこで1日のスケジュールがわかるようになっています。1日同じコートにいるのですが、その日の試合数によって働く時間というのは決まりますね。だから、1日何時間で終了というのはわからないのです。コートに立つ時間としては、予選の時は90分で1時間休憩、本戦では1時間審判をして1時間休憩という交代制ですね。線審はそのコートが終わるまでずっと待機していなければなりません。大会のスケジュールとしては人によって変わるのですが、私は予選から最後までいます。

 

—全豪オープンは何度目ですか?

7回目ですね。この大会は他の四代大会と比べるとフレンドリーな感じがしますね。他がフレンドリーというわけではないですが(笑)、陽気な感じがしますね。

 

—線審の方は、自国の選手が試合の時には入れないといったルールは有るのでしょうか?

主審は有るかもしれませんが、線審はありませんね。それこそ昨年のUS OPENでは錦織選手の試合にも入りましたし。

 

—グランドスラムでは線審のみですが、主審をやってみたいという気持ちは有るのですか?

今の資格より上の資格が主審には必要で、それもとても難しい試験があります。また、私はどちらかと言うと一つのことに集中したいタイプなので、主審は周りを見たり試合をコントロールしたり色々気にかけるのですが、線審は基本的に1つ、ボールがアウトかインを見るのがメインですから。サービスラインの線審は、主審が何か必要にした時は対応するなど、ニューボールの管理など少しやることも増えますが。

 

—サービスラインの線審とベースラインの主審はどのような違いがありますか?

サービスラインは1球のみ見るだけですが、その1球がポイントの始まりですから、試合全体の流れが変わりますから、プレッシャーとしてはサービスラインの方が大きいですね。

(手でインかアウトの判定を表示する、これはインの判定)

(アウトの判定)

 

—ベースラインは体や足でボールが見えなくなることもあると思います。

素直になることが必要ですね。予測では絶対に言っては行けませんし、見えなかった場合はそれを提示すればいいので。隠れていても軌道で明らかにアウトな時はコールが出来ますが、微妙な時は見えるように体勢を変え努力はしますが、見えなければ見えないというジャッジも重要です。

 

—チャレンジ制度(判定が不服の時にビデオ判定が3回使える)が導入されていますが、それはプレッシャーになりませんか?

それもありますが、助けてもらう側面が大きいですね、自分がコールをできない時に助けてもらうこともあるし、選手に文句を言われた時に見せることもできるので。主審は線審のコールをオーバールールで言い換えることが出来るのですが、それが間違っていることも有るので、それを見せることが出来るので決して嫌な存在では無いですね。緊張感はありますが。選手も主審も線審も満足できるし、お客さんも盛り上がりますし、楽しめるので良いのではないでしょうか。

 

—選手と審判団に交流はありますか?

主審は分かりませんが、線審は全く無いですね。車椅子テニスの選手は主審を務めることも有るので挨拶等はしますし、選手でも例えば日本人選手だと挨拶はしますが、それ以上の事は無いですね。大会によってはかなり厳しいところもあり、外でメディアの人との交わりを持つのも出来ないところもあります。このようにインタビューを取るのは正式に話を通せば大丈夫でしょうが、外で交流していると他の線審が飛んでくることもあります。2011年のインディアンウェルズの大会の時に、日本の津波の話で選手が心配して声をかけてきたのですが、それを見た他の線審がやめなさいと言ってきましたね。例えば休憩の時間に線審の友達の写真を撮ってあげようとカメラを向けてもダメな場合もあります。

 

—1年の半分を海外とのことですが、苦労はありますか?

1番の苦労は家に帰られないことですね。家のことも出来ないですし、浦島太郎状態になります。日本の事も分からなくなりますし、同じ時間を過ごしているわけじゃないですか、それでも自分だけ止まっているような感覚があります。グランドスラムではオフの日もありますが、普段は空港/ホテル/大会会場の往復だけなので、海外にいても仕事に来ているので、観光とかはしないですね。海外に観光に行くなら、仕事抜きで行きたいです。特別観光をするよりは、現地の人のようにカフェに行ったりスーパーに買い物に行ったりするのが贅沢だと思いますね。

 

 

なかなか表には伝わらない大会の裏側の様子を少しでも伝えられたでしょうか?線審に関しては今大会は日本人が3人いるそうです。選手だけでは試合は出来ませんし、こうした方々の活躍で大会が円滑に運営されています。

 

 

写真・文:Raito Hino

 

 

 

 

 

コメント

以前のコメント

連続モチーフ編み   (2015-05-08)
昨日、マドリットオープンで錦織選手の審判しましたか?まだ他にも日本の線審はいますか? ボストン在住のミンタさんのブログで拝見しました。昔、有名な選手で1回戦で対戦したことがあるそうです。でもミンタさんテレビに映った顔を良く覚えていたと思います。

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