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第十七回 パンツが


今回は、番外編、タコ社長大学生の時の出会い。

細い階段を上ると、だだっ広いクラブのような部屋があった。もう営業していないこの部屋は薄暗いアンバー色の電球に照らされて、意味もなくそこにある。古いソファーのかびたような匂いがする。私はここで、いつも独りで白いYシャツと高校時代の黒のズボンに履き替え、蝶ネクタイをしてスタンバイする。部屋の隅には、ジュークボックスがあり只で掛けられる。来る日も来る日も、アメリカの「名前のない馬」とカリー・サイモンの「うつろな愛」を聴いていた。
You're so vain
You probably think this song is about you
You're so vain
I'll bet you think this song is about you
Don't you? Don't you?

あなたは、自意識過剰でうぬぼれ屋 ♪

 「お早うございます!」階段を下りて元気な声で皆に挨拶する。池袋西口「ロサ会館」の横にあったエロ映画館の前の喫茶店「ニューサカエ」での仕事のスタートだ。1974年1月、大学1年の冬休みにここで夕方からバイトをしていた。やっと、チョコレートパフェ、クリームあんみつなんかが手早く作れるようになっていた。8人ほど座れるカウンターを1人で任されることもあった。
 ある日、化粧のやや濃い30代半ばの肉感的な女性が1人でカウンターに座った。髪を茶色に染めてパーマを大きくかけている。口紅は真っ赤だ。薄茶色のパンタロンに白のブラウスで、何とも艶めかしい。
カウンターの高い位置から、何度もこの女性を見てしまった。すると、パンタロンの色と同じでよく見ないと分からなかったが、パンタロンのジッパーが空いていて下着が見えているのだ。女性は上目づかいに私を見ながら、薄く微笑んでいる。私にはそう見えた。パフェを作りながら手が定まらない。「誘われているのだろうか?そんな訳はない。」21歳の世間知らずの心が、空気を抜いた風船のように暴れる。
 「新しい顔ね。」「はい、2週間目です。」会話はそれだけで、続かなかった。あらぬ先のことまで想像してしまって、心臓の鼓動が痛い。すると女性は、下を向いたかと思うと、ものすごい勢いでジッパーを上げ、急に怖い形相になり私を睨みつけて勘定を済ませ出て行ってしまった。
 その後ろ姿をガラス張りから追いかけ、エロ映画館の金髪女性の姿態を見つめながら思った。「そんな訳、ないだろう!」状況判断を遠慮なく間違え、物事を正確に捉えられない特性は今に続いている。

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(タコ社長の本業)

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