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AFLの戦い方  第5回<力技。>

2012年11月2日掲載

 

かつてのAFLでは力技が今よりも多く見られていました。特にフルフォワードと呼ばれる、最もゴールに近いポジションでプレーし、最もゴールを得点するプレーヤーはこの力技を駆使するタイプが多くいました。


中盤で獲得したボールをポーンとフルフォワードに蹴りこんで、フルフォワードが相手のディフェンダーと競り合い、ボールをマークする。マークするとフリー キックが獲得できるので、ちょっと下がって一呼吸。ファンの期待を背中に浴びつつ、ゆっくりとした助走からボールをキック。ゴール。沸く観客。こんなシー ン、これぞAFL。

 

力技。
いろいろな解釈があるかと思いますが、体の優位性を使って相手を押しのけ、または相手よりも高い位置でボールを取る。このようなプレーを今回のコラムでは 「力技」と呼びたいと思います。ものすごく背が高くて、ものすごく体重が重いプレーヤーがいたら・・・そこにボールを蹴り込まれたらボールをインターセプ トできそうもありません。


 
力技が得意な大柄なフルフォワードはチームの人気者。チームの顔でもありました。しかし、ここ最近、この力技が発揮できるシーンが限定されています。

 

201210230814_1.jpgず、 試合全体で空中戦の数が減りました。より速く、最短距離でボールを前線に運ぶことが求められ、そもそも競り合いとなる場面にボールを供給することは「判断 が良くない」プレーとされています。いかに競り合いのシーンを減らし、素早くボールをつないでいくか。競り合いのシーンがないのであれば、力技は必要あり ません。
 


さらにFWもディフェンスのスキルが要求されるようになりました。最近ではFWエリアからプレッシャーをかけるチームが増えてきています。ゴールに近いエ リアからボールを出さないようにプレッシャーを与えて、ターンオーバーしたらすぐにゴールを狙う。こんな戦術も有効だと認識されています。ディフェンスを するということは相手に合わせたプレーが必要なので、必ずしも自分の得意な部分をいかすことができません。
 


このような流れに伴ってフィットネスの重要性も増しました。多くの距離を走る必要が出てきたため、フルフォワードも他のチームメイトとポジションをロー テーションしながら時にはベンチで休むシーンも。少し前までは得点源であるフルフォワードが交代してベンチで休憩するのはあまり見られない珍しいことでし た。


 
AFLにおいて、徐々にポジションの専門性がなくなってきているのは確かです。求められている能力が増えてきているといっても良いでしょう。


 
しかし、だからといって力技が不必要になっているわけではありません。特に今シーズンのファイナルではこの力技が駆使できるチーム、できないチームで明暗が分かれた気がします。


 
試合をしているとチームには必ず苦しい時間帯が訪れます。その時はやはり、ボールをポーンと蹴って後は頼むぞ!と言える、力技で勝負できるチームメイトが 必要です。力技で勝てるプレーヤーがチームにいてくれると、そのプレーを完全に任せることができる。他のプレーヤーに休む時間が与えられるのです。そして ボールの競り合いに勝てれば万歳。


 
201210230814_2.jpg苦しいとき、非常時にそのありがたみが分かる、そんな力技。
昔、通用したまたは主流だった戦い方。そんなの古いよと捨ててしまうと、いざというときに頼れなくなります。変化しながらその場に適したプレーヤー、戦い方を採用する。常にバランスを見ながら新しい戦術を取り入れていく必要があるのです。


 
力技、その必要性があらためて認識されたファイナルシリーズ。再び、力技が活躍するシーンが増えるのでしょうか?見なくなったと思ったら出てきて、出てきたと思ったら、また姿を消して・・・。


 
変化し続けないと勝てないAFL。
力技を多用するか、それとも、力技はいざというときに取っておくか。
バランスを取りながら、そして考えながら力技を出す。


 
慎重な力技。
なんだか変な気もしますが、今のAFLにはそんな難しい解釈が求められているのです。 

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