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本当に地球環境にやさしい化学とは?

化学者としてできること

25 November 2010

Ernst & Young、メルボルン日本商工会議所共同開催によるビジネスセミナーに参加した。テーマは『GREEN CHEMISTRY』。地球環境にやさしい化学を研究する学問として、アメリカをはじめ、日本、オーストラリアでも確立されている。この日のセミナーはGREEN CHEMISTRYとは何か?という基本的な部分の理解を深める機会として設けられた。

講師はモナッシュ大学准教授・齋藤敬氏(Dr Kei Saito)。日本で学位取得後、アメリカ・マサチューセッツ州でGREEN CHEMISTRYの創始者のもとで学び、2007年よりモナッシュ大学GREEN CHEMISTRY研究所所長に就任し現在に至る。また大学で教鞭もとっている。

 

セミナーでは具体的な例を提示してもらいながらGREEN CHEMISTRYとは何かを読み解いていく。たとえばある薬はいくつもの化学変化を起こして作るが、その過程では多量の毒性物質が使用され、さらに廃棄物を多く生じてきた。そこにGREEN CHEMISTRYの研究によって実現した製造工程を導入したことにより、製造工程時間の削減、毒物使用料の減少、廃棄物量も減少したという結果が得られている。

こういった実例やGREEN CHEMISTRYの根源にある考え方は「もともと自然界にあるものに化学変化を起こしてモノを作ってきたが、自然界のものから直接作ることができないか?さらに地球環境に優しく作ることができないか?」という考え方にたっている。

『環境に優しいもの』を歌い文句にした既製品は、現在私達の身近にたくさん見かけられるようになった。土にかえるプラスチック、植物由来の洗剤など…。しかし、それらの製造工程はどうだろうか? 上記のような薬のように、毒性物質の大量使用、産業廃棄物の大量発生を促しているようであれば本末転倒である。

教授が提示してくれた例として、土に戻るプラスチックは「生分解性プラスチック」のみであり、その他のプラスチックは分解されない。プラスチックは非常に作るのが容易ではあるが、リサイクルするためには多くのエネルギー量が必要になる。お湯を沸かすぐらいのエネルギー量でプラスチックを作ることができる半面、リサイクルにはそれ以上のエネルギーが必要であり、新しくプラスチックを作る方が環境に良い場合さえあるという。

 

(写真右)実際の企業の方も交えてのパネルディスカッションも開催された。

教授はその矛盾を解決するために、GREEN CHEMISTRYに基づいて新しいプラスチック製造法を開発し採用している。そのプラスチックは製造しやすいうえ、リサイクルもしやすく、また再びプラスチックとして使用することが可能になったそうだ。

環境問題に関心が高いオーストラリアといえども、自分たちが普段使いしているモノは、本当に環境に優しいものなのだろうか? 全てにおいて環境に優しいと言い切れるのだろうか?

齋藤教授が目指すのは、化学者の目線から考える環境に優しい化学であり、複雑な環境問題をGREEN CHEMISTRYだけでは解決できないが、化学者として何かできることがあるのではないかと考えている。また自分がいなくなった後の将来に残せるものとしてGREEN CHEMISTRYは一つのツールであると考え、日々研究しているそうだ。

私達の身近な生活に関わる、非常に興味深い学問であり、また化学者でなくとも自分たちができることはないかと考えさせられるセミナーだった。製造会社の方などもお招きし、討論も交わされた奥が深い内容であった。

  

セミナー終了後はクリスマス・カクテルパーティが開催され、参加者との交流会、ラッフルによるプレゼントもあり、大変な盛り上がりを見せた。

 

◆モナッシュ大学グリーンケミストリー研究所
Monash University Centre for Green Chemistry
URL: http://www.chem.monash.edu.au/green-chem/


※モナッシュ大学 齋藤敬准教授へのインタビューの模様を後日掲載いたします。乞うご期待下さい。

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