イベントインフォevents

イベントレポートreport

Magic of Music

上原ひろみソロ、メルボルンライブ

2012年6月9日掲載

 

昔通ったクラッシックのピアノリサイタルで、あまりにも完璧なピアニストに出会ったとき、何百年も昔の作曲家がそのピアニストに乗り移ったかのようで、その世界に吸い込まれていくような感覚に陥ることがあった。

今回上原ひろみさんのピアノソロライブでは、それとは少し違うが、あの特別な感覚を久しぶりに味わうことができた。彼女の指はピアノとつながっているかのように鍵盤の上を自由自在に走り回り、人がピアノを弾いているというより、ひろみさんとピアノが一体化して音を作り出している、そんな感じがした。こんな風にピアノを弾けるピアニストは、あまりいないんじゃないかと思う。  

 

6歳よりクラシックピアノを始め、8歳でジャズを知る。14歳でチェコフィルハーモニー管弦楽団との共演、20歳でバークリー音楽大学に入学。「情熱大陸」では特集を受け、芸術選奨新人賞を受賞、日本ゴールドディスク大賞ではジャズアルバム オブ ザ イヤー、グラミー賞でBest contemporary Jazz Album受賞。。。

彼女の活躍ぶりを書こうと思えば終わりがない。しかし彼女の演奏を見た後に感じる事は、シンプルに ‘彼女がピアノを心から楽しんでいる’ ということだ。
表現力豊かな彼女の感性と巧みなスキルは言うまでもなく見事だ。彼女のピアノは、豪快であり繊細だ。自分の魂を全身に込めてピアノを弾くその姿は、まさに芸術家としての姿があった。


遊びで時に少し崩し気味に弾くスタイルでは、思わず観客から笑みがこぼれる。彼女のピアノに観客は操られるかのように、自然と体はリズムを取り始め、気分も高揚していく。彼女は自分自身で思いっきりピアノを楽しむと同時に、私達にも一緒に楽しもうよと誘ってくれているようだった。

 

ある人が彼女のことをAbstract Expressionist(抽象表現主義者)と表現している。新しい風潮にこだわるといより、形式にとらわれず、自分の感性で芸術を楽しむ。彼女の奏でる音は古いスタイルに固執せず、自分の持つクラシック、ロックなどの影響を入り交え、ジャズという境界線を超えている。

自分の音楽に対して、スタイルを考えたことがないというひろみさん。グランドピアノの弦を使ったり、自分の肘でピアノを流すテクニックは、彼女の個性と自由が溢れていた。時には立ち上がりながらピアノを弾き、床を軽く蹴りながら片足でリズムをとるなど、とにかくアクティブな彼女。洋服はロック調な黒のドレスにオシャレなスニーカー。みんなが想像するピアニストとは大違い。でもそれがとてもカッコいいのだ。

 

音楽を通して人と繋がれることが、とても幸せなことだとひろみさんは言う。音楽とは、喜び、楽しみなどのポジティブな感情から、悲しみ、狂気などのネガティブな感情までいろんな感情が表現できるマジックなんだと。

    

 

静岡に住む女の子が、母親が小さい頃ピアノを習いたかったとい願望を娘に託したことがキッカケで、ヤマハピアノ教室に通い始める。そこでクラシックを教えていたピアノの先生が、実は大のジャズファンだったことがきっかけでジャズと出会う。彼女の世界は、そこからみるみるうちに開がっていき、今では一年の半分を世界中飛び回っている。今後もっともっと多くの人にこの感動を与え、音楽の素晴らしさを与え続けてほしい。10年20年後に、上原さんがどのような形でピアニストとして大成しているのか、とても楽しみだ。これから長い目で彼女のことを応援していきたいなと感じる。


~ ライブは一期一会。毎日が一生に一度のステージです。その瞬間をともに出来る事に感謝しながら、音にありったけの気持ちを込めたいと思います ~                                                                                                                       (上原ひろみ、インタビューより) 

 

 

※残念ながら今回のコンサートビデオではないが、このコンサートを逃した人のために是非ひろみさん演奏を聞いてみてほしい。
(YouTubeより)

 

最後にアンコールで弾いてくれた曲 'Place To Be'
 

------------------------------------------------------


Melbourne International Jazz Festival
http://www.melbournejazz.com


上原ひろみ・オフィシャルウェブサイト
http://www.hiromiuehara.com/

 

場所
Melbourne Recital Centre
Hiromi: Solo -Japan/USA- & Eli Degibri Quartet -Israel-
31 Sturt Street, Southbank, VIC 3006

 

文・写真: 兼重 貴子
Written/Photographed by Takako  Drew

関連記事

HYP Fest

水煙草をふかしながら・・・、アラビアの世界へようこそ。

最新記事

アクセスランキング

  1. メルボルン10月のイベント
  2. 大阪観光誘致プロモーションイベント
  3. アニマガ2019開催
  4. ラグビーワールドカップ開催にあたり「Izakaya」開催!
  5. 日本語弁論大会ビクトリア州最終選考会2019

トップ20リストへ

人気の記事