
日本人初のVIC警察官・小沼巡査インタビュー
フッツクレイ警察署で勤務中を直撃取材!
日本語 English
2011年12月2日掲載
今年9月初旬、33週間の厳しい訓練を経て、州初の日本人警察官が誕生した。
同月2日付けの地元紙「ヘラルド・サン」の記事を読んだ読者もいるだろう。
「Constable Onuma」こと小沼友紀巡査は、現在メルボルン西郊フッツクレイ警察署に勤務。
治安が悪いことで知られる同地区で、小沼巡査が日々どんな仕事に当たっているのか、また警察官になるための訓練はどんなものだったのか、話を聞いた。

小沼さんと、先輩警察官のマットさん
-フッツクレイ警察署での勤務はいかがですか?
とても忙しいですが、よい先輩やボスに恵まれ毎日楽しく仕事をしています。
朝出勤して、その日に何が起こるか分からないことが、楽しいですね。
通常の仕事の場合、その日どんなことをして、どんな一日になるかというのがある程度予測がつきますが、警察の仕事の場合
「今日はこの家に強盗が入る予定」
と決まっているわけではありませんから(笑)
警察官の仕事は、パトロールの日、署のカウンターで応対をする日、内勤で書類などがあり、勤務時間は大きくわけて朝、午後、夜間のシフトワークです。
フッツクレイは
「忙しい地域がいい」
と自分で希望しました。
-これまで危険を感じる場面に遭遇したことは?
きっと警察学校で訓練を受ける前の自分だったら危険だと感じていた場面も、今はそう感じなくなっているので(笑)、普通の感覚で答えたら「はい」、警察の感覚だったら「いいえ」ですね。
「万が一攻撃してきたら、どう逃げるか」とか、
もしもの時には「パートナーの警察官をどうやって護衛するか」、
また、相手がポケットに手を突っ込んでいた場合に
「武器を持っているかもしれない」
ということを常に考えています。
-女性で日本人というのは、警察官としては非常にマイノリティーだと思いますが、不利だと感じることはありますか?
署内では、差別されたり不利に感じたりということは今のところありません。
今VIC州警察では多国籍の警察官を積極的に採用していて、ここフッツクレイ警察署でもアジア出身の女性警官がもう1人います。
また外では一般の人に「アジア人の女が警察官なんかやって」と、もっと言われるのかなと思っていましたが、それもほとんどありません。
ただ一度だけ
「ニンジャが何やってるんだ」
と言われたことはありましたが(笑)

パトカーの前で
-どうして、警察官になりたいと思ったのでしょう?
この仕事に憧れてということは、ありませんでした。
今の職になる以前、1年半警察署内でアナリストとして仕事をしていたんですが、その際に日々接していた現場の仕事に興味を持ったのがきっかけです。
警察には「Sworn」と「Un-sworn」の二種類の仕事があって、「Sworn」は現場の警察官、「Un-sworn」は署内に勤務する職員。
私のしていたアナリストは、後者にあたります。
私はトラフィック専門のアナリストでした。
具体的には、例えば犯罪に使われた車の逃走経路を探るというような仕事です。
A地点で目撃された車が、そのあとカウンシルの防犯カメラに写っていた。
それでルートを絞って、それに従って現場の警察官がさらに聞き込みをしていくわけです。
アナリストの仕事の前には、日本ではマーケティングの会社、メルボルンでは大学の職員として働いていたんですが、毎日同じことの繰り返しがつまらないな、と。
そんな時に知り合った人に、警察の「Un-sworn」という仕事の話を聞いて、試しに応募してみたら、受かったんです。

小沼さんが学んでいた警察学校(写真:小沼さん提供)

警察学校のクラスメートたちと。小沼さんは前列左から三番目(写真:小沼さん提供)
-現場の警察官になる訓練は、どんなものでしたか?
大変でした。
とにかく厳しくて。
33週間警察学校で訓練を受けるんですが、法律の勉強が大半です。
分厚い法律のテキスト、しかもテーマ毎に別々のものを渡されて、毎週テスト。
この場面ではどの法律をどう適用して、どう行動するか、といった実演の授業、試験もありました。
朝早く訓練生一同で行進をする日があったり、週に1度身だしなみの検査が行われたり、と軍隊のように厳格な面があります。
訓練中は、自分の私生活はまったくありませんでしたね。
厳しさについていけずに落第する人もたくさんいます。
法律のほかには、護身法やマラソンなどのフィジカルな訓練、法廷証言のシュミレーションや、拳銃の扱い方の訓練などを学びます。
-拳銃の訓練は、どんなものでした?
まず最初に、フェイクの拳銃でトリガー・コントロールやホルスターへの入れ方、構え方などの練習をします。
そのあと1週間集中して銃のトレーニングだけをする期間があります。
最終日はアセスメントです。
テストでは、例えば、的にむけて2発撃ったあと、2発充填し、また2発当ててからホルスターに入れるまでを何秒以内で、といったような感じです。
拳銃のアセスメントは、現職になってからも半年に一度は受けなくてはなりません。
-話は変わりますが、小沼さんの子どものころの夢は何?
特になかったです(笑)
3歳の時からずっと器械体操をやっていたので、おそらくその選手になりたかったのではないかと思いますが。
体が弱かったので始めたんですが、17歳の時にケガが原因でやめました。
でも体重を気にしなくていいし、お菓子は食べられるし、友達と遊べるし、でうれしかったです(笑)
-最後に、これからこんな警察官になりたいという夢や希望はありますか?
先日、ランチを買いにベトナムのレストランに行ったら、制服を着たアジア人女性である私を見て、お店の人やお客さんたち、ベトナム人の人たちが、とても喜んでくれたんです。
みんなが集まってきて、
「Same, same」と。
アジア人で同じだね、と言うことだと思うんですが。
「いつポリスになったの」「移民でもなれるんだね」「ポリスでもフレンドリーだね」
など、気軽に質問してきてくれて。
アジア人以外にも、パトロール中にアフリカ人の人から声をかけられたりすることもあります。
小さなことかもしれませんが、
警察官のそういった「怖い」「近寄りにくい」といった印象を払拭して、ポジティブなイメージに変えていければと思っています。
取材・文・写真(クレジットのないもの):田部井紀子
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