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津軽三味線奏者 只野 徳子さん インタビュー

メルボルンを拠点に大活躍!オーストラリア全土へ

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2009年12月22日掲載

 

 


【プロフィール】
只野 徳子 Noriko Tadano
千葉県出身。6歳より三味線を習い始める。日本語教師のアシスタント・プログラムの一環でメルボルンへ。オーストラリアの人々に日本文化を知ってほしいという思いから、三味線をパフォーマンスするようになる。路上ライブから様々なフェスティバルやコンサートなどに出演し、またブルースなど他のジャンルの音楽や楽器ともコラボレーションをするなど勢力的に活躍中。2009年12月26日、シドニーのオペラハウスで開催される「Japan Australia Music Goodwill Mission Xmas Concert(日豪音楽親善団オペラハウス無料コンサート)」に出演。

 

--津軽三味線を始めたきっかけは何ですか?

 6歳の時から始めました。父親が福島県の田舎出身で、民謡を聴きながら畑仕事をしたりするような環境で育ったそうです。生活に民謡が密着した中で過ごし、その後千葉県へ上京したときに、勤め先の民謡クラブに所属し津軽三味線を習い始めました。練習をしている父親の姿を見て「とても格好良い!」と思い、父に懇願して津軽三味線を始めました。

 中学生までは津軽三味線の師匠について習っていたのですが、周りの人の平均年齢も高く、小学生の女の子としては少々つらい環境でした。中学校へ入ってからはバスケットに夢中になり、それからは三味線からは離れていました。

 

--津軽三味線にもどってくるきっかけは何でしたか?

 日本語教師のアシスタント・プログラムで、ワーキングホリデー・ビザを取得してオーストラリアに来ました。こちらに来るときに、日本文化を伝えるのに子供たちに三味線を披露したら面白いかなぁと思って、三味線も一緒に持ってきました。

 また、オーストラリアの‘バスキング(路上ライブ)システム’は盛んですよね。メルボルン市が発行している写真入りの許可証を提示してパフォーマンスをするのですが、彼らのパフォーマンスを見て、私もやってみようかなぁと思いました。学校の子供たちに披露するだけでなく、オーストラリアの人々にも日本の楽器を見てもらえたらと思いました。またやり始めた当時は、ちょっとしたお小遣い稼ぎとしてもやっていました(笑)。

 バスキングを始めてから、沢山の方のご支援のもと気が付いたら三味線が仕事になっていましたね。ヴィクトリア州以外で演奏する機会も増えました。

 

  

--演奏の曲目は昔からある民謡をされますか? 只野さんのオリジナルの曲もありますか?

 民謡も演奏しますし、私が作曲したオリジナル曲も演奏します。その他にもいろんなミュージシャンの方ともセッションをしたり、日本の曲に限らずにいろいろ演奏します。民謡も歌いますし、前回のコンサートでは初めて自分が作詞した曲を披露しました。『山津見の里』という曲で、日本を離れて海外生活をする自分自身の思いを込めた曲です。山津見とは山の神様の事です。

 

山津見の里 Village of Yamatsumi

1:覚えてるかい あのけもの道 二人で採った山の恵み
  手をつなぎ見た 宵の祭り 君がそっとくれた赤い鈴

  どんなに遠くにいても 瞼を閉じれば 浮かぶあの日の景色 山津見の里
  海を越え 風にのり とどけよこの思い

2:せせらぐ川に 耳を澄ませば 聞こえる君の あの笑い声
  きらめく夜空の 星を見つめて 流れる一つに 願い込めた

  どんなに遠くにいても 瞼を閉じれば 浮かぶあの日の景色 山津見の里
  海を越え 風にのり とどけよこの思い

 

--只野さんの演奏する曲目で十八番はありますか?

 間違いなくいつも演奏するのが『津軽じょんがら節』ですね。‘じょんがら節’と言っても旧節、中節、踊り…などいろいろなバージョンがあるのですが、そのうち新節をベースにして、アレンジを加えて演奏します。たいがい最後に演奏して、スカッと終わる感じですね。

 

--今回オペラハウスのコンサートに出演されますが、どういったきっかけで出演されることになったのですか?

 2年ほど前からヴィクトリア州以外での演奏活動にも力を入れていて、特にシドニーに目を向けています。時間を見つけてはシドニーへ行ってバスキングをしたり、オープン・マイクと言ってパブやバーで決まった曜日に誰でも演奏できるシステムがあり、‘流し’のような感じで何件かまわって演奏をしました。「まず見てもらわなきゃ!」というのがあったので、自分の足で宣伝をしていました。そういった活動を通して、今回のイベント・コーディネーターの方に、シドニーでのギグへの出演のお話をいただくようになりました。今回のシドニーのクリスマス・コンサートもその方からお話をいただきました。

 

--只野さんの演奏の一番の売り、魅力は何ですか?

 一番観客の方に感じていただきたいのは、日本語英語という言葉の違いを超え「心」と「心」で音楽を感じる事です。
日本語で歌ったり、日本の楽器を演奏しているので、ダイレクトに曲の内容を伝えるのは難しいですが、私の演奏を通じて何を表現したいのかが伝われば良いなぁといつも思っています。

 

--メルボルンで三味線を習うことはできますか?

 できますよ。私も現在、三味線に興味のある方にマンツーマンで教えています。何事もそうですが、津軽三味線は幼小の頃からやらなければいけないというものではなく、毎日の練習をすることと、“passion(情熱)”と“effort(努力)”で上手くなると信じてます(笑)。

 

 

 

--三味線をメルボルンで手に入れることはできますか?

 残念ながら現在はできませんので、日本から空輸しています。なかなか日本のお店も三味線を海外輸送してくれるところがないのですが、幸い私がお世話になっているお店のオーナーは、三味線の海外普及をサポートしてくれる方で、いつもご協力いただいています。

 

--日本でも若手の三味線奏者がCDを出されたりしていますね。

 そうですね。吉田兄弟や、私が大好きな上妻宏光さんもそうですね。海外にも積極的に出られていますし、その他にも若手のプレイヤーがたくさん出てきていますね。みなさん、伝統的な民謡も演奏されますし、民謡をアレンジして演奏したり、上妻氏は三味線で映画のサウンド・トラックなども演奏されていますよ。

 

--三味線を演奏していて、いちばん楽しいときは何ですか?

 コンサートなどでも感激はありますが、いちばんお客さんの反応が判るのがバスキングをしている時なんですね。駆け引きではないですが、まずみんながそれぞれの目的でシティに来ていて、忙しく時間も限られている中で、ストリート・パフォーマンスを立ち止まって見て、なおかつ「良いな」と思ってお金を入れる、さらにそれを超えてCDを買うというステップがあります。

 最初は立ち止まって見てくれて、その後コインを入れてくれて、更に「CDください。」と言われた時は、「あぁ、伝わったなぁ」と思います。感じるというよりは体験してわかりますね。本当にありがたいですし、そういうときが面白いですね。
言語は違うけれど、何を伝えようとしたかをお客さんが解ってくれて、コンサートの後にコメントをいただくこともとても嬉しいです。本当に音楽は「言葉の壁を越える」という事を感じます。

 

--三味線を通してこれから伝えたいことや、今後の夢や目標は何ですか?

 たくさんの人に三味線を見てもらって、日本の伝統的な民謡や私が作曲した音楽を通して、「こんな音楽があるんだ、こういう楽器があるんだ」というのを、オーストラリア人に限らず、一人でも多くの人に知ってもらいたいですね。

 同時に、‘その瞬間は音楽を通じて、観客と心と心で触れ合う’というのを目指しています。

 

--今回のシドニーのコンサートに向けて意気込みをお願いします。

 20分強のソロ・パフォーマンスを行うのですが、自分で作曲した2曲を含めて、伝統的な民謡も演奏する予定です。
 Wikipediaで調べたのですが(笑)、オペラハウスは約2, 700人の収容人数があるそうです。一度に2,700人と触れ合うことができるので、面白いなぁと思っています。逆に一気に2,700人の目が私に集中するので、観客の皆さんの気迫に負けないように頑張ろうと思っています。

 



 只野 徳子 Myspace
 
 URL: http://www.myspace.com/norikotadano

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