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官能的かつスピリチュアルな歌声 ジャズ・ボーカリスト ホセ・ジェイムズ インタビュー

ジャズという括りを超え多くの人を魅了。ライブレポート追加!

[ 8/June/2012 ]

 

 Melbourne International Jazz Festival 2012が6月1日から10日間にわたり開催されています。そんな中、日本でも人気上昇中のジャズ・ボーカリストJosé Jamesさんにお会いし、お話をお伺いしました。

 

【プロフィール】
ホセ・ジェイムズ José James

 アメリカ、ミネアポリス出身。ニューヨークを拠点に活躍するジャズ・ボーカリスト。ジャイルズ・ピーターソンが「15年に一人の逸材」と惚れ込み、ピーターソンが主宰するレーベルより2008年にデビュー。子供のころはR&Bやヒップホップを聴いて育ち、偉大なジャズ・アーティストの音楽との出会いからジャズ・ボーカリストを目指すようになる。確かなジャズの素地と、その領域を越えてアピールするやわらかい歌声で人気を呼ぶ。

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--まず初めに、Joseさんの音楽の背景を教えていただけますか?

 音楽はジャズ、スタンダードなジャズをたくさん歌うことから始めたんだよ。ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)も好きで、彼女のようなブルージーでソウルフルな音楽が大好きなんだ。17歳の頃はドラムもやっていて、それによって本当にビジョンが広がって、自分で曲を書き始めたりしたんだよ。

 またマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の音楽も聴くようになったんだ。(僕の音楽の)すべてはこの2人の要素が一緒になっているんだ。ビリー・ホリデイはとても感情的で力強く歌い上げるし、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)は洗練されていて、マーヴィン・ゲイは情熱的でロマンチックだよね。

 

--子供のころデューク・エリントン(Duke Ellington)の『A列車で行こう(Take The “A” Train)』を聴いて、ジャズ・ボーカリストを目指すわけですが、最初に聞いた時の印象はいかがでしたか? またそれはどのようにご自身に影響を与えていますか?

 僕はその音楽を聞いた時のことを絶対忘れないね。14歳の夏にラジオを聴いていたんだ。その時ジャズは複雑すぎて全然わかっていなかったんだ。面白そうだな、くらいだったよ。

 ラジオから流れてきたビッグバンドの楽しくて愉快な音楽を聴いて踊ったんだ。その時、音楽は“太陽の光”とかそういったもののようだなと思ったんだ。その音楽が終わったあと、ラジオDJが「デューク・エリントンの『A列車で行こう』でした。」って言ったんだ。

 「わぁ、これは何か新しい! レコード店に今すぐ行ってレコード探しにいかないと!」って思ったんだよ。それをきっかけに音楽にのめり込むようになって、今では僕のすべてになんだ。


▲‘Take The "A" Train’ Duke Ellington

--お父さんがサックスプレイヤーですが、お父さんの影響も受けていると思いますか? お父さんは音楽を教えてくれたのですか?

 父と言うよりは、血筋だと思うね。父はサックス以外にもコンガも演奏するんだ。父はパナマ出身なんだよ。

 僕はドラマーでもないしサックスも演奏できないけど、音楽へのエナジーやリズム、世の中の見方はDNAに組み込まれていると思うし、自分の家族のことを理解するのに本当に重要なことだと思うよ。

 父は音楽を教えてくれなかったんだ。でも僕は楽器に囲まれて育ったので、そういったものに対して思いを寄せるようになったんだと思う。

 

--時々「フュージョニスト」と称されることがありますが、ヒップホップやR&B、ソウルミュージックの要素を、自身のスタイルに取り入れることは自然なことでしたか? それともチャレンジでしたか?

 僕にとってすべての音楽はグローバルなんだ。僕は90年代のヒップホップやロックも好きなんだけど、僕らがやろうとしている新しい世代のジャズ・アーティストとしては、伝統的なジャズも敬愛するとともに、コンテンポラリーな音楽も演奏していこうと思うんだ。そいう意味では、ナチュラルなことだったよ。

 

--今回パフォーマンスされる『Future Now』のことを教えていただけますか?

 『Future Now』は密接な音楽的な関係を築いている少人数の友達と一緒にやっているプロジェクトで、僕のスタイルかつブラスバンド形式でやっているんだ。異なる音楽に対する見方や新しい気持ちで作り上げたいと思っていて、正直な音楽スタイルでありながらも、情熱や様々な試み、批判的な見解も融合させて、音楽が流れている空間、観客が感じる感覚、演奏している都市がどう感じるか、誰にも真似できないもの目指してやっています。

 今回はニューヨークに次いで2回目のパフォーマンスで、メルボルンが初めてのオーストラリア公演です。


▲Future Now in NY

--『Future Now』以外にもMaCoy Tyner Trio、サックスプレイヤーのChris Potterさんとも共演されましたが、いかがでしたか?

 The best showだったよ。クリス・ポッター(Chris Potter)はとっても素晴らしいサックスプレイヤーだし、すべての演奏を一緒にやったんだけど、MaCoy Tynerは最初この公演がどうなるかわからない感じだったみたい。でもとっても良い経験になったし、すごく良かったよ。

 金曜日(Future Now)のパフォーマンスもちろんいいけどね!(笑)

 

--このパフォーマンスを見逃したのはとっても惜しいことですね。さて、とても日本好きとお伺いしていますが、日本のどんなところが好きですか? 日本では何度もパフォーマンスされていらっしゃいますが、今後日本で行ってみたいところ、やってみたいことはありますか?

 日本のデザインや文化のすべてが好きなんだ。特に神社が好きなんだけど、日本の人はとてもオープンマインドだしね。アメリカだったら教会のコミュニティなどで閉鎖的な部分もあるよね。

 日本へ初めて行って以来、日本食を毎日食べているかもしれない。京都もとっても良かったし、前回は伊勢神宮に行ったんだ。そうだな、日本のそういった恍惚を感じられたり、スピリチュアルで荘厳な場所が好きなんだよ。

 

 
▲バンドメンバーと。左より、ドラマーRichard Spaven, José James, トランペッターTakuya Kuroda

 

--Joseさんにとって音楽、あるいは歌うこととは何ですか?

 歌うことはそれが一体何か誰も本当に理解していないんじゃないかな? でも音楽は人にとって何かを表現する方法で、全世界共通だし、神秘的で敬うべきものだと思うよ。なぜ音楽を聴くのかはわからないけど、なぜか必要なものだってことはわかるよね? そうだな、音楽は自分自身を思い起こさせ、未来をも教えてくれるようなものだと思う。希望、夢、恐れが文化の中にある感じかな。音楽を通して違った感覚を味わうことができるし、違った未来への道を開くことができるんじゃないかな?

 

--Joseさんはジャズ・ボーカリストとして夢を叶えたわけですが、現在夢を追いかけている人にメッセージやアドバイスをお願いします。


 なぜそれをやりたい、なりたいのか、それを楽しんでいるか、一歩ずつ進んでいるか、そしてすべてを小さめに持つことが大切だね。中には必要以上に大きい夢を持っていて挫折する人もいるけど、小さく持ってそれが日々必要なことだといいと思うよ。そして試行錯誤することも大切だよ。

 

--ありがとうございました!

 

 『Future Now』は本日6月8日The Forumにて公演されます。もちろんオーストラリア初公演、オールスタンディングで開催されます。

 

【ショート・ライブレポート】

 伝統あるThe Forumでの開催。コンテンポラリージャスだけど、壮年層や白髪交じりの人もいる。しかもノリノリ。

 Jose Jamesの歌声は会場を魅了するには充分すぎた。トレードマークのヤンキースキャップにスニーカー姿から発せられる声は、超セクシーなバリトン。何か大きなもので会場を包み込むようなスモーキーで柔らかい声に、気持ちが良くなりすぎて欠伸が出てしまう。しかし・・・、彼の声は唯一無二だと思う。他にこんな声聞いたことがない。

 アメリカではなかなか芽が出ずに苦悩の日々を送り、ロンドンの国際ジャズフェスティバルで注目されてデビューしたのがほんの数年前。恥ずかしながらインタビュー前は彼のことを知らなかったが、知っておくべきだったと後悔。なんせ、一夜にして心を奪われてしまった。

 ヒューマン・ビートボクサーのTaylor McFerrinとのコラボは、もうジャズの域をぶっ飛んでしまっているが、甘いJose Jamesの声となんともマッチしているのが不思議。Jose Jamesの声に注目が集まっているが、バンドメンバーもそれぞれのソロパートなど、確かな演奏テクニックで魅せてくれるのだ。Joseの言うとおり、いろんな音楽の要素が混じり合っているけれど、ベースはジャズなんだと思わせるメロディライン。それがもう、とにかく格好良すぎるのだ。

 最後は3拍子のしっとりした曲をじっくり歌い上げるJose。あぁ、これからJoseはいろんな人からのコラボオファーで人気者になるんだなと予感がする。クラブ・ジャズが好きなら、そうでなくてもJose Jamesの音楽は今後見逃せない存在だと思う。

 

 


José James
URL: http://josejamesmusic.com/

■ Melbourne International Jazz Festival
URL: http://www.melbournejazz.com/

 

取材・撮影協力:Kinさん、AKA CHOCHIN

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