日本人ストリンガー「スパイキー細谷」
全豪オープンを裏で支える日本人
2013年1月25日掲載
現在開催中の全豪オープンで活躍中のウィルソンチームの日本人ストリンガー(テニスラケットのガットを張る人)、スパイキー細谷こと細谷理さんにお話を伺いました。
ーまず初めに自己紹介をお願いします。
細谷理です。
ースパイキー細谷というニックネームのほうが有名ですよね。その由来は何ですか?
ストリンガーとして初めて行ったマイアミの大会で、たまたまスパイキーというガットをしょっちゅう張っていたので隣にいた友人から「またスパイキー張ってるのか!」と言われそれからスパイキーと呼ばれることになりました(笑)自分でもそのニックネームは気に入っています。
※スパイキーとは、表面がギザギザになっているガットのことで、張っている途中に音がするのですぐ何のガットを張っているか分かります。
ー初めてストリンガーとしてツアーに参加したきっかけは?
たまたま雑誌でアガシの専属ストリンガーの特集を見て、この人に会ってみたいと思ったんです。「どうやって張っているのか?」「一般の人が貼るのとどう違うのか?」ということが気になりました。そして漠然と興味を持ち続けて1年後、たまたまその人のホームページを見つけて、さらにそこにツアーストリンガー募集の広告を見つけました。ダメもとで送ってみると、すぐ返事が来たんです!2001年のオーストラリアンオープンの直後で、その後の3月のマイアミのマスターズに参加しないかというものでした。
ー初めてのマイアミのマスターズはいかがでしたか?
ストリンガーという仕事にはある程度自信があったんですが、英語だけの生活でコミュニケーションが大変で3日目くらいで泣きが入りました。朝も早かったですしね(笑)
ー全豪オープンでのストリンガーの一日のスケジュールを教えてください?
朝は8時から8時半くらいに始まり、ゲームの進行具合にも寄りますが夜は基本8時までです。8時以降もオンコートがあるので当番制で2、3人は毎日残っています。
ーオンコートとは何ですか?
試合中にガットを張り替えることです。選手がオンコートに出したいと審判に申請して認められると、スタッフから連絡があり、テンションの高さを聞いて張り替えます。基本的に15分前後で張り替えなければいけません。ここのストリンガーはチームに所属する前に1日ないし2日はトレーニングを受けていて、いろいろな状況に対応できるようにしています。
ー細谷さん自身は最高何分くらいで張り替えることができますか?
ラケットにもよりますが最速11分くらいです。早い人は9分で張る人もいますけど、正確かどうかは別ですけど(笑)
ー1人一日で何本くらい張りますか?チーム全体では?
平均15〜20本くらいです。一大会では200から300本くらいですね。チーム全体では、今日(23日)の時点で3500本を超えました。最終的に3700本くらいいくのではないかなと思います。去年のUSオープンが3300で記録だったんですが、早くもその記録を抜きました。
ー今までの記録を塗り替えた原因はメルボルン特有の天候の影響ですか?
それもありますが、ハイブリッドが増えたことが原因だと思います。ハイブリッドとは縦と横のガットをの別々のガットにすることです。現在の主流はナチュラル(天然の素材で伸びにくい素材)、ポリ(固くて反発の良いが伸びやすい素材)で、それぞれのいいところ取りをしているんですが、材質が違うため伸び方に差があるので緩みやすくなりバランスが悪くなるんです。一日経つと変わってしますので試合で使用していなくても張り替える必要が出てきます。今ではほとんどの選手がハイブリッドにしていますね。
ー今まででテンションが一番高かった選手は?
フィルポーシス選手からの要望で「MAX」というのがありました。マシンで設定できる最高のテンションで数字で言うと90ポンドくらいです。ナチュラルのガットを張っていたんですが、試合前にバッグで運んでいる最中に切れていたということがありました(笑)
ーでは逆に一番低かった選手は?
イタリアのボランドリ選手で対フェデラー戦のときに11ポンドというのがありました。バドミントンのガットくらいです。ゆるゆる過ぎて張るのが難しかったですね。
ー日本人選手のラケットは全て細谷さんが担当しているんですか?
だいたい僕に回ってきますね。今大会は全て僕がやりました。選手本人からよりもコーチから依頼が来ることが多いですね。
取材当日は車椅子テニスの国枝選手のラケットのガットを張っていました。
スパイキー細谷さんの日本のお店 On Court (Racquet)!
http://oncourtracquet.com/
スパイキー細谷さんのTwitter
https://twitter.com/stringerspikey
聞き手・文・写真:Raito Hino
コメント- さば (2013-01-25)
- いつも興味深い記事をありがとうございます!
数々の熱い試合を、こういう方達が陰で支えて下さっているんですね。
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