interview
キャリア・学ぶ

シンガー・ソング・ライター&歌劇派芸人 趙 博氏 インタビュー

浪花の唄う巨人が伝えたいこととは…

2009年7月30日掲載

  

 【プロフィール】
趙 博 (チョウ バク) Mr. Paggie Cho

1956年大阪市西成市生まれの大阪育ち。 5年前まで大学と予備校の講師を勤める。今は、「浪花の唄う巨人・パギやん」の異名をとるシンガー・ソング・ライター&歌劇派芸人。社会活動家でもあり、マイノリティの権利を訴える。

 

--おもな活動を教えてください。

ライブですね。小さな喫茶店でやったり、大きな会館でやったりと規模はまちまちです。コンサートと銘を打つものは年に数回程度。ほとんどが歌あり、語りありのライブです
 

 

 

--今回のメルボルンでの活動は?

モナッシュ大学 日本語学科のアリソン時田教授がコーディネートしてくださり、日本学研究に合わせて在日についてのパフォーマンス(ライブ&トーク)で伝えて欲しいという依頼を受け、メルボルンにやってきました。昨日のイベント(2009年7月19日 Saint Andrew’s Uniting Churchにて)はこちらにいる韓国人の方、韓国人教会の方が多くいらっしゃってくださり、手応えは良かったですよ。韓国の民謡を唄ったら、大きな拍手をいただいて、泣いておられる方もいました。

 

--おもにどのようなメッセージを伝えていますか?

「在日韓国人は税金を払っているけど、選挙権はないよ」、「日本政府、何とかしなさい」、「皆さん、そういうことを知っていますか?」ということです。私たちの文化と日本文化の違いについて、また、戦前植民地化の歌謡曲とその背景なども伝えています。


 

--メルボルンで在日韓国人のお話をされて、スムーズに伝わりましたか?

通じましたよ。ただ、みんな僕のことを日本人だと思っていますから、2回位は説明しなければなりません。まぁ、仕方がないですね。

 

--日本でも在日のお話をされますか?

そういう機会はあります。学校に呼ばれ、「在日の話をして欲しい」とか「その趣旨でライブをやってほしい」と依頼されることはあります。

 

--日本で在日の問題は色々あると思いますが、趙さんから見られてどう思われますか?

このごろ、再び露骨な差別が多く起きています。僕のサイトにも書き込みされますが、ひどいですよ。面と向かって言う勇気も無いくせに、卑怯ですよね。日本で生まれ育っている僕たちは何故主権者ではないのか?百年、こういうことが続いているんですよ。一方、我々在日の人間はそのうちいなくなるでしょうね。今は、国際結婚が圧倒的に多いし、帰化する人も増加していますからね。ニューカマーが増えるのに比して、「在日」の人口増加率は年1500人程度。新生児のほとんどが日本国籍を取得しています。政府は、「在日」がいなくなるのを分かっていますよね。また、差別があるからこそ日本国籍を取得した方がいいと思う人も多い。もちろん、ナショナリティーや「気持ち」の問題もありますが、いくら日本国籍をもっていても、エスニシティ・戦争・歴史的な問題をきちんと解決しなければ、またどこかで差別と人権の問題が出てくると思いますね。

 

 

--活躍されている在日の方は多いですよね。

そうですね、近年では朝鮮名で活躍している人が増えています。隔世の感がありますね。日本国籍だけど、あえて朝鮮名で弁護士として活躍している知人もいます。それから医者も多い。ただ、朝鮮名を使っているのは一般労働者ではなくて、資格がある人とか大企業で働いている人達です。昔は「在日」が大企業に勤めることなど、想像だにできなかった。だから今、職業的なプライドが民族的なプライドに繋がっていると思いますね。しかし、そういうプライドを持てない人が、残念ながら多数なんです。徹底的に出自を隠さざるを得ない…若い頃自分もそうでしたから、その辛さは骨身に染みてわかります。

 

--在日の若い方へメッセージはありますか?

「卑屈にならずに堂々と生きよう」ですね。こそこそしてもしかたないのです。僕らが気にするほど日本人は僕らのことを気にしていませんから。でも今、日本ではかえって虚しくなる、「未来」がまったく見えないですからね。本当に展望が無いですよ。ワーキング・プアが増えて、格差どころじゃない、階級差別が堂々とまかり通っている。大学を出ても何にもならない時代です。私だったら、こんな不況時に「大学なんか行くか、別の生き方をしよう」って思いますけどね、みんな同じ方向にしか行かない。猫も杓子も「大学、そして、いい会社」…体制を拒否する気概が無くなっていますね。

 

--メルボルンはいかがですか?

いい街ですね。到着するやいなや「あっ、軽い」って思いました。全然、視線を感じないので、重荷がとんでいった感じです。誰も何も言わずに放って置いてくれるのがいい。自分の思い込みかもしれないですが、日本は視線を感じる国です。いつも誰かに見られている気がするんです。実は韓国も同じで、常に他人の視線を感じますね。

 

--日本では何本くらいイベントをやられていますか?

週末はほとんどやっていますよ。年間に100本は優に越えているでしょうね。それくらいやらなきゃ、食べていけませんから(笑)。最近は東京でのイベントが多くなりましたね。門前仲町に「門仲天井ホール」という会場がありまして、ここ4,5年は月一のペースでやっています。芸人が東京に行きたがる気持ちは分かるけど、私は東京をベースにしたいとは思わない。僕が東京に行ったら「浪花の唄う巨人」じゃなくなるからね。大阪で生きているから、意味があるんです。



 

--どんな少年時代でしたか?

不良少年で、喧嘩に明け暮れていました(笑)。でも気が小さかったのでしょうね、「やくざ」にはなれませんでした。なる道はありましたし、実際になろうかと考えたこともありましたが、その道じゃ食べていけないと悟りましたね。

 

--今の日本社会に言いたい事はありますか?

やはり、底なしの保守社会をなんとかしてほしい。特にこの頃、若者ほど保守的。もっと暴れろよ、弱い者いじめせずに「強いもの虐め」しろよって言いたいですね。

 

--在日韓国人で良かったと思うことはありますか?

「日本人でなくて良かった」ですね。日本人じゃないから見える事がたくさんありますよ。メイン・ストリームにいる人には分からないけど、「ずれている人」「狭間にいる人間」の方が、よく物事が見えるのだと思います。辛 淑玉(シン・スゴ)が言っていましたが、“立派な日本人”と言う時の“立派な日本人”には、女性もマイノリティも障害者も入ってない。では、立派な日本人って誰?となると、“誇り高き日本男子“なんですよ。まず、そのカテゴリーを崩していかなきゃ。僕らのような人間が「日本人」の範疇に入った時、日本社会は本当に豊になるはずなんです。アイヌ民族、沖縄、被差別部落や「在日」、障害者や老人の知恵と文化は、日本社会全体に貢献できる質を持っている。マイノリティの宝に、皆が早く気付くべきです。

 

--では最後に、夢を聞かせてください。

まだまだ自分自身が発展途上なので、今やっていることをあと10年位はきちんと続けたいと思っています。有名になりたいとは全然思っていません。自分がやりたいと思ったことを納得いくまでやりたい、ただそれだけですね。この業界にいて言うのもなんですが、ちやほやされるのは好きじゃない。客と常に勝負している、そういう緊張の中で演じつづけるのが、僕の夢です。その先に「共生」が見えてくれば、もう死んでもいい(笑)。

 

【主な著書】僕は在日関西人(解放出版社 ¥1,600) 夢・葬送 (みずのわ出版 ¥2,310)

【CDアルバム】趙博ベスト30 (TAMAZO LABEL ¥3,000)
        音魂言霊 All That Jazz (みずのわ出版 ¥3,800)

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