ノリカの「やっぱり犬が好き♥」
更新日: 2012-06-22
第1回:コリンウッドとなくしたメンバーシップ
「Hey ノリ、今日のゲーム行く? もちろん行くだろ?」
金曜の午後。フッティ友のティムからの電話だ。
う~ん…相手コリンウッドなんだよね…いや~どうしようかな…う~ん…
「C'mon ノリ、 行かなきゃダメだって。行かなかったらメンバーシップ、キャンセルしちゃうぜ」
そのメンバーシップが、こないだセインツに酷い負け方して、あんたとやけ酒飲んだあたりから見つからないんだって。
「何? それってまさか言い訳じゃないだろ? ええ、ほんとに見つからない?
まあいいよ、うちに一枚スペアのチケットあるから」
結局、説き伏せられた。
「じゃ7時20分にフッツクレイ駅で」
初めまして、Noricaです。
我らが愛する『ドギーズ』こと、ウェスタン・ブルドッグス。
ベースはメルボルン西郊フッツクレイ、メルボルンきっての労働者階級エリア。
優勝したのはたった1度、58年前の1954年。
つまり、私を含めて、あまり裕福とは言えない人種がサポーターのほとんど。
スポンサー、少ない。
一言で言っちゃえば、地味で貧乏な球団。
ただし「ウチは先祖代々・一族郎党ドギーズ・ファン」という地元民も多く、ティムのとこのサイモン家も、しかり。
私は移民の日本人のくせにフッティー・ファン、
しかも地元フッツクレイだからって迂闊にもドギーズ・ファンになっちゃった人間だが、
そんな私のために「これはあんたのためっていうより、ドギーズに対するささやかな貢献だから」と言って、
一年間ホームゲームをタダで見られるという、決してお安くはないメンバーシップ・カードを買ってくれたりする一家、
それがサイモン家。
そんな熱いサポーターがいるのがドギーズ。
野球で言えば広島カープだ。
対する本日のお相手。
『コリンウッド』もしくは『パイズ』こと、コリンウッド・マグパイズ。
誰の目にも異議なく読売ジャイアンツ。
ユニフォームが白黒なのも、
ハデな選手が多いのも、
金持ちなとこも、
ファンがダントツで多いのも、
アンチが多いのも、
まさしく、
ザ・読売巨人軍である。
だからコリンウッド相手のゲームは、嫌なのだ。行きたくない。
白黒サポーターの数の多さにまず圧倒され、
「俺たちコリンウッドだし」的な自信満々プレーに気圧され、
対するドギーズの
「ああっ!? なぜそこでゴールを狙わない!? 外してもいいから蹴っちまえよ!?」
的プレーにがっかりし、
負け試合の帰りには、頭に血が昇ったティムと姉のベッキーが、白黒ファンとあわや掴み合いになったりするし、
…
…
何より今シーズン(も)、ドギーズ、すんごい調子悪いし、
今日もまた絶対、セインツの時みたいにボロ負けするし…。
私は、弱気であった。
結局、スタジアムには行かなかった。
「Oh well, まあそうだよね。テレビで見てるほうが賢い選択かもね」とティムに言われた。
ところがこのゲーム。
とりあえず観とくか、とテレビを点けたら、第2クオーターの時点で、何と、勝っていた。
後半最後に、あの「俺たちコリンウッドだし」的プレーがプチ炸裂して逆転負けはしたものの、
前半なんて細かく繋いで押しまくり、全体として結局すごくいい試合だったのだ。
ごめんよドギーズ。ごめんよティム。
なくしたと思ったメンバーシップ・カードは、その数日後、ひょんなところから出てきた。
やっぱり犬が好き。
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ノリカ・プロフィール
1971年東京生まれ。メルボルン在住。フリーで物書きをしつつ、日本語書籍専門の古本屋バーニングブックスを経営。家族はオーストラリア人の夫(フッティーにまったく興味なし)、8歳の娘(ドギーズが一番、キャッツは二番目に好きという浮気者)と、6歳の猫。動物は犬より猫が好き。
Web: kiku-kaku.com
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