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第十二回 知らずにナンパしてしまったのだろうか

今回は、タコ社長が高校生の時のわりと真面目なエピソード

「今、何時ですか。」英語のクラスじゃないんだから、もう少し気のきいたことを聞けなかったのかと思う。場所は、池袋の丸物デパート(今のパルコ)、高校一年の私は学生服に見を包みならが平静を装いそう聞いた。丸顔、おかっぱでお人形さんのような顔をして、緑色のセーターが体に必要以上にフィットしたおとなしそうな人だった。彼女は、階段の踊り場の椅子に腰掛けて休んでいた。
 時間を聞いただけでは終わらなかった。住所と電話番号も聞けた。人生、何だか急にバラ色に思えた瞬間だった。その後、何度か会う機会があった。私より2つ年上のKさんは、栃木の中学を卒業して東京の洋裁学校に通う、少々北関東ナマリのある人だった。
 「私、知らない人と話したの、初めてなの。貴方、学生服着ていたし、真面目そうだったからなの。誤解しないでね。」誤解はタコ家の家系だが、私は学生服って案外役に立つものだと思って感心したりして、Kさんが何を言いたかったのかまで気が回らなかった。Kさんは、真面目さを代表して栃木から上京しているような人で、いつまでたっても出会ったときのような関係が続いた。
 結局、私の気持ちと期待が先行し過ぎて、そのぎこちなさを大いに突かれ最後となった。Kさんからの最後の手紙に、「肉を食べると体にも悪いしどう猛になりますよ。あなたは、菜食主義者になった方がいいと思います。」とあった。じゃ、坊主はどう猛じゃないのか、などと怒ってみても始まらない。Kさんは、当時信奉していたある菜食主義者の先生が書いた本の名前と出版社を教えてくれた。
 私は、今つくづく思う。あの時菜食主義者になっていたら、人生だいぶ変わっていただろし、もしかしたら、今オーストラリアくんだりまで来ていないで、日本の農村あたりで静かに豚でも追いかけながら暮らしていたかもしれないと。「タコ社長の農村健全日記」とか書いていて。

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プロフィール

東京は東村山からオーストラリアに移住して24年目を迎えている。その間、人種を超えてさまざまな方々と出会ってきた。そんな方々との出会いをもとにして、定住者、旅行者、中長期滞在者、学生、ワーホリなどの方々との一期一会を綴ってみることにした。また、番外編としてオーストラリア以前の一期一会も記していきたい。

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