オポチュニティーショップ(1)
更新日: 2026-02-01
佐倉郁子は、55歳で、長年勤めた旅行会社を辞めた後、ボランティアで、オポチュニティー・ショップで働き始めた。そこは、救世軍のやっている店で、人から不要になった物を寄付してもらい、それを売って、慈善事業の資金にしている。駅前にある店は、服は勿論、本、飾り物、グラスや皿の食器類と、細かなものが、所狭しと並べられている。郁子は、もう二人のボランティア、郁子より10歳は年上のバーバラと、5歳年下のフィオーナと、午前9時から午後3時まで手伝っている。バーバラが一番長くボランティアをしていて、一応店長と言うことになっている。その日も、8時半に店に来て、バーバラとフィオーナと一緒に、寄付されたものを整理して、棚に並べる作業をしていた。郁子が古びた背広をハンガーにかけていると、突然バーバラのキャーっという悲鳴が聞こえた。郁子が驚いてバーバラの方を見ると、バーバラは寄付された木の箱を開けた状態で、腰を抜かして「これ、見て見て」と、震える指で箱の中身を指さした。
郁子は箱に何が入っていたのだろうと、恐る恐るのぞき込んでみると、そこには白骨化した人間の頭蓋骨や手足の骨が入っていた。
「これ、プラスチックの模型じゃないの?」と、郁子は、笑いながら骨も持ちあげたが、その骨の感触を確かめたとたん、骨を放り出し、血相を変えて、悲鳴を上げた。
「これ、プラスチックじゃないわ。きっと、本当の人骨よ」と、郁子は断言した。
郁子の後ろから箱を覗き込んだフィオーナは、郁子やバーバラに比べると冷静で、「すぐ、警察に連絡しなくっちゃ」と店の電話で000の番号を押して、警察に通報した。
警察が現れるまで、郁子もバーバラも呆然としていたが、フィオーナがてきぱきと、「こういう時は紅茶を飲むのが一番よ」と二人に紅茶をいれてくれた。郁子は、オーストラリアのテレビドラマで、気が動転することが起こると、誰かが「紅茶でも飲みましょう」と紅茶をいれる場面を見たが、「ああ、オーストラリア人って、本当にこういう時紅茶を飲むんだ」と変なことに感心した。
「フィオーナは怖くないの」
郁子は、白骨からできるだけ遠くに座って、そちらのほうを見ないようにしながら聞いた。郁子はフィオーナの度胸に感心したのだ。
「私、刑事ドラマが大好きなのよ。だから、別に驚かないわよ。もっとも血を流している死体を見るのは、御免だけれど」と、落ち着いた声で、紅茶を飲んでいた。
郁子たちが紅茶を飲み終わった頃、警察が現れた。警官の制服を着た人は一人もおらず、鑑識の制服を着た男一人と、普通の背広姿の刑事が二人、まだ閉店の札をぶら下げたままになっている店に入ってきた。
ちょさk






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