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オポチュニティーショップ(2)

 年上の刑事が、「一体、どんな骨を見つけたんですか?」と聞くので、フィオーナが「これです」と、開けっ放しになっている箱を指さした。
 鑑識の男は、早速、骨には触らないようにしてあらゆる角度から写真を撮り始めた。
刑事の方は、「これを寄付したのは誰なんですか?」と三人の顔を見ながら聞いた。
寄付してもらう際に、いちいち氏名や住所を聞いたり書いたりしてもらうわけではないので、郁子たちは「さあ?」と首を傾げた。
「じゃあ、これはいつ寄付されたんですか?」
「それは、覚えています。先週の金曜日の閉店前です。閉店間際だったので、その日は整理せずに、今朝初めて箱を開けてみて、驚いたんです」
「どんな人が持ってきたか、思い出せませんか?」と刑事が重ねて聞く。
郁子は、
「そういえば、その人、この箱以外にも、大きな袋を持って来たんじゃない」と、思い出しながら言った。
「ほかにも寄付した?その中には、どんなものが入っていたんです?」
バーバラが「そういえば、その袋の中、まだ見ていないわね」と郁子とフィオーナを見回しながら言った。
 刑事は興奮したように、「じゃあ、その袋も開けてみてください」と言う。
バーバラは大きなビニール袋を裏の倉庫から持ち出して来て、
「これです」と刑事に渡したが、その持つ手はおっかなびっくりで、その袋を早く手放したいと言う気持ちがもろに出ていた。
 そのビニール袋は黒く、蒲団が入るくらいの大きさだった。
刑事たちは白い手袋をはめ、慎重に袋の結び目を解き外し、皆が息をひそめて見守る中、袋の中を覗いた。そしておもむろに中に入っていたものを引っ張り出した。それは、医者が着るような白いコートだった。そのコートが10枚も入っていた。
「これは、いったいどういうことなんでしょう」と、ますます謎に包まれて、バーバラはつぶやいた。
刑事は、郁子に向かって、
「もし、もう一度これを持ってきた人物を見かけたら、この人だと証言することはできますか?」と聞いた。
郁子は、実は人の顔を覚えるのは苦手で、何十年か会っていなかった大学の恩師に再会した時も、「初めまして」と自己紹介をして、恩師を唖然とさせたことがある。
「人の顔を見分けるの、自信がないんですが…」と言うと、バーバラが、「確か30代くらいの白人の男だったと思いますよ」と援護射撃を出してくれた。すると、フィオーナも「そうそう。なんだか白いバンに乗っているようだったわ。店の前に停めたから、覚えているわ」と言い始めた。
「モンタージュ写真を作りたいので、今日お店が終わった後で、署に来てもらえますか?」と刑事が聞くと、フィオーナは「私は、娘を学校に迎えに行かなければいけないので、お店の後は時間がないんですが」と言う。郁子は、「じゃあ、今日は二人が警察署に行っている間、私が店番するわ」と申し出ると、刑事は「いやあ、ご協力ありがとうございます。それでは、お二人とも今から署に来てくれますか?」と言うので、二人は警察の車に乗せてもらって警察署に行ってしまった。パトカーに乗る時、フィオーナはとっても嬉しそうだった。まさか、実際に本物のパトカーに乗るチャンスがあるとは思わなかったようだ。
鑑識の人も白骨化した骨と、袋に入っていた白いコートを持って、帰っていった。

著作権所有者:久保田満里子

 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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