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断捨離(最終回)

そこに入っていたのは、百ドル札だったのである。それも一枚だけではない。5枚も入っていたのだ。どうやら500ドルを封筒にしまいこんでいたようであるが、いつ入れたのか、定かな記憶はない。しかし、無残にも細切れになった500ドルを前にして、美佐子は、自分のうかつさに頭が真っ白になった。500ドルもあれば、好きな服や、アクセサリーも買えたのにと思うと、その晩は自分のうかつさが恨めしくて眠られなかった。
翌朝、それでも美佐子は気を取り直して、もしかしたら500ドル戻せるかもしれないと思い、細長く切断されたお札を持って、銀行に行った。
銀行の受付に行き、行員におそるおそる聞いてみた。
「あのう、実は、うっかりしてシュレッダーにかけてしまったんですが、お金を新しいお札に変えてもらえるでしょうか」
こういったリクエストは今までなかったようで、行員が驚いたように、「どんなになったお札ですか?」と聞いたので、持ってきたチリヂリになったお札を広げて見せた。
行員は、一瞬考え込んで、「上司に聞いてみます」と言って、窓口から消えた。それから5分経って現れた行員の顔には笑顔が浮かんでいた。
「ええ、新札とおとりかえしますよ」
そういうわけで、美佐子は500ドルを失わなくて済んだのだが、捨てるときはちゃんと調べて捨てないと、とんだことになりかねないと、新しいお札を手にしての帰り道、つくづく思った。
それにしても、家に帰って、物が俄然少なくなった部屋を眺めて、美佐子は満足であった。まるで、自分の体についていた贅肉が無くなったような、すっきりした気分であった。

 
ちょさく



 

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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