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第四回 ストリップ小屋のオネエサン

少し番外編として、オーストラリア以前での一期一会も書いてみたい。今回は、その中でも少し地味な方の話、更にはまったく架空の話にしてみた。

東京は池袋の西口の、落語で有名な池袋演芸場をもう少し行くと何とも妖しげな店が立ち並ぶ路地がある。大人になりかけのある青年が、好奇心に燃え尽きそうになりながらそこに立っていたとしよう。そこで、「1000円」という文字のある看板にしっかり惹き付けられ、ストリップ小屋に入ってしまったとしてみる。

出てきた中年女性は、ほんの5分くらいクルクルしたりして厚手の上着を脱いだだけで、「はい、これ以上は別料金よ。どうする?」とくる。全く、何も見せてはいない。想像にしても、私はこういうことがどうも嫌いで苦手だ。看板に偽りあり。どうしてこれを称してストリップなのだ。辞書の説明と違う。子供の頃、千葉辺りの潮干狩りに来ていたシュミーズのオバサン達の方が、よっぽど色っぽかった、なんて思ったりする。

「お兄ちゃんね、こういう所に来るときにはもっとお金持って来なね。」女性が服をつけながらそんなことを言ったりする。なかなか入れないで店の前を行ったり来たりして、勇気を奮ってやっとの思いで入った所、なんていう設定である筈だ。あまりにむごい。

青森辺りから集団就職で出てきた無垢な青年なんて設定でもなく、まだ人を疑わない気持ちの方が強いころのことで、これはないだろうと憤ってしまう。こういうのが大人の裏の世界というのなら、これから一生185センチ82キロの子供でいたい、などと思ってもしまう。たとえば、この青年の父親が警察官だったりしたら、官憲に言いつけてやりたい衝動にも駆られたりするかも知れない。

「お兄ちゃんね、出るときにちゃんと見てね。看板に『1000円から』って書いてあるからね。私に文句言ってもダメよ。」もう、そういう親切心も通じない。あれだけエネルギーを使って入ってきて、このザマはなんだ。相手に不戦勝の至福を大いに与えてただ帰るなんて。そういう憤りが襲ってくるに違いない。仕方なく出るときにその看板とやら確認すると、老眼になったら絶対に書いていないと言い張って再び中に戻れるくらい小さな字で、「から」が書かれていたりする。人間は、こういう経験を積みながら、だんだんと大人になっていくのだろうか。

とはいえ、この方々も仕事、商売である。ギリギリのところでルールを守りつつ、高い利益率をキープしながらしっかりと利益を上げる。フーテンの寅さんも言っている。「見上げたもんだよ 屋根家のフンドシ。田へしたもんだよ カエルのションベン」そう叫びたくなってしまうような経験になるのではないだろうか。

恐らく、こういう経験をした小屋にはもう二度と行かないことだろう。そういう意味では、こういう店はリピーターを作れない訳で、商売としての本当のウマミを完全に逃している。
もし、私がこの小屋のタコオヤジだったら、こういうウブなお客さんにはもう少しだけ見せて恩を着せ、リピーターにならせるように社員教育を徹底するだろう。こんな話で威張ってみても始まらないが、架空の一期一会の話からも学ぶことはあるもんだと感心してしまう。いろんな一期一会があるもんだ。

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(タコ社長の本業)

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プロフィール

東京は東村山からオーストラリアに移住して24年目を迎えている。その間、人種を超えてさまざまな方々と出会ってきた。そんな方々との出会いをもとにして、定住者、旅行者、中長期滞在者、学生、ワーホリなどの方々との一期一会を綴ってみることにした。また、番外編としてオーストラリア以前の一期一会も記していきたい。

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