第十四回 ペニスサックに身も縮んだパプアニューギニア絡みの色男
更新日: 2010-08-02
何しろ声がいい。人の腹に響くように発せられるその声は冗談を言っても重く感じる。サラリーマン時代に担当していたパプアニューギニアの代理店の責任者で、アメリカ人のロジャー・ブラントだ。仕事をしていて、こいつには叶わないと思えた人は数え始めたらキリがないが、このロジャーはそのうちでも筆頭だった。何しろ格好いい。一つ一つの仕草が憎いくらい絵になる。私より少しだけ年上だったが、腹が据わっている。
「ロジャー、パイプはいつからやってるんだい?」
「ちょっと前からだけど。」
仕事中にパイプをふかすのが気に入った。
新宿の紀伊国屋の一階にあったパイプ屋に行って、早速私も真似して買ってふかしてみた。2週間くらい続いたが止めた。東村山の自宅付近で、パイプなんかやっていても誰も相手にしてくれない。
彼を六本木を一晩中引きずりまわしても、朝はすっきりとした顔をして厳しく仕事にはいる。タフな男でもあった。
「ロジャー・ブラント、知ってるよ。」
パブで飲んでいて、ふとしたことでニューギニアの話になって同じ男を知っていると言われた。つい最近までその人はニューギニアの金鉱山で仕事をしていて、その現場にロジャーがまだいたという。オクテディ金鉱山、多くのオーストラリア人が今でも働いている。
「すごく格好いい男だったけど。」と私が言うと、彼は大いに訝しがった。そうか、彼も定年間近のただのオヤジになっているんだ。六本木の、今はなきクラブマキシムのみどりさんを夢中にさせたロジャーも、ニューギニアの山奥でもう昔の面影はないのかもしれない。
タブービルというオクテディ金鉱山のある町は、1年のうち300日雨が降る熱帯だ。私は、鉱山の開発が始まる前に一度だけ行ったことがある。怖い顔でニタッと笑うペニスサックの裸族の人もいたりして私も全身が縮んでしまった。
ロジャーは、私が会社を辞めたときに親切な手紙をくれた。
「驚いたよ、会社を辞めるのか。でも日本語教師か、いいじゃないか。今度はオーストラリアで会えるね。しっかり、リーダーになってくれ。」
「リーダーとはもともとあるものではなく、作られるものだ。」
フットボールの有名なコーチの言葉を引用してロジャーが私を励ましてくれた。
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