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Vintage 8: トップソムリエ、東北で日本酒を学ぶ


「第14回世界最優秀ソムリエコンクール」のために日本を訪れた、私達6人のオーストラリア代表団。(前回のコラムをご参照ください。)
各メンバーは非営利団体であるソムリエオーストラリア協会の活動に力を入れつつ、当然のことながら、誰もがそれぞれの職場でも責任ある立場についているので、日本訪問直前は、お互いに連絡を取り合うのも困難なほど仕事に追われていました。日本に向かったのも、別々の便の飛行機。このメンバーが一同に日本に集うなんてある意味夢のようで、やっと東京のホテルで全員が再会したときは、抱き合って感動したものでした。

こうして日本に渡ったオーストラリアのトップソムリエ達に、日本の郷土料理や国酒「日本酒」を心ゆくまで楽しんでもらい、本物の日本の文化を紹介したい。それが私の情熱でした。そして「がんばろう日本」の気持ちも込めて、大会後にメンバーを東北へと誘ったのでした。彼らが日本の文化に深い理解を持ってくれれば、その下にもまた人が育ちます。それぞれが多忙で大会の疲れも大きい中、片道3時間以上の旅に全員が快く参加してくれました。

今回は、できる限り長文はやめて、シンプルに旅の様子を写真でご紹介します。

 


新幹線で「黒龍」を試飲する、ベン(ソムリエオーストラリア協会会長)とダン。
列車の中でお酒が楽しめるのは、日本ならではの旅の風情ですね。こちらオーストラリアでは、公共の場での飲酒や喫煙が厳しく制限されていますので、皆「ホンとなのか!?」と非日常的な経験を楽しんでいました。

 


世界大会7位のフランクと、20位のマーク。大会への大きなプレッシャーの後、安堵の表情でお弁当を楽しんでいます。
世界に挑んだ勇敢な二人も、家に帰れば優しいお父さん。フランクがお土産に買った小さな日本の袢纏は、かわいい息子さんにぴったりで、本当にキュートでした。マークがメルボルンの空港に帰ったときには、ご家族が温かくお迎えで、お父さんの帰りを楽しみにしていた子供達との姿に幸せが溢れていました。

 


山形は雪景色。心和やかになる列車の旅。
こんな多忙なメンバーを遠出に誘って良かったものか、内心少し悩んではいましたが、リラックスして楽しんでいる皆を見てやっと安心してきました。例えばフランクは、山形で一泊後すぐ成田に戻ってオーストラリアへ帰国、とんぼ返りでシドニーの職場へ。しかし、何度も本気でお礼を言ってくれましたよ。

 


雪を初めて見たメンバー。芭蕉の山寺を眺めた時は、子供のようにはしゃいで雪合戦まで始まりました。

 


そして訪れたのは、「出羽桜酒造」さん。蔵元の仲野益美社長は、業界でもとても慕われている人物です。
蔵には出羽桜資料館が併設されており、素晴らしいコレクションに驚かされました。

 


手作りの日本酒。旨い。「出羽桜」が、世界鑑評会入賞の常連であるのも頷けます。

 


麹室や醸造室など、各部屋に移動するたびに毎回違う上履きに履き替えます。菌の働きが大切な蔵での、細部までの気配りと想像しますが、あまり履物を脱ぐ文化の無い皆は、少しあたふた。
ベン会長がどれだけ愉快な人物かなかなか私の文章力ではお伝えできませんが、例えばこの時の一言。
「Listen、フランク・モローが上履きを履き間違えているが、これは一体何が起こるの?」

 


次に訪れたのは、栃木の「四季桜」さん。隅々まで清潔な蔵で、美味しいお酒が醸されていました。
酒サムライの入江啓祐さん、そしてインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)日本酒審査部門の最高責任者、大橋健一さんのお二人が、私達の短い訪問のためだけに遠方から駆けつけてくださいました。まさしく侍です。本当に有難うございました。

 


酒サムライから、内容の濃いレクチャーを受けるマークの真剣な姿。その後、宇都宮で餃子を40個以上も平らげたマークを、餃子サムライに任命します。


宇都宮駅で、世界大会優勝のパオロ・バッソと偶然同じ新幹線。世界は狭い。
温厚で優しい世界チャンピオン。できる人ほど、何も威張ったりはしませんね。

 

最後の写真は、出羽桜さんの酒蔵の壁。

私達の国、日本は本当に美しいですね。何より、日本を観光する友人に、犯罪や盗難に気をつけるよう口をうるさくする必要が少ないことが、他の国との大きな違いに思います。

メンバーは、心底日本を満喫できたようです。嬉しくなりました。

 

コラム一覧
Vintage Cellar: 全てのコラム
Vintage 1: Leeuwin Estate で過ごす、歴史的野外コンサート
Vintage 2: Yarra Yeringと楽しむ思い出のディナー
Vintage 3: Mandalaで学ぶ、ワインメーカーの情熱
Vintage 4: 旅の途中で飲むワイン
No Vintage: 空白のビンテージ
Vintage 5: オーストラリアが香るワイン、Granite Hills
Vintage 6: 山奥の小さな酒蔵「獺祭」
Vintage 7: 「第14回世界最優秀ソムリエコンクール」

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                                                          伊賀 雅彦    Masahiko Iga                                         ソムリエオーストラリア協会初の日本人プロフェッショナル会員、ワインソサエティーワインジャッジ、きき酒師                                                                          素晴らしい人々が生きているワイン&フード業界。その楽しさを、人々の優しい素顔を、そして食とワインと共に歩くオーストラリアを、実際の経験を基に現場からご紹介します。 私にとっては、実際に見たこと、聞いたこと、経験したこと、体験したことが最も大切です。知ったかの薀蓄や、本で読んだばかりの上っ面の知識を披露する場所には致しません。

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