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食物思考~Thought for Food~(16) ゆでたまご編

 今年も気がつけばイースターな季節です。いろんなお店が一斉に、ホリデーだから閉めちゃうね、なんて言うものだから、お正月から3カ月でまたお正月気分なのです。それでも違っているのは、スーパーマーケットでずらっと並べられているたまご型のチョコレートの風景。初めて見た時は、ゆでたまごをチョコレートでコーティングしているのかと思ったものです。生卵、と考えなかったのはもちろん回してチェックしてみたからで、それはよく回っておりました。



 オーストラリアのガイジンさんがチョコレートのイースターエッグを喜んで食べていても、彼らが本物のゆでたまごにかぶりついているところは、ほとんど見たことがありませぬ。おかしら付きの魚料理を気味悪がるように、卵そのままの姿で食べるには抵抗を覚えるのだろうと思われます。

 私は卵の姿に抵抗を少し覚える方がいいのかも。一般的に、コレストロール含有量が多い卵は「一日1個」が適切とされていますが、私は一日平均2個、多い時には5個の卵を摂取する者であります。明らかに過剰摂取である私の主な調理方法は「ゆでる」だけ。そう、ゆでたまごの誕生です。雛の誕生を邪魔しておいて言うのもなんですが。

 ひとつ明言しておきますと、ニワトリのゆでたまごは一度に4つまでがよろしいです。以前、5つと立て続けに口に放り込んだら、気分が最高潮に悪くなりましたから。

 ところで、ゆでたまごの愛好家には「白身派」と「黄身派」がいらっしゃいますが、私は明らかに前者。ゆであがった卵の白身を傷つけず、殻を剥くことに全身全霊を捧げます。つるんと剥いて、輝かしいばかりの白さに出会う喜びは何事にも代えがたいものがあります。加えて私のモットーは、「ゆでたまごは塩なしで食する」。とりわけ「白身派」としては、白身はそれ自体の味を楽しむことに意義があると信じております。

 ゆでたまごならば、もちろんウズラ卵も大好きです。八宝菜に入る具は、ウズラゆでたまごだけでいいとさえ思います。最近は、そのゆでたまごをBBQの際に串に刺して焼くのがお気に入り。ちなみにウズラは英語でクエイル(quail)。クエー、クエーと鳴くからでしょうかね?

 日本を去る前に所属していた会社の上司は、ウズラ卵が大の苦手でした。ニワトリの卵はまったく平気なのに、ウズラは受け入れられなかったのです。私はなんとかウズラのよさをわかってもらおうと話し合いに話し合いを重ねましたが、徒労に終わることとなり、結局それが原因で会社を去り、オーストラリアへ来た次第でございます。たぶん。



 食べ物の趣味が合わないと一緒に仕事ができないわけではないですが、食べ物の趣味が合うと、その人との間柄がとても近しいものになることには間違いございません。恋人や家族ならなおのこと、一緒に食を共にする時間が多いのだから、好みが合うにこしたことはございませぬ。

 去年の話になりますが、ウチの姉上がめでたく結婚することとなり、私は式に参列するため、デキるビジネスマンの出張ばりに、3泊4日の日本帰省を敢行したのでございます。

 式は西洋式で、チャペルにて挙げられました。彼女を包む真っ白なウェディングドレスは、ゆでたまごの白身がもたらすのと同じく、私に喜びを与えてくれました。姉もゆでたまご好きなので心地よいにちがいありますまい、とそう浸っていた私でしたが、披露宴で現れた姉が身に纏っていたのは華やかなイエローのドレス。思わず笑いが込み上げました。

 そうそう、姉上は「黄身派」だったな、と。
 

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プロフィール

私は、一日に一度は市場に行かなければ落ち着かないマーケットホリック。これは、そんな私と食物たちとの四方山話です。

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