No Vintage: 空白のビンテージ
更新日: 2010-02-08
ビクトリア州の大規模なブッシュファイヤ(山火事)から一年が経つ。
173名の犠牲者への追悼式が、メルボルンのセント・ポールス大聖堂(St Paul's Cathedral)にて行われた。
遺族の方を始め、ケビン・ラッド首相ほか政府要人と、2000人余りの人々が参列した。(Prime Minister Kevin Rudd, Victorian Premier John Brumby, Governor-General Quentin Bryce, Federal Opposition Leader Tony Abbott)
特別だったのは、宗教や宗派という垣根を超えた式典となったこと。キリスト教の大聖堂に、仏教、イスラム教、ヒンズー教などなど、多くの主だった宗教の代表者が公式に迎えられた。カソリック、プロテスタントの隔たりもなく、Multi-Faith Church Serviceと呼ばれた。人生の喜びや悲しみ、助け合いに向き合う際、世界がひとつになることがこの上ない。こういった意味深い式典が持たれた事を嬉しく思い、メルボルンらしい文化の発展する方向を誇りに思う。
山火事のあった数週間、空から大量の煙が消えることはなかった。煙の影響で、高く昇った太陽がいつまでも、不思議な赤色に輝いていたのが印象に残っている。
3000以上の建物や、動物達、自然の木々が焼失。いくつもの町が、完全に破壊された。
葡萄畑も大きな影響を受けた。焼失を免れたワイナリーも、煙の匂い(Smork taint)がついてしまった葡萄の果実をどうすることもできない。また、ショックを受けた葡萄の樹は、次の年へのエネルギーを蓄える時期であるはずの冬にも、芽を出し続け成長を止めようとしなかった。これらの新芽は取り除いてやり、実をつけさせる前に数年間樹を休ませ、しっかり体力を戻してやることが必要と言う。
多くのワイナリーで、ビンテージが空白となったこの年。同時に、寝かされていたバック・ビンテージを全て失ったワイナリーもある。彼らの言葉は重いものだったが、「これが人生。仕方がない。」と、今では悲しみを隠した笑顔を見せてくれる。
オーストラリアの人々は、こうした苦難を乗り越えてきた。
2009年2月7日は、BLACK SATURDAYと呼ばれる。
ABC News: Black Saturday memorial(記事)
http://www.abc.net.au/news/stories/2010/02/07/2812439.htm
ABC News: Black Saturday bushfires(映像)
http://www.abc.net.au/news/video/2010/02/07/2812464.htm
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