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The Horse Whisperer -洋書レビュー4/5

ベストセラー『ホース・ウィスパラー』レビュー

 

◇作品概要
ニューヨークに住む弁護士と雑誌編集長Annieの夫妻の10才の娘Graceが、別荘での乗馬遊びの最中に交通事故に巻き込まれ、Graceは膝から下を切断し片足となり、馬(Pilgrim)も瀕死の重傷を負う。また同時に友人のJudithと彼女の馬(Gulliver)を失ってしまう。肉体的な傷だけでなく、GraceとPilgrimはそれぞれ周囲に心を閉ざし、自暴自棄になってしまう。

この状況を打破するためにはGraceだけでなくPilgrimの治療も必然と考えたAnnieは心を砕く。そしてモンタナの牧場に住む、荒馬を静める名人Tom Booker(ホース・ウィスパラー)のことを聞きつけ、自己の職をなげうって馬をトレーラーに載せてGraceとともにモンタナに押しかけ治療を頼む。

  

◇作者
Nicholas Evans
1950年生まれ、イギリス出身。1982年より著名なライターやDavid Hockney、 Francis Bacon、 Patricia Highsmithといったフィルム制作者などのアート・ドキュメンタリーを制作し始め、その後約10年に亘ってテレビ番組、映画制作などに携わる。 1993年にホース・ウィスパラーのことを知人から聞き、初著として書いたのがこの作品。1995年に出版され、ベストセラーとなる。20ヶ国、36言語に翻訳されている。また作品はRobert Redford監督・製作・出演により映画化されている。

◇Review
大自然の中で語られるのは、家族愛、友情、恋愛。片足を失っても、そのことに悲壮感を現さず気丈にふるまいつつ、友人を失ったことを悔やみ続けるGraceは、仕事優先だった母親との確執もあり、すべてに対して心を閉ざしている。大自然の中でTomとの交流や、 Pilgrimの療養を見守るうちに少しずつ心を開く。

馬の気持ちを読み取り、その心をも開放させることができるTomは、口数が少なく誠実な男性として描かれている。実際に存在するホース・ウィスパラーをモデルに描かれており、ホース・ウィスパラーとは馬などの動物と心を通い合わすことができる潜在的な能力を有する人を意味する。昔の人々は自然に身につけていた能力であると著者は言及している。

 

ダイナミックな自然の中で、馬の美しい姿や家族愛の描写や心の傷を癒していくGrace の姿はとても感動的で美しい。Tomの治療は少々手荒く、最後の仕上げとしてGraceは無理に横倒しにされたPilgrimの上に乗せられる。泣きじゃくるGraceと嫌がるPilgrimに、Tomが声をあげて諭すシーンは心が痛くなる。その後二度と乗ることはできないと思っていたPilgrimの背に乗り、大自然の中を散歩することができるようになるまで時間はかからなかった。

Annieは旦那を地元ニューヨークに残し、娘と二人でやってきたモンタナでTomと恋に落ちる。彼女たちがモンタナを離れた後に、旦那は何も言わずAnnieの元を去っていく。GraceもAnnieの決断を何も言わずに受け入れたようだった。そのことにはじめは全く理解できずに、少し嫌悪感を抱いた。数日間いろいろ考えて、ある日ふと思ったのが、「女性は自分が‘女’であると認識させてくれる男性に落ちてしまう」のではないだろうか…と。なんとなく違和感が残りつつも、腑に落ちた瞬間だった。

映画化されていたことを知らずに読んだ作品で、未だに映画は観ていない。Robert Redford氏が演じたTomが気になるところ。若き日のScarlett JohanssonがGraceを演じている。

The Horse Whisperer
Published By Dell Publishing, 1995
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◇The Movie Trailer

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