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−You Have No Chance With Coincidence−

Yusk Imai ‘新しい世界へ吸い込まれるとき’

2011年9月14日掲載

スミスストリートから少し入ったところにあるBackwoods Galleryで、おもしろそうな展示会があると聞き足を運んでみた。雨が今にも降り出しそうな夜だったが、ギャラリーに近づくと、暗闇の中人で賑わっていた。メルボルンのアート好きはオープニングナイトを欠かさないらしい。


日本人の父を持つブラジル、サンパウロ育ちのYusk。ブラジル以外でのソロのショーは今回が初だそうだ。4年前から絵画を本格的にやり始め、それからいろんな偶然がおもしろいように起こり今の自分を作ってくれたという。よく人生正しい方向にいれば、事がうまく運んでいくものだが、間違った方向に進んでいると、それを妨げるかのようにいろんな困難が起こるという。私は彼の話を聞きながら、そんな昔誰かに聞いた言葉をふと思い出した。

 

サンパウロでグラフィティーアーティストとして名を広めたYusk Imai。今はアーティストという呼び名でなく、ペインター(画家)と呼ばれたいという。その言葉には彼がこれから画家としてやっていきたいという強い思いを感じとれた。彼自身は柔らかい雰囲気を持つ笑顔の素敵な人である。展示会では多くの人から作品について話しかけられていたが、彼の対応がとても丁寧で礼儀正しく、まさに彼の人柄を表していた。


彼の絵を見ているとKlimtを思い出す。色使いや絵に潜む妖艶な雰囲気が、どことなくKlimt風な気がし、彼にそれを伝えると「Klimtはとても好きな画家なんだ」と照れくさそうに笑った。もちろん、彼の絵にはグラフィティーをしていたという背景も感じるし、彼特有の個性がたくさんつまっている。細かい部分にまで筆が行き届いているドローイングには、人が皆顔をくっつけるようにし見入っていた。洋とも和とも言える素材が感じられる絵には、多くの人が魅了されていた。


きっとこれから大きく羽ばたく画家なんだろうなという可能性を、彼の作品からは感じた。展示会の帰り道、’素敵な画家に出会えた’という嬉しい余韻が、私にはずっと残っていた。



YUSK
http://yusk.blogspot.com/

BACKWOODS Gallery
25 Easey st, Collingwood, VIC 3066
http://www.facebook.com/pages/Backwoods-Gallery/170330242994009

9th Sep - 25th Sep
Thu-Fri 3pm-6pm/ Sat-Sun 12pm-6pm


 

文 & 写真 : 兼重 貴子

Written and photographed by Takako Drew

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