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‘In camera and in public’写真展

見ること、見られていること

2011年10月17日掲載

 

Melbourne Festivalの一貫で、今‘吉行耕平’という日本人フォトグラファーの写真が Centre for Contemporary Photography(CCP) に展示されているのを、皆さん知っているだろうか。

この展示会は、ASIO(Australian Security Intelligent Organization) の機密扱いから外された1960年代の写真から、吉行耕平が1970年代新宿の中央公園で、情事を行うカップルを赤外線暗視カメラを使って撮影した写真などが展示されている。今回の展示会で興味深いことは、写真の被写体達は皆 ‘写真を撮られていることを知らない’ という点だ。キュレイターのNaomi Cassさんは、写真家と写真を撮られていることを知らない被写体との関係に焦点を置きながら、私達に色々なことを問いかけている。

現代社会の中で、私達のプライバシーは公共の至る所にあるCCTVやSocial Networkで、常にパブリックにさらされている。インターネットで多くの情報が得られる一方で、私達のプライバシーも他人によって簡単に侵入される。
展示会の中ではそういった 「プライバシー」 という難しい課題を、‘カメラ’ と ‘撮影されていることに気づいてない被写体’ との関係を通して考えさせられる。そしてその中でメインで取り挙げられているのが、 吉行耕平の写真「The Park」だ。

Kohei Yoshiyuki
Untitled, 1971
From the series The Park
Gelatin Silver Print
© Kohei Yoshiyuki, Courtesy Yossi Milo Gallery, New York
 

1970年代に東京の公園で、約半年間情事を行うカップルを撮影した吉行耕平。当時週刊新潮に連載し、センセーショナルな写真として話題になる。彼は赤外線暗視カメラを持ち毎日公園に通い、ノゾキ屋と呼ばれる人にノゾキのイロハの手ほどきを受けながら、いろんなカップルの情事を密かに撮り続ける。その行為は響きはよくないがまさに「盗撮」といえるだろう。

しかしただの盗撮で終わらなかったのが、今彼がこうやって注目されている理由となる。彼の写真の中には暗闇で情事にふけるカップルだけでなく、それを必死で覗く人達、カップルに刺激される人達など、カップルの周りの傍観者を写真に加えたことによって、幾つかの層を写真の中に作り上げた。それは彼の写真を見る物に、ただの情事写真が持つ‘ポルノ’という枠を超えた視野を与えることになる。

吉行耕平のこの写真「The Park」は確かに、物議をかもしだす写真である。人が彼の写真をどう見るかによって、これをアートと受け入れ難いと感じる人も多いだろう。ただいろんなものが曝け出されてる現代社会だからこそ、この展示会のテーマは、私達にいろんな疑問や考えを与えてくれる。そして改めて ‘写真’ が人のプライバシーに侵入する題材の一つとなるという認識も与えられる。近年、街によっては公共の場での写真撮影が禁止されるということも増えてきている。フォトグラファーの立つ位置は段々複雑になっているんじゃないだろうか。

 

※今週の日曜が最終日のこの展示会、興味ある方は是非覗きにいってみてほしい。(月、火曜が休館日なのを忘れないように!)


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場所:


Centre for Contemporary Photography (CCP),

WEB:
http://www.ccp.org.au/
場所:404 George Street, Fitzroy 3065
日時:9月16日 Fri - 10月23日, Sun
 Wed-Fri 11am - 6pm
 Sat & Sun 12pm - 5pm
(Closed Mon & Tue)
※16歳以下は大人同伴

チケット 無料
 

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文:兼重貴子 (Written by Takako Drew)

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