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イベントレポート

VIENNA ART & DESIGN -Melbourne Winter Masterpieces-

オーストラリア初のクリムトの作品も見られる絶好のチャンス!

                                         2011年9月13日掲載

4年の歳月をかけてオープンしたNGV(ナショナルギャラリービクトリア)の「VIENNA ART & DESIGN ウィーンアート&デザイン」NGV150周年記念の一貫ともなるこのイベントは、20世紀初めの偉大なるウィーンアーティストによる300以上の作品が揃えられ、NGVが力を入れている展示会だ。

19世紀後半から20世紀当初のウィーンには、パリに負けず多くのアーティスト、デザイナー、建築家、ライター、音楽家、思想家が集まり、革新的な動きを作り出していた。今回そこに注目したこの ウィーンアート&デザイン展示会では、当時の主要アーティストを通して、それがどんなものだったかを紹介している。

展示会のハイライトになっている3人。

- Gustav Klimt (1826-1918) グスタフ クリムト -
オーストリアのシンボル的アーティスト。 今回9つの彼の作品中、8つはオーストラリア初上陸というから、かなり貴重だ。展示会のハイライト的作品になっているものは、彼が生涯を通して親しかった女性 Emilie Flögeの肖像画だ。


クリムトといえば、多くの女性を描いていることで有名だ。私は前々から女性を美しく官能的に描くことに関して、クリムトの右に出る者はいないと思っている。彼女らの表情からは 、いろんな感情が読み取れる。愛される幸せ、嫉妬、美、苦悩、甘美、妖艶、恍惚、そしてエロス。多くの女性が隠しがちな感情や欲望を充実に描いてる彼の絵は、なんとも不思議な気持ちで魅了されてしまう。これは女性という存在を愛おしむ気持ちがなければ、到底描けないんではないかと思わせる。


しかし今でこそ人気のあるクリムトの作品だが、当時彼の芸術に対するアプローチは、保守的な社会では受け入れ難いものだった。裸体、妊婦、性描写、そういったスキャンダラス的なエロス作品は、当然批判の的となる。

クリムトはある事件をきっかけに、そういった閉鎖的、独善的、古典的、伝統的なウィーン芸術家連盟に嫌気がさし、何人かの仲間と新しい芸術運動を作る。それが ‘ウィーン分離派 VIENNA SECESSION’ と言われるもので、クリムトは初代の名誉会長だ。今でもウィーンに残る分離派展示館の玄関には「時代には時代の芸術を、芸術には芸術の自由を( "DER ZEIT IHRE KUNST, DIE KUNST IHRE FREIHEIT")」というメッセージが刻まれている。彼らは展覧会や出版を通して、因習にとらわれない若い芸術家に定期的に作品を展示する機会を与え、当時のウィーンに前衛的な芸術の動きを作った。


- Egon Schiele (1890-1918)  エゴン シーレ -

そしてもう一人ここで紹介したい人物が彼である。当時クリムトが高い評価をし、自分のモデルを紹介するなどと目をかけていたのが エゴン シーレだ。この二人の共通点は「生と死」そして「エロス」をテーマにした作品を多く描いてることだ。ただシーレの作品はクリムトノ作品と違い、同じ女性の裸体でも妖艶な美などを感じるというより、恐怖や不安、孤独、やり場のない苦しみなどを訴えている。性描写はあまりに顕著だし、モデルの表情は決して美しいとは言えない。


シーレは未成年者の裸体を描き禁固刑にあったなど少し複雑な過去を持つ人だが、1918年の第49回分離派展示会では高い評価を受け、画家としての地位を確立しようとしていた。しかしその矢先に、当時流行していたスペイン風邪によって28歳という若さで命を落とすことになる。


今回展示会では、彼の印象的な自画像や、多くの裸体画を通して、シーレという人が紹介されている。好き嫌いに別れる彼の作品だが、人の内面をとことん追求した彼の作品は見る物の心を鷲掴みにする。私達が目を背けたくなるような感情にまで迫っている彼の作品は、時代に関係なく大きなインパクトを与えてくれ、それこそが彼が望んだ芸術というものだった。

「現代芸術というものなんてありはしない。あるのは永久に続く芸術だけだ 」

- Josef Hoffmann (1870-1956) ヨーゼフ ホフマン -
建築家&デザイナーである彼は ‘ウィーン分離派 VIENNA SECESSION’の設立メンバーの一人であり、1903年には ‘ウィーン工房(VIENNA WORKSHOP)’を主宰する。ウィーン工房 とは、「モダンデザインの父」と呼ばれるイギリス人のWilliam Morris ウイリアム モリスが主導した美術工芸運動(Arts and Crafts Movement)の影響を受けたもので、生活と芸術を統一しようとした運動だ。

近代建築の歴史において、ホフマンは「モダンデザインのパイオニア」とも呼ばれている。今回の展示会の中では、ホフマンの初期から晩年に至る幅広い装飾芸術、オブジェクト、家具、日用品などがAdolf Loosなどの作品と共に展示されている。


 

冬の寒さがまだ少し残るこの頃、屋内の展示会に足を運び、ゆっくり時間をかけてアート鑑賞をしてみてはどうだろう。彼らの作品が好きでも嫌いでも、そんなことはどちらでもいいと思う。有名な作品だから、人がいいと言うからそれをいいと思うのではなく、自分の感性でアートは楽しむことが大切だ。私は昔美術本を読み過ぎて、それに気づくのに少し時間がかかった。多少の知識は作品を理解する上で必要だと思うが、アート、芸術は頭でっかちにならず心で感じること。そんな簡単なことを皆さんにも忘れないでほしい。

 

※ 今回残念ながらクリムトの最も有名な作品Kissはきていない。ただこの作品は国外を出てことがないそうなので仕方ない。ここでKissがきていなくて残念だと思われた方や、今回の展示会でクリムトやウィーンに興味を持たれた方に朗報!この展示会の中で、なんと‘オーストリアへの旅行を抽選でプレゼント’という企画がされていた。要チェック!

 

展示期間は10月9日までと後一ヶ月。会場へ急ごう!


場所:National Gallery Victoria (http://www.ngv.vic.gov.au/)
住所:180 St Kilda Road
期間:6月18日-10月9日
時間:10am−5pm、期間中毎週水曜日は9pmまで
チケット: Adult  $24  /  Concession  $20  /  Child  (ages  5‐15)  $12  /  Family  (2  adults   &  3  children)  $65  /  NGV  Member  Adult  $18  /  NGV  Member  Family  $45

 


写真・文 兼重貴子
Written and Photographed by Takako Drew

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