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Gustave Moreau ‘the Eternal Feminine’

世紀末の画家グスターヴ・モローの人生とは。

ナショナルギャラリーでグスターヴ・モローの展示会が今開催されている。今週で終わりのこの展示会だが、是非この機会に現代アートが主流なメルボルンで、あまり古い美術に馴染みのない人にこの展示会と彼という人物について紹介してみたい。

 
Jupiter and Europa(左)、Hercules and Omphale(右)
 

グスターヴ・モロー(1826-1898)はパリに生まれ、生涯で約800の絵画、水彩画、ドローイングを残している。今回の展示会ではその中の117作品が紹介されている。

彼の絵は象徴主義と言われ、物事を忠実に描かず、人間の内面や夢、神秘性を象徴的に描く幻想的なものである。彼の絵を理解する上で、彼の生きた時代はとても大きな意味を持つ。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパを中心に「世紀末芸術」と言われる動きがあった。これは新しい時代を前に起こる特有な文化的現象であり、とりわけ終末観あるいは終末の予兆を示した動きと言われる。その名の通り幻想的、神秘的、退廃的な芸術が特徴とされ、特に’’死やエロス’’などのテーマが好んで使われた。芸術家はそれらの表現法として、聖書、神話、伝説、文学を使う。これは当時アカデミーが推奨する歴史画や肖像画とは大きく異なるものであり、象徴主義はまさにこの世紀末芸術の一つであった。

    
The apparition
 

象徴主義の先駆け者と言われるグスターヴ・モローは聖書や神話、文学的なテーマを基に幻想的な絵を多く描いている。彼の絵は一見古典的な絵のようにも感じるが、当時19C後半に流行していた物事を現実的に描く‘現実主義(リアリズム)’や絵を屋外で描くことを始めた風景画専門の‘印象主義(インプレッショニズム’)に比べると、当時の発想にない新しいものであった。

ミドルクラスの裕福な家庭で育った彼は、建築家の父親にその才能を見出される。学校を辞め家庭教育で育った彼の家には大きな図書館があり、そこでモローは何冊もの神話、歴史書を読む。モローは当時芸術の中心であるイタリアにも家族と共に行き、そこで多くの芸術を目にし、ミケランジェロ、ダヴィンチというイタリアの巨匠から多くの影響を受ける。
しかし彼の人生を語る上で欠かせない人は他に2人いた。それは彼の母親Pauline Moreauと生涯の友Alexandrine Dureuxだ。彼女らをモデルにした絵は彼の手によって数多く描かれている。数々の女性をテーマにした彼の作品は、彼女らなしでは存在しなかっただろう。

  
Pauline Moreau & himself(左)、Alexandrine Dureux(右)


今回の展示会のコンセプトは’モローの女性に対する想い’、母親Pauline、Alexandrineや彼が執拗に描いた当時ミューズとなっている女性達に焦点が置かれている。彼はクレオパトラ、サロメ、シェイクスピアのマクベス夫人などの歴史的に象徴的な多くの女性の悲劇を耽美的に描いている。これらの作品はパリの ギュスターヴ・モロー美術館より遥々メルボルンへ届けられたものであり、遠いパリに足を運ばずとも彼の作品を堪能できるまたとないチャンスである。

  
Lady Macbeth(左)、Cleopatra(右)

キュレーターのTedさんは、お客さんがこの展示会を去るときに、いかに グスターヴ・モローが19世紀の偉大な芸術家の一人であったかを感じてほしいと言っている。モローは素晴らしいストーリーテラーである。彼の作品から語られる歴史、神話画を皆さんで存分に楽しんでほしい。

4月10日が最終日と残り少なくなってきている展示会だが、 是非この機会に世紀末芸術をここメルボルンで感じてみてはどうだろう。遠い昔に生きた芸術家に思いを馳せるのもたまには悪くないと思う。

  
 

Date & times
10/12/2010 to 10/04/2011
10:00 AM - 5:00 PM
、Closed Tuesdays.
Location:NGV International
、180 St Kilda Road Melbourne VIC 3004
Price:Admission fees: Adult $15 / Concession $12 / Child $7.50 / Family $42.
Contact details:Tel.:8620 2222 
http://www.ngv.vic.gov.au/whats-on/exhibitions/exhibitions/gustave-moreau
www.ngv.vic.gov.au

                                                  文 写真:兼重貴子 (Written and photographed by Takako Drew)
 

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[ 2/Apr/2011 ]



 

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