侍のいるカフェ。
更新日: 2015-04-16
第10杯 - 侍のいるカフェ。
メルボルン日本人バリスタの中でも一際、輝きを放つ男、深山晋作。
人は彼を「侍」と呼ぶ。- Latte Art Samurai
バリスタ歴、若干1年半とは思えない彼の技術は実に洗練されている。シティの中でも常に忙しいカフェSensory Lab で働く彼。デパートの1階ということもあり、朝から夕暮れ閉店まで常に満席となるカフェだ。St. Ali 系列でもあるこのカフェは人材育成にも力を入れている。そういった恵まれた環境においても決して努力を忘れない「侍」に私は気付いたら惹かれていたのだ。家が近いということもあっていつのまにか私の定番カフェとなっていた。忙しい時でも、目があうと、「いつもの?」と決して笑顔も忘れない。昼下がりの買い物客とランチを終えたサラリーマンたちでひしめき合う店内。彼から一番近い席に私は陣取った。隣の客の飲む Espresso の香りがすでに私の眠気を覚ましてくれる。
そして、彼の努力が実ろうとする日がやってきた。先日メルボルンで行われたMICE - Melbourne International Coffee Expo での Latte Art 部門の出場権を獲得したのだ。そんな彼とコーヒーについて語るという数時間に及んだ対談。大会の模様も交えてお届けする今回の C for Coffee. 「侍」のいるカフェ。
いつだっただろう、彼のコーヒーを初めて飲んだのは。メルボルンには数多くの日本人バリスタたちが働いている。たまたま立ち寄ったカフェで日本人バリスタに遭遇するのは珍しいことではない。オージーに比べて、手先の器用な日本人ならではの繊細なラテアートもかなり高い技術とも言える。努力を惜しむことなく、練習に練習を重ねて確立した彼のラテアート技術には目を見張るものがある。そして、明らかに彼のコーヒーは私が初めて飲んだ頃より格段に美味しくなっている。
彼の働く Sensory Lab には数多くのバリスタがいるが、その中でも彼の技術はベストだろう。1日に数100杯ものコーヒーを淹れるのだ。本当に好きでなければ続かない仕事だ。「継続は力なり」とはよく言ったものだ。
Lovely Fish - MICE ステージにて
もともとシェフだった彼。飛び込みで St.Ali に仕事を探しに行き、たまたまいたオーナーに見初められてキッチンに入ったもののコーヒーの魅力に取り憑かれバリスタの修行を始める。その間、周りも驚くほどのスピードでバリスタとしての技術を身につける。「どれだけ練習したのか覚えていません。」というほど努力を積んだ彼がもう一つ、努力をしたことがある。それは、英語の勉強だ。バリスタとして海外で働く上で絶対に欠かせないものである「英語」海外に住む上で必要不可欠なもの。バリスタであろうが他の職業であろうが海外に住むと決めた以上、避けては通れないものだ。
私も昔、若かりし頃そうだったように海外に憧れる若者は多い。憧れることは誰にでもできるのだが、そこから実現させるのかさせないのかだ。スーツケースひとつで海外に飛び出してみたはいいものの、英語ができず右往左往。海外に住んでいるということに対しての優越感に溺れてやるべきことは後回し。実によくあるパターンだ。気が付いたら残りのビザは数ヶ月、英語が話せるようになったわけでもなく無駄にしてしまった時間の大きさに初めて気がつくのだ。海外に引っ越してきて、夜寝て朝起きたら英語がペラペラになっている。そんな魔法はどこにもないのだ。願わくば、相手を見つけてデファクトビザへと企むものの現実の厳しさと自分の甘さのギャップになす術もない。自分の夢に我武者羅に立ち向かう若者はいったいどこに行ってしまったのだろう。「ゆとり世代」とはよく言ったものである。
彼は、今バリスタとして働く傍ら会計士の勉強をしている。近い将来、自分の店をオープンするときに必要となる知識を得ようと努力しているのだ。「侍」は常に戦っているのだ。その戦いは常に未来を見据えた戦いだということは間違いない。休んでいる暇はないのだ。夢を追う「侍」は決して妥協などしないのだ。努力しなければ道は開けないということを彼は誰よりも知っているのだ。
特等席に陣取った私はいつの間にか2杯目のコーヒーを口にしていた。次々とコーヒーを淹れていく彼の背中を見ながら、この至福の時間が一生続けばいいのにと願う「おひとりさま」である。そんな願いはもちろん叶わない。
最近のコーヒーにおけるブーム The Third Wave により日本のコーヒー文化が海外で取り上げられ、それと同時に海外に出ようとするバリスタも多い。海外を目指す日本のバリスタに伝えたいことはありますか?との質問に彼は答えた。
「海外でやると決めた以上は英語を話せるように努力しないといけません。世界に出た方が価値観や物の考え方など人間として成長できる。英語を使っていろいろな国の人と関わることで新しい自分も見えてくるのでは。シドニーではなくメルボルンを選んだのもメルボルン独特のホスピタリティーという世界に惹かれました。」
理想のカフェは、居心地が良いところ。立地の便利さもかな。
好きな豆は、エチオピア。メルボルンで好きな豆は、Small Batch と Sensory Lab ですね。よく飲むコーヒーは Espresso & Filter。White Coffee は味見するくらいで普段飲みません。1日に飲むコーヒーは多分5−7杯くらいじゃないかな?味見だけの時もあるけど。
お気に入りのカフェは Patricia と Slater St. Bench です。ああいう雰囲気が好きですね。
自分のやりたいことをやり続ける。Latte Art Samurai - 深山晋作の戦いは続くのだ。次回の C for Coffee. はMICEの様子と大会の模様も交えてお伝えします。
私は今日も「侍」に会いに行く。とびっきりのカフェインと至福の時を求めて。
Sensory Lab Speciality Coffee - 297 Littel Collins Street @ David Jones
Fukayama Shinsaku - Instagram @ shinsaku0401
君は、戦っているのか。
君は「侍」になれるのか。
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