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【対談1】 テーマ「世界を知る」

ナショナルフーズ・佐野氏とスタッフソリューション・楠本氏

2011年4月18日掲載
 

Staff Solutions Australia × GO豪メルボルン特別企画 「対談」


今回の対談ではNational Foods佐野氏とStaff Solutions Australia楠本氏に「世界で戦う(働く)ために必要なこと」をテーマに熱く語っていただきました。


2週連続(2011年4月18日、25日)に渡ってお送りする「対談」。

今週のテーマは「世界を知る」

 

 

■対談者紹介  

佐野 環 (Sano Tamaki)  

National Foods Limited
International Innovation Manager

<Profile>
キリンビール入社。東京都内の営業を経て8年間マーケティング部商品開発研究所(新商品開発グループ)に所属。2000年「氷結」ブランド開発プロジェクトに携わる。2008年に海外留学しMBAを取得。留学後はキリンホールディングス戦略企画部にて海外戦略などグループ成長戦略の企画部門に就く。2010年より現職(National Foods)。キリングループの女性社員として初の海外赴任者2名の内の1人。


 

楠本 岳 (Kusumoto Takeshi)

Staff Solutions Australia Pty Ltd 
Melbourne Branch Manager

<Profile>
学生時代にバックパッカー、ワーキング・ホリデーなどを通じ世界を肌で体感。日本帰国後は英会話のジオスにて営業とマネジメントに携わる。支店運営の立て直しと海外への事業展開をミッションに日本と海外を飛び回り、楠本再生工場と言われる。2007年に日本から現職へ転職。現在はスタッフ・ソリューション・オーストラリアの人材コンサルタントとメルボルン支店長を務める。

 

 

―日本人の海外志向について。「目的意識」

楠本)いきなりですが、最近日本の若手は外国に出たがらない傾向にあるとあちこちで言われていますよね。実際にTOEICの点数など、新卒者の平均点数は、昔と比べると、ものすごく高くなってるんですよ。
でもそれと海外で働くというのは別問題のようで、極端に言えば、完全に二極化されています。海外志向の極端に強い人とその真逆、絶対国内志向と言いますか。

また、今まで国内だけで勝負していたメーカー各社も近年では海外展開を積極的に行っています。
ですので、30代や40代の海外出向など全く考えていなかった人にとっては「そんなの聞いてなかったよ」といった反応のようですね。



佐野)そういった意味で日本に外国に出ようという活気が若い方たちに意外とないというのが残念ですよね。日本は本当に良いものを作って、素晴らしい価値を生み出しています。人材も、海外でも全く問題無く勝負ができるはずなのに、どういうわけか一歩外に出るとそれが活かしきれない。
また、一度海外に出た人たちが日本に戻ってきた時に、その能力を活かしきれていない気もしますね。
 

楠本)えぇ、確かに海外から帰ってきた人の受け皿が少ないようにも思えますね。
日本でも英語を勉強している人は多いのですが、そこから英語を使って何をするかという点では、まだまだな気がします。
 

佐野)仰る通りだと思います。英語が話せてもその英語を使って何をしたいのかが大切ですよね。

私の場合日本で8年間商品開発をやっていたのですが、その後にやりたい仕事の可能性を広げるにはビジネスの勉強が必要と思い留学を決心したんです。
帰国後に今度はそのスキルと商品開発の経験をどのように生かせるものか思案していたら、会社からが海外赴任の辞令を受けました。最初は言葉が相当障害になるかと思って自信もありませんでしたが、やりたい仕事ができると思うと前向きな気持ちになりました。
 

楠本)はい、こちらで出会う人の中には英語ができない人もたくさんいますよね。それでも、やりたいことが明確な人はきちんとそれを伝えられるんですよ。

例えば車のメカニックの人は高校卒業後に就職する人が多く、比較的英語が苦手という人も多いですよね。そして10年後くらいに海外に出たいと思い海外に渡る。英語は全然できない。それでも仕事を見つけるんですよ。片言の英語でも自分に何ができるかを明確に伝えられるんです。


 

―世界人材。


佐野)ある日会社から「どうすれば海外で活躍できる女性を育成できるか考えるように」という宿題をいただいたのですが、その時に「女性」という括りだけではなく、若い方含めて全体の将来の人材育成に関わる重要な課題だと思いました。
そのためにはそもそもなぜ世界に出なければならないのか?出て何ができるのか?を明確にすることがキーだと思いました。

「キリンがソフト面もハード面も含めて素晴らしい技術をもっていて、その技術を通じて世界の人々を幸せにすることが目的では」と。。。

そのために若い人自身がどう貢献できるのか、どのようにモチベーションを上げてもらえるのかということが根本的な課題だと思ったんです。
国内からみると、海外に出れば英語が話せるようになって仕事ができるようになると思っている人が多い気がします。。でも実際現地で相当に頑張らないとそうはなれない。
期待されて海外に派遣されたスタッフの成功を願うなら、送り出す側としても目的意識を明確にし、ステップアップのイメージを描いてあげるのが大切だと思うんです。



楠本)商社などではトレーニングで1~2年の期間を管理者として現地(海外)のオペレーションを学んで帰るというシステムを導入し始めている会社が増えてきていますよね。そういった人達が海外経験を積んで続々と日本に帰り始めています。
 

佐野)そういう方々がその後所属する会社で、また、日本の社会でどのようにこれまでの経験を生かせるかですよね。

 

 

―海外での挑戦。


楠本)駐在員のケースでは、こちらで鉄鋼部門を担当していた人が、日本に帰ったら全く異なる部署に配属されることがあります。

これは日本独自のジョブローテーションというか、システムですよね。海外で経験を積んだ業務がそのまま活かされない。オーストラリアでは理解されないでしょうし、場合によってはその人材が退職してしまう可能性もある部分ですよね。
 

佐野)私の場合は海外に来てこれまでと全く違うことに挑戦できたのが良かったですね。ずっとアルコールを担当していたのにオーストラリアに来て最初に着手したのはチーズのマーケット調査だったんです(笑)

ジュースならまだなんとなく見当はついたのですが、チーズで、しかもオーストラリアとなるとお手上げでした。
当然現地の人たちがいつ、誰と、何を、どうやって食べてるのかなんて全く分からなかったのですが、まずは現地を知ることから始めてみようと、オーストラリア人のお宅訪問をしてインタビューをしました。冷蔵庫みせて下さいって(笑)。

現地の人々がどういうシチュエーションでチーズを食べるのか、どう保存してるのか、どういうチーズを購入してるのか、子供にはどんなチーズを食べさせているのかなどくまなくヒアリングしました。
一対一のインタビューの後は複数人数にインタビューをするグループインタビュー調査などもしましたね。
すると「チーズはいつ食べるのか?」という問いに対して皆口々に「バービー(BBQ)だよ」とおっしゃいます。
そんなにバービーが日常に欠かせないものなのかと、BBQセットを購入して実際に自分のベランダで挑戦してみたんです。それが意外とおいしい。
そうして新しい発見から少しずつ理解も増してきて、オージー社会における食生活やソーシャライズのツールとしてのチーズの役割など自分の中に直に落とし込むことができたかなって思ってます。でもここまでくるのに3~4ヶ月くらいはもがきましたね。
でもそこから学んだのは全く異なることでも素直にやってみて、そこを乗り切れたら強くなれて自信も持てるんだなと思いました。どんなことでも受け入れられるような気持ちになれるなって。


楠本)日本でのアルコールマーケティングの経験からそこに活かせる部分もあったんでしょうね。


佐野)そうですね。半年ほど経ってチーズのマーケティングも楽しくなってきたのですが、もっと私の飲料の商品開発の経験を活かすことのできる分野としては東南アジア向けの飲料開発ではと思い、すぐに上司にかけあってみたんです。すると私の願いを上司も積極的に聞き入れてくれ、異動させてもらったんです。願いを通すために、当初は、週3日は豪州国内のチーズの仕事をするので、2日は東南アジアのマーケティングチームに関わりたいと掛け合いました。。
結果、今は東南アジアの商品開発の主担当になりました。あらためて何でも言ってみて行動してみるもんだなって思いました。日本ではこうはいかないでしょうね。
 

 

―仕事観。オーストラリアと日本との違い。
 

楠本)私の場合、仕事柄、いろいろな人材に会いますが、その観点からするとアジア人・日本人は非常にジェネラリスト(オールラウンダー)が多いですよね。日本の社会でもやっぱり、なんでも平均以上出来る人が評価されますし。
国語が10点満点でも他の科目がダメな人はもっと頑張れよと言われてしまう。


一方でオーストラリアには何か1つのことが、ずば抜けてできる人がたくさんいますよね。
例えば、国語はものすごくできるけど算数、理科ができない子がいた場合、できない教科を伸ばすことよりも得意な国語をどんどん成長させていく。
ジェネラリストな日本人は他の部署に移ってもやっていける。これは日本人的な考えで、スペシャリストなオージーや欧米人は今が私の強みを活かせる場所なんだから何故異動?というようにそのことを極端に嫌がる人が多いように思いますよね。

もう、根本的な仕事への考え方が違いますよね。

当然そこに善し悪しがある訳ではないんですけどね、育ってきた環境だと思うんで。
つまりは、日本ではこう評価されて、オーストラリアではこう評価されるよっていう、この差を知った上で、その環境に順応できることって海外人材としては重要ですよね。


 

佐野)そうですね、そういった意味では海外で通用する人材になるにはスペシャルな要素を持つことが大事ってことですよね。

一番つらいのが、これまで日本でジェネラリストとしてやってきて、「あぁ自分は意外とできる」って思ってる人がこっちに来て、あらためて専門性を問われたときに強みが引き出せずに自信をすっかり失ってしまうというケースですよね。
だから若い人でも、ここだったら負けない!という何か自分の強みを自覚している人が来ると強いですよね。そしてこのスペシャリスト主義の社会を経験した後に日本に帰って更に自分の精度を高めるためにこれまでと違う分野、例えば経理を学ぶとか戦略立案を学ぶというような図式ができるといいですよね。




楠本)私も日本で働いていましたが、日本の企業って良くも悪くも色んなことをやらせようとしますし、やらせてくれるので自分はコレが得意だって、専門的に強化するのがなかなか難しい。また、私自身も海外ではこんなにもスペシャリストが重宝されることをこっちに来て初めて気付かされましたからね。
だからこそ、予めそれを知っていると日本でのキャリアの作り方も違ってくると思いますけどね。
 

佐野)日本側がそのことを知らないと落とし込めないんですよね。若手を海外に出していきたいというのであればその対象となった人たちの何が強みなのか、ある程度の期間を定めてマネジメントがしっかりその強みを伸ばしてあげた上で海外に行かせるといったフローを踏めたらいいですよね。
 

楠本)そういう意味では、やはり送り出す側(日本)が送り出す先(海外)を知ることがとても大切だということになりますよね。

 

 


・・・後編に続く

 

次週のテーマは「世界で戦うために」
乞うご期待!

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