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【対談2】 テーマ「世界で戦うために」

ナショナルフーズ・佐野氏とスタッフソリューション・楠本氏

2011年4月25日掲載

 

Staff Solutions Australia × GO豪メルボルン特別企画 「対談」

 

今回の対談ではNational Foods佐野氏とStaff Solutions Australia楠本氏に「世界で戦う(働く)ために必要なこと」をテーマに熱く語っていただきました。

2週連続(2011年4月18日、25日)に渡ってお送りする「対談」。
 

対談前編では世界で戦う(働く)ために必要な要素として、まずは「世界を知る」ことで見解を一致させた佐野氏と楠本氏。
 

第一回対談の模様はコチラから
 

後編となる今週のテーマは「世界で戦うために」
 

 

 

■対談者紹介  

佐野 環 (Sano Tamaki)  

National Foods Limited
International Innovation Manager

<Profile>
キリンビール入社。東京都内の営業を経て8年間マーケティング部商品開発研究所(新商品開発グループ)に所属。2000年「氷結」ブランド開発プロジェクトに携わる。2008年に海外留学しMBAを取得。留学後はキリンホールディングス戦略企画部にて海外戦略などグループ成長戦略の企画部門に就く。2010年より現職(National Foods)。キリングループの女性社員として初の海外赴任者2名の内の1人。


 

楠本 岳 (Kusumoto Takeshi)

Staff Solutions Australia Pty Ltd 
Melbourne Branch Manager

<Profile>
学生時代にバックパッカー、ワーキング・ホリデーなどを通じ世界を肌で体感。日本帰国後は英会話のジオスにて営業とマネジメントに携わる。支店運営の立て直しと海外への事業展開をミッションに日本と海外を飛び回り、楠本再生工場と言われる。2007年に日本から現職へ転職。現在はスタッフ・ソリューション・オーストラリアの人材コンサルタントとメルボルン支店長を務める。

 

 

―日本人としての強み

楠本)こちらに来て痛感したのは、インド、中国、韓国人などの移民が自分達の居場所を見つける為に必死で戦っているという事実ですね。オージー以上に大きな衝撃でした。

電車で通勤していたときの話ですが、ふと車内を見回すと、仮に車内に50人程の乗客が居たとして、3~4割の中国系、2~3割のインド系、そして少しの白人と1人の日本人と言う人種の比率で、これはそのまま世界の縮図だと気がついたんですよ。
そして、これが、自分が生きている世界の現状なのだから、日本人としてもっと存在感を出していかなければならないと。
それから、人材としてクオリティの高い日本人をもっともっと海外へ送り出したいと思います。

 

佐野)モノ作りは日本人の強みですよね。iPhoneの発売当初はゼロだった日本製部品が、今ではiPhoneを構成する部品全体の37%を占めていて、しかも日本でしか作れないんだと聞きました。その技術力は誇らしくなります。

 

楠本)身近な話ですが、キッコーマンの醤油ボトルは醤油が垂れない様に少しだけ注ぎ口が尖っているんですよ。これに気付いた時は、この努力が大事なんだと感心しました。
消費者の為のわずかな努力。その一方で、今はその高い技術力による質の高い製品と、どうしてもそれに比例してしまうコストの高さに、日本のメーカーさんが苦戦しているのかもしれませんね。

 

佐野)日本人は、お客様の欲するところを嗅ぎ分け、かゆいところに手が届くという力が、とても高いですよね。身近な例ですとお箸を落としても声をかける前にすぐに新しいお箸がさっと差し出される、と言うような。
その豊かな想像力は確かにモノ作りに反映されていると思います。
顧客の要望を聞きだすための情報収集と、それをサービスやモノに落とし込んでいくことが大事なのではないでしょうか。技術力は高いのですから、、顧客満足度の肝は何なのかと、仮設構築する能力と判断するための経験が必要となりますよね。

 

楠本)日本の製品を海外仕様に適合させることは可能ですが、会社の中で誰がそれをマネジメントするのかが、もっと大事ですよね。
そこで、海外留学経験などを通じて日本と海外との違いを頭だけではなく、肌でも理解していて、その差を埋められるような人材を企業がもっと積極的に採用していけば、状況はより良い方向に変わるのでは、と思いますね。

 

佐野)各国によって感動を受けるスイッチは異なるとは思いますが、海外で何かに感動するとしますよね、その感動する瞬間は、どういう場面でどういう気持ちなのか、と言う事さえ分かれば、私たちのモノ作りはまた変わってくると思います。

感動を再生産して広げることができるわけですから。そのためにも、そしてその何かに感動したという体験をした人たちを、楠本さんには人材として増やしていただきたいです。

 

楠本)まさしく、そうですね。今、大事なのは日本人がどんどん外に出て現地で色々な経験を積むことだと思います。
旅行だけでは分からない現地での生活に入り込んでいく、そんな日本人を増やす事が、まずは大前提でしょう。色々な要因はあると思いますが、海外へ出る興味を持った日本人が減っていますから。

 


―国際社会における競争意識

楠本)オージーは、平日もあまり働いていない様な印象ですが(笑)、その穴をこつこつ埋めているのがアジア人というような気がしますね。ビクトリア州の高校では、VCE (Victorian Certificate of Education)という日本でいうセンター試験の様なものがあるんですが、その上位5%は、ほとんど香港人や中国人、韓国人だそうです。

近い将来、そのトップクラスの人材が企業に配属された時、オーストラリアの企業は乗っ取られるのでは、という危惧があるんですよ。あくまでも、学校の成績のみでのお話ですが。

 

佐野)分かる気がします。オーストラリア人はあまり他国に留学していませんよね。一つショックだった話しがあるのですが、私達日本人は、こちらで日本語と英語をしゃべりますよね?オージーの友人はその事について、「凄いなあ。俺は第2外国語で仕事するとしたらイギリスでしか無理だよ」と。第2外国語ではないでしょう!と(笑)。

そういった意識の人たちと一緒に働くと考えると、我々のアドバンテージも自ずと分かって来ますよね。

 

楠本)資源国で母国語が英語。

日本人から見ると、有り得ないくらい恵まれた環境のオーストラリア人。
それでも働かない路上生活者もいる訳ですよね。一方で中国人やインド人、韓国人は自分たちの国を飛び出して、アウェー環境で成り立とうとしている。
韓国ではなんと約7割のサラリーマンが海外への移住を希望しているそうです。子供の教育環境などが理由の主ですが、日本では有り得ないですよね。意識の違いなんでしょうか。そういった面でも、「海外に行きたいな」とか「海外に行かねば!」と言う人を如何に育てていくかが、次の教育のステージでしょう。

 

佐野)日本人1億2800万人のうち、1割でも海外に出たら凄いことでしょうし、2割がこちらに移って来たとしたら、オーストラリア全体の人口を越えますから。オーストラリアを乗っ取れる勢いと言えますよね。
 

楠本)その通りなんですよね。乗っ取りはともかくとして、当社もそれを目標に事業を展開してますし、やっぱり、海外で飛び出て活躍する日本人を1人でも増やしていきたいですね。


楠本)先日、ニュースで見たのですが、日本は人口の減少による労働力の低下を埋めるために、2050年位までに移民を1千万人まで増やす計画を立てているそうです。
今は女性の社会進出によりカバーされていますが、中国、インド、台湾などから移民が増えた場合、日本で日本人人材が負ける可能性が出てきてしまう。
現在も新入社員の2割が外国人というケースもありますし、これにはかなり危機感が募ります。
ハングリー精神もあり、数ヶ国語を扱える移民と競争していかなければならない。でも、裏を返せば、日本に居ながらに国際競争が出来るというのは、厳しくはなりますが、良い環境とも言えかもしれませんね。
 

  

佐野)日本人は表現やアピールをするプレゼンテーション力が弱いんです。
何故なら、人に反対したり、主張する訓練を受けていないから。国際社会で揉まれることによって、このままじゃいけないと言う焦燥感が高まり、否が応でも生き残るための訓練を始めるでしょうね。

  

 

―個人力を高める
  

佐野)  
変化を怖がらないフレキシブルさが、社会にも求められているのではないでしょうか。
日本人は、ここで会社を辞めたらどうなってしまうのか、とネガティブに考える傾向があります。
オーストラリアはここに留まるよりも次のチャンスは大きいはずだ、と極めてポジティブですよね。この様な、活躍する場を移して自分のキャリアを選べるフレキシブルさが大事。
今の会社で20年頑張れば部長になれる、と言った保守的な考えは変えて行くべきでしょう。

 

楠本)「個」の力で生きていくと言う発想ですよね。

これまでは「終身雇用」に基づいて、日本人は大きな会社に入って身の安全を確保出来ると考えてきましたが、会社は自動的に半永久的に続くものではありません。
会社が倒産することだって、自分の部署やポジションがなくなることだってありえます。
そんな時代を生き抜く為にも、自分の市場価値を客観評価で知った上で、自身の市場価値を高めることに努めるのが「個人力アップ」に繋がりますよね。

 

佐野)そうですね、その市場価値を上げるのに今の企業の中で価値を高められるのであればそこで頑張り、高められないと思うのであれば、留学や転職、資格を取るなど、外に環境を求めに行くのは全く悪いことではないでしょうね。

 

楠本)会社の規模や名声、会社の看板で何が出来るのか、ではなく、個人として何が出来るのかが重要だと思いますね。

 

佐野)日本に帰ると、なぜだか追い詰められたような気分が満ちていますよね。難しいと思うといくらでも難しくなるし、次のステップを踏むのをためらってしまう。
でも簡単だと思うと、不思議なもので簡単なんだから出来るはずと次のステップを踏み出しやすくなると思うんです。

 


―渡豪を視野に入れている人へ

楠本)まず、日本では通用しないから海外と言う選択はダメでしょうね。「負の選択」としての「海外」は絶対にやめた方がいい。

 

佐野)世界のマップを知ること、でしょうか。

地理があり歴史があり、そこに人が活動している。その全体感をGPSの様に捉える感覚を少しでも身に付けた上で渡豪すれば、自分の絶対的な位置感と相対的な位置感を測れるようになるでしょう。
オーストラリアは気候が良いから、と来るのではなく、何故オーストラリアに移民が多いのか、そこで自分に何が出来るのか、可能性を模索する。それが明確になるだけでもこちらに来てからの身の処し方が変わってきますよね。

楠本)目標を持ってこない限りは、何しに来たんだという話になる。オーストラリアで何がしたい、何をやるんだと具体的に形にしていないと、何も成し遂げずに帰ることになっちゃう。でも、後は来てからですよ。驚きと発見。

 

佐野)そう、その驚きや発見をポジティブに。日本の事を知ってから来る事も大事でしょうね、自分の成り立ちを知るという事はプライドにも繋がりますから。

 

 

 

Staff Solutions Australia × GO豪メルボルン特別企画 「対談」 

 

 

 



まずはご多忙な中この対談企画を快諾してくれたNational Foodsの佐野氏、Staff Solutions Australiaの楠本氏に御礼を申し上げます。
聞き手としてその場に居合わせたことを光栄に思うと同時に、一歩を踏み出す前に必要なこと=「知る」というお二人の共通認識に大変刺激を受けました。
己を知る、自国を知る。まずは自分がどこにいて(物理的な場所、ポジション、市場価値)、そんな中何ができ、その先どうしたいのか。正しい自己評価は社会生活上必要なことでもあり、また海外に活躍の場を移そうとした場合においては更に大事となってくることを教えていただきました。
世界で活躍できる日本人材の育成・創出のためには、まずはそう願う自分が変わることから始まると考えます。


聞き手:河内雄大(GO豪メルボルン)
 

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