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食物思考~Thought for Food~(4) すし編

 メルボルンはマルチカルチャラルな都市で、それは街に立ち並ぶ様々な国のレストランを見てもよくわかります。その中で三歩進むごとに見かけるんじゃないかと思う、「SUSHI」という看板。多くはテイクアウェイであり、おお、ジャパニーズフードカルチャーはオーストラリアンの日常に浸透しているのだな、感激だわ、どれどれ久しぶりに祖国の味を楽しんでみるかあ、と道端でかぶりついたらなにやら違和感。シャリが口の中でぱらぱらと音を立てている。これは、乾燥の大地メルボルンが、一瞬にして水分を奪ってしまうという自然の驚異なのか、はたまたセーブウォーター運動の一環として、狙いどおりに作り上げられたドライシャリなのか。むろん、そのどちらでもありますまい。全てのすしがそうだとは言いませんが、いやはや、日本の本来のものとはずいぶん違いますね。

 そんなわけで、オーストラリアでSUSHI気分に襲われたならば、キッチンにて自分で作ることが多いです。なんてったってここはメルボルン。すし酢も海苔もスーパーマーケットやアジアングローサリーで簡単に手に入るのがうれしいのであります。そして、使っているSushi Riceのおかげでしょうか、日本で作っていたものより、デリシャスなシャリを生みだせるようになった気がします。具につきましては、ほとんど洋風。アボカド、ツナ、卵、サーモン、タマネギ、コーン、キュウリなどなど。魚が旨いと書いてすし。けれども魚介類はコストがかかるっていうのと、新鮮さも疑ってしまうので、サーモンも缶詰だったりします。むむ、私のも大概ですな。



 時々懐かしくなるのは、のれんをくぐった途端、魚介類のにおいとそれに絡んでくるツンと鼻を突くあの独特の酢の香り。一人颯爽とカウンターの椅子を引き、腰をかける。さて、今日のおすすめはなんだね、と問いかけようとして、カウンターの中に人影がないことに気付く。それでも私の目の前には、すでにいくつもの種類のすしが並べられている。いや、流れていく・・・そう、それは回るおすしたち。「日本の本来のもの」なんて偉そうに言うものの、私の日本でのすしライフは、8割を回転寿司が占めております。家の徒歩3分圏内で回っていますので、ついつい。それでも、昨今の回転寿司ときたらシャリもしっかりしていて、本当に素晴らしいですよ。

 そんなモダンカルチャーの洗礼をしっかりと受けた私が先日、オーストラリア人の知人に手作りのおすしをごちそうしてやろう、と申し出たのです。人様に食べてもらうとあって、いつもよりも丁寧にすし飯を炊きあげ、洋風の方が慣れているだろうと具も考慮を払いに払った結果、前述のものを使うことにしました。




 巻きずしはきれいに巻けたし、カットも切り口なめらかに成功。ちらしずしはケーキ風にデコレートして見た目もなかなか、味も悪くないぞと自信満々で「ご賞味あれ。」と差し出しましたら、
「アナタが作るSUSHIがカリフォルニアロールだなんて予想ダニしませんでしたヨ。」
と困惑した表情をされてしまいました。どうやら、知人が期待したのは、生魚満載のにぎりだったようです。洋風と日本風のおすしの区別がつくのですね。純日本風のおすしやさんによく行く方なんだわ、きっと。日本人であるというだけで、高慢ちきなプライドと偏見をもってガイジンさんを誤解していました、私。ごめんなさい。

 思い出したら切なくなっちゃったので、今日はこちらの回るおすしたち、Sushi Trainに慰めてもらおうかしらと思います。私は洋風でもかまわないので。
 

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私は、一日に一度は市場に行かなければ落ち着かないマーケットホリック。これは、そんな私と食物たちとの四方山話です。

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