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食物思考~Thought for Food~(7) 納豆編

 実は私、「関西人は納豆大好きピープルである!」と思いっきり勘違いして育ちました。関西で生まれ育っているにも関わらず、私の周囲には家族を始め、いつも納豆好きがたくさん集まっていたものですから。

 そんな納豆好きのうちの一人はその昔、自家製の納豆を作ろうと試みました。そして、ある凍えそうな寒い夜に、慈しんでいた納豆菌と大豆を心配したあまり、それを胸に抱いて眠ったことがあるそうです。その結果、翌日は身体が納豆の臭気にまみれて、人と顔を合わせることもままならずに、大変な一日を過ごされたようです。納豆好きでも、さすがに自分の身体から立ち昇るそのにおいには辟易したとか。

 納豆を表現するのに欠かせないのが、このにおい。ただ、元来のにおいも全て愛せる納豆好きにとっては残念ですが、市販の納豆は近年、それほどにおいを気にせずに食せるものが多々あります。それゆえ、においを理由に納豆を敬遠する向きも以前ほどではありますまい。そしてもうひとつ、納豆と言えば「ねばり」でございます。受験生の方々などは、「ねばり勝ち」というように験を担ぐことがありますよね。私もそれに倣って、ここオーストラリアの地でも納豆を食べ続けています。

 オーストラリアの日本食材店で、納豆を見つけた時の驚きと喜びは非常に大きいものでした。まさか納豆が売られているなんて。ガイジンさんは納豆嫌いであろうという観念も影響していていたかと思われます。もちろん、日本食材店だからと言って、日本人だけをターゲットにしているわけではなく、ローカルの需要もあるからこそ販売しているのでしょう。すごいぞ、納豆。見た目は腐っていても、人々は君の素晴らしさをちゃあんと理解しているのだ。今度からは、君を知らないガイジンさんに「ナットウとはなんぞや?」と聞かれたら、「腐った豆」ではなく、「発酵した豆」なんだと答えるからね。なんだって、第一印象が肝心ですものね。



 それはともかく、外国へ渡ってきた日本人にとって、慣れ親しんできた味がそこにあるというのは、メンタルサポートの大きな役割を果たすと思うのです。日本を離れて異国で生活するというのは、本人が意識していようといまいと、決して楽なことではないでしょう。日本人というアイデンティティーを背負って行く者にとって、習慣や文化の違い、国民性の違いから、悩んだり落ち込んだりする出来事は多々あります。そんな時よく、私を含めオーストラリアに滞在する日本人の「日本食が恋しい」発言を耳にいたします。日本でいた時より、ずっと日本人を意識するという環境は、日本食に対しても繊細な感情を引き起こすことになるのでしょうか。一種のホームシックであるかもしれませんね。事実、私は日本食を口にすることによって、精神の安定を得られるのですから。

 オーストラリアでも入手可能な納豆には、これから先も、心身ともお世話になることでしょう。先日、日本の実家へ一時帰国をした際、一人で生きているつもりでも、親に負担も心配をかけてしまっているということをイタイほど感じました。親不孝の許しを請うなんてことはできませんが、ただ、今は納豆を食べ続け、納豆のようにねばりにねばってねばり続けて、いつの日か胸を張って「これが私の歩んで来た道です。」と言おうと固く心に誓った私でございます。

コメント

以前のコメント

Chookie   (2009-04-12T20:19:03)
ヨシミさん>> 離乳食からですか。それはそれはさぞたくましくお育ちになられたのでしょうね。これからもLOVE納豆で!!
ヨシミ   (2009-04-12T14:01:17)
私も関西出身ですが、納豆は大好きな食べ物のひとつです。なんせ「離乳食から食べていた」と母から聞いています。私の周りの関西人はみんな納豆を食べるし、「関西人=納豆嫌い」って当てはまらないとつくづく思ってます。
hh   (2009-04-10T04:16:16)
いいぞ、いいぞ。

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私は、一日に一度は市場に行かなければ落ち着かないマーケットホリック。これは、そんな私と食物たちとの四方山話です。

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