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食物思考~Thought for Food~(8) ホットクロスバン編

 ばってん、そんなこと言われてもね、聞いたこともなか。え?そのとおりってどげんことね。・・・ばってんがついてる?へえ、パンにねえ。見たことあるような気もするけんど、なんね、特別なんかいね。あれ、アンタ、バンって言いよるん。外国ではパンって言わんとね?

 はい。日本では食パンもクロワッサンも、果てはベーグルやマフィンだって全部ひっくるめて「パン」ですが、イングリッシュで「バン」と言えば、小さい丸いパンのことを指します。そして、ばってんのついてるバンを特にホットクロスバンと言います。日本ではあまり浸透していませんが、キリスト教における復活祭、イースターに食べられるものだということです。ホットクロスバンについては諸説ありますが、一般的には、イエス・キリストが磔になった十字架を表しているのだと言われています。伝統的に、グッドフライデーと呼ばれる金曜日に食べられるもようです。現在では、特にイースターの時期でなくとも、口にしているみたいですけど。そうですね、日本における年越しそばみたいなものですかね。



 一年中見られるパンなので、今まで気にかけたことはありませんでした。しかしながら今年はイースターが近付くと、テレビのコマーシャルでホットクロスバンを焼きまくり、スーパーマーケットでは、いつもは目立たない位置にいるであろうホットクロスバンが最前列に押し出されて列を成しているのに、私がやっと気づいた次第でございます。ほほう、イースターはチョコレートだけじゃないのか、と。のび太くんが一年に一度、タイトルを奪って映画の主役になれるのと似たようなものですかね。

 私がホットクロスバンについて知っていたのは、たとえ冷めてしまっても名称はホットクロスバンに変わりない、けれども必ずレディー優先に差し上げなければならない、ということでした。はて、なんのことかって?私の頭の中で、小さいころに覚えた英語の歌がそう叫んでいるのです。「ホットクロスバンだよ!あんた方に娘さんがいなけりゃ、バンは息子たちにやりなさい!」と。私には、レディーファーストの精神を幼いころより教え、しつけるための歌のように思われるのですが、穿ち過ぎでしょうか。はい、よく「You think too much」と言われます。

 考え過ぎる私は、だからこそ、お祝いのためだとか縁起を担ぐためだとかで、食物を摂取したくなるのでございます。嬉々として、というよりもそうしなければ、小心者に後悔や罪悪感の波がやってくるのがわかっているので、強迫観念めいたものに動かされているのかも。ただ、クリスチャンじゃないのに、ホットクロスバンを食べなくちゃと思うのは、やっぱり日本人によくある、クリスマスも楽しく祝うけど翌日からは正月の準備、みたいなフレキシブルさですかね。

 そうして、私がホットクロスバンを求めて街に繰り出したグッドフライデーは、ほとんどのお店が閉まっておりまして、見事にトラディションに倣うことができませんでした。そうね、ホリデーは休むためにあるのですもの、日本人の感覚はご法度だわ、とほぼあきらめモードに入った私でしたが、翌日の土曜日、ホーリーサタデーは多くのお店が開いておりました。どないやねん、と思いながらもプラーンマーケットにて、なぜかバニーガールよって売られているホットクロスバンを発見。バニーちゃんはホットクロスバンの謂れについて何も知らなかったので、会話ははずまなかったものの、そこでゲットしたホットクロスバンは、できたてホカホカで、パンの甘みとたっぷり入った干しブドウの甘酸っぱさがほどよく調和して、大変デリシャスでございました。おかげでハッピーイースターでございます。


 

コメント

以前のコメント

Chookie   (2009-04-12T20:22:58)
Hot Cross Buns♪ Hot Cross Buns♪ リズムに乗ってひとコラム、でございます。 こちらこそ、リクエストをありがとうございました。
J   (2009-04-12T12:16:43)
突然のリクエストにも関わらず、ユニークで楽しい記事をありがとうございます!!イラストもわくわくした感じで好きです。サンキューベリーマッチ。

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私は、一日に一度は市場に行かなければ落ち着かないマーケットホリック。これは、そんな私と食物たちとの四方山話です。

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