観光・楽しむentertain

メルボルンを楽しもうmelfun

The Boy in the Striped Pyjamas -洋書レビュー1/5

軍人の息子の視点で書かれたベストセラー

オーストラリア、メルボルンという英語圏で生活する私たち。日本ではあまり読む機会のない洋書が、当たり前だが本屋や図書館に溢れている。小説を読むのが好きな人、英語、主にボキャブラリーを勉強したい人に最高のツールがこんなにもたくさんある環境を生かさない手はない!
 
そんな魅力たっぷりの洋書をお勧めすべく、当社の読書好きライターが書いた洋書のレビューを全5回に渡って掲載します。
 
 
 
 
 
 
◇作品概要
9 歳のBrunoは軍人の父親、母親、そして12歳の姉のGretelとベルリンで使用人を抱える豪邸に住んでいる。The Furyと呼ばれる人物を家に招いた翌日、突然父親の仕事の都合で見知らぬ田舎へと引っ越すことになる。しかし引っ越した先はベルリンの家よりもみすぼらしく、また周囲にはベルリンで見かけられたカフェやグロッサリーすら見当たらなく、遊び相手もいない。部屋の窓から見えるのは高く貼りめぐらされた有刺鉄線、そしてその向こう側の家並みとストライプのパジャマを着た人々の姿のみ。何もすることがなく退屈な日々を送るBrunoは家の周辺を探検することを決意する。

そこで出会ったのは、Shmuelというフェンスの向こう側に住む、ポーランドからやってきた少年。偶然にも誕生日が同じなのもあり、2人は言葉を交わすようになる。雨の日以外は毎日同じ場所で、胡坐をかきながらフェンス越しに会話を交わし、お互いの友情は日々固くなっていく。 Shmuelの父親が行方不明になったこと、ベルリンへ戻ることが決まったことをきっかけに、BrunoはShmuelの父親捜しを手伝うことを理由に、フェンスの向こう側の世界へ足を踏み入れる。

 
◇作者
John Boyne

1971 年、アイルランドのダブリン生まれ。トリニティ・カレッジで英文学を、イースト・アングリア大学で創作を学ぶ。『The Boy in the Striped Pyjamas』は彼の小説としての4作目になる。本はアイルランドで長期間ベストセラーとなって大きな話題を呼び、カーネギー賞の候補にも選ばれた。 30か国以上で翻訳出版され、映画化もされ、オーストラリアでも公開された。日本語タイトルは『縞模様のパジャマの少年』(岩波書店)。

◇Review
舞台は第2次世界大戦のドイツのホロコースト(Holocaust)を題材に、ナチスの軍人の息子であるBrunoの視点から描かれている。彼は実際の父親の仕事を全く知らず、当然ホロコーストの結末も全く知らない。そこで出会ったShmuelとは意見の違いはあるものの、フェンス越しにお互いのことを話し、友情を育んでいく。無知なBrunoは「一緒に遊べたらいいね」「ディナーにいつか招待するよ」と誘うも、Shmuelは断り続ける。また日に日に痩せこけていくShmuelを気遣い、台所からフルーツやチーズをくすねて持って行ってあげたりもする。「君は僕のベストフレンドだよ」と最後には Shmuelに告げている。 

しかしShmuelとの会話を通して、フェンスの向こう側の世界を知るほどに、退屈な自分と比較して、ますます興味と疑問を募らせることになる。Shmuelとの関係は家族に悟られないようにしておくのが良いと判断し、彼は毎日秘密裏にShmuelに会いにゆく。
 
  
 
ホロコーストの現実は文章で描かずとも、誰もが知る悲惨極まりない事実。しかし、軍人の息子という目線から物語を描き、純真無垢な心が最後は悲劇を招くストーリー。ありきたりな展開かもしれないが、ホロコーストの描き方が巧みだと感じる。ホロコーストの現実はShmuel の目線から描かれ、彼もまた現実を知らないため、父親が毒ガスで死亡した事実も知らない。The Furyはヒトラーであることは読めば一目瞭然であるが、それもBrunoの目線で語られ、直接的な描写は全くない。そのため、その表現方法にグイグイ引っ張られるように最後まで一気に読んでしまえるのではないだろうか? ストーリー全体的にとてもエレガントに描かれていると感じる。

そして二人の友情の描き方も素晴らしいと思う。毎日会えることが喜びへと変わり、雨が降れば会えないので心配をする。とても感動的で、奇妙な友情なのだ。しかしこの本は単に友情物語だけでなく、fairness、家族に対する忠誠心、社会的差別なども描かれており、作者はBrunoを大人社会の‘欠陥’として描いたのではないだろうか?

『The Boy in the Striped Pyjamas』はオーストラリアでも映画公開も相まってか、本の売れ筋ランキング上位に入っている。今回英語バージョンを読んだが、比較的容易に理解できる単語や表現方法を使用しているため、英語を勉強する学生にもおススメ。また歴史的背景がある物語が好きな方にもおススメ。確かに内容は暗く、決して笑いを誘うような物語ではないが、読む価値は大いにあると私は思う。
 

The Boy in the Striped Pyjamas

Published By Random House, 2006
⇒購入はこちら
URL: http://www.thefilmfactory.co.uk/boy/ (Film)

[ Reference ]
The Age Company Ltd, 2006, The Age, (online), Available from:
http://www.theage.com.au/ (Accessed June 25, 2009)

関連記事

最新記事

人探し(27)

 藤沢は、家に帰るなり、君枝に今日の会談について聞かれ、ありのま.....