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Born on a Blue Day -洋書レビュー2/5

天才ダニエル・タメット氏によるノン・フィクション作品

   

◇作品概要
サヴァン症候群を抱える人の特徴である、あるフィールドにおいて天才的能力(サヴァン能力)を持つダニエル・タメット氏。そんな彼の幼少のころの記憶、円周率ヨーロッパ記録を出したときのエピソード、仕事のこと、家族やパートナーとの関係などを綴った自伝。
数学の長い公式はさまざまな色や形や手ざわりの数字が広がる美しい風景に感じられ、一瞬にして答えが見える。彼にとっては円周率の数字の並びが一番きれいな風景として見える。語学習得にも強い興味を持ち、外国語習得のプログラム開発をするに至った経緯なども描かれている。

◇作者
Daniel Tammet
1979 年ロンドン生まれ。2004年、円周率の暗唱でヨーロッパ記録を樹立。それをきっかけに制作されたTVドキュメンタリー『ブレインマン』は世界40ヵ国以上で放送され、大きな話題を呼んだ。現在はイギリス南東部のケントにパートナーと暮らし、自身の公式サイト“optimen”でオリジナルの外国語学習プログラムを制作・運営している。2007年に‘世界の天才100人’の一人に選ばれている。日本語タイトルは『ぼくには数字が風景に見える』(講談社)。

◇Review
タイトルだけを読めばフィクションなのかと思うかもしれないが、作者の自伝であり、誕生日の1月31日が作者にとって青色をしているため、このタイトルが付けられた。作者には個々の数字には明確な色や形があり、そのイメージの組み合わせが風景となるからこそ円周率のヨーロッパ記録を樹立したと言える。彼はそのとき円周率の22,514桁の数字までを暗唱した。彼にとって数学は言葉と同じであり、また子供時代からすでにオリジナル言語(Mänti)も開発している。

数学と語学に天才的頭脳を発揮する作者は、幼少のころから人とのコミュニケーションにハンディを抱えるアスペルガー症候群と戦い、家族やパートナーの支えや愛情があって、今の自分があると著書の中で告げている。また映画『レインマン』の主人公と同じサヴァン症候群でもあり、主人公のモデルとなった人物とも実際に対面している。

 

彼の生活、主に彼の頭や心の内側を描いたこのノン・フィクション作品は、私にとって衝撃的だった。左脳人間の私にとって、数字は単なる数字。学生時代に数学には嫌というほど悩まされた。数字に色彩や明確なイメージまでもがあるということなど考えたこともなかった。日本語版にはそのイメージが簡単なイラストと説明で示されている。そして作者には円周率の数字は素晴らしく綺麗な風景のように見えるそうだ。

日本語版のサブタイトルがとても好奇心を惹かれるため引用する。このタイトルを見ただけで、彼の頭の中がどうなっているのか覗いてみたくなるのではないだろうか。サヴァン能力を持つ人は一般的に自分を表現することが苦手とされるが、彼は自らの心の中を旅し、一冊の本として表したのである。脳科学者の茂木健一郎氏は「人の数だけ、脳の個性もあるのである」と評している。

◇Sub Title
• 青い9と赤い言葉
• 幼年時代
• 稲妻に打たれて
• 学校生活がはじまった
• 仲間はずれ
• 思春期をむかえて
• リトアニア行きの航空券
• 恋に落ちて
• 語学の才能
• πのとても大きな一片
• 『レインマン』のキム・ピークに会う
• アイスランド語を一週間で

Born on a Blue Day
Published By Free Press in 2007
⇒購入はこちら

●Optimnem: The official Website of Daniel Tammet
URL: http://www.optimnem.co.uk/

[ Reference ]
Kinokuniya Company Ltd, 2007, Kinokuniya Online Store, ‘Born in a Blue Day’, (Online), Available from: http://bookweb.kinokuniya.co.jp/ (Accessed June 28, 2009)

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