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ドタキャンの女(最終回)

その晩、仕方なく一人でペニンシュラホテルに出かけることにした。テレビのCNNのニュースを聞き流しながら、服を着替えていると、「XX航空の旅客機が、行方不明」と言う言葉が耳に入って、思わず画面を見た。
「今朝9時にメルボルンを経ったXX航空の旅客機が、ボルネオ沖の海で突然レーザーから消えてしまい、行方不明となりました。乗客は、オーストラリア人が150名、中国人が87名、イギリス人が43名と言うことです。今捜索中です。それでは、XX航空の代表からお話を聞きます」と、レポーターが航空会社の記者会見の模様を流し始めた。
『今朝9時メルボルン発のXX航空っていうと、さつきが乗る予定の飛行機じゃない!』
私は、この偶然に愕然としてしまった。すると、携帯が鳴った。さつきからだった。
「お姉ちゃん、ニュース見た?」
「うん。見た。あんたの乗る予定だった飛行機が行方不明になったんだって」
「そうなの。私、乗らなくて良かったよ。お姉ちゃんはカンカンに怒っていたけど」
私もこんなことが起こった今となっては、さつきのドタキャンをこの度は許す気持ちになった。しかし、
「ドタキャンして、いいことだってあるでしょ」と言うさつきの言葉にはムカついて、
「たまたまこういうことがあったからって、ドタキャンを正当化するのはやめなさい」と怒鳴りつけたが、私の声は迫力がいまいち欠けた。


著作権所有者:久保田満里子

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プロフィール

2008年よりメルボルンを舞台にした小説の執筆を始める。2009年7月よりヴィクトリア日本クラブのニュースレターにも短編を発表している。 2012年3月「短編小説集 オーストラリア メルボルン発」をブイツーソリューション、星雲社より出版。amazon.co.jpで、好評発売中。

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