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『ぐるりのこと。』 Melbourne International Film Festival 2009

メルボルン国際映画祭 レビュー第一弾です。

2009年7月31日掲載


『ぐるりのこと。(ALL AROUND US)』 
監督:橋口亮輔 主演:木村多江、リリー・フランキー
 

メルボルン国際映画祭が盛り上がりを見せている。

今週月曜日 Forum Theatreにて最終プログラムとして上映されていた『ぐるりのこと。』(監督:橋口亮輔)。

法廷画家の夫・カナオと初めての子供を失ったショックでうつ病に陥った妻・翔子の再生のドラマを描く一方で、法廷画家という設定の下1993年冬から9・11テロに至るまでの約10年間を日本で実際に起きた事件を振り返りながら物語が進んでいく。翔子役の木村多江とカナオ役のリリー・フランキーの二人が主演を務め、二人のリアルな演技が話題になった一本である。

監督・橋口亮輔は前作『ハッシュ!』で「人と人が繋がる」ということに焦点を当て、ゲイ映画としての一つの到達点を築き上げ全世界から脚光を浴びた。6年ぶりとなる今作では、「人は人と繋がった後、どうやって希望を持って生きられるか」という点に焦点を当てている。『ハッシュ!』以降、自身も深刻なうつに悩まされた経験が、翔子の描写に活かされている。

「人と人との繋がり」と文字にするととても大げさに聞こえるが、映画の中でも描かれているようにそれは日常の本当に細かい細部に現れるように思う。監督は細かい日常の1コマ1コマを切り取り繋ぎ合せることで「絆」を表現する。細かい日常をいくつも切り取りながらリアリズムを追求する一方で、尚且つ、木村多江演じる翔子がうつでどうしようもない不安と苛立ちを地団駄を踏むことで表現する足だけのクロースアップシーンや、カナオが窓の外を見ながら「人、人、人。」と呟くシーンなど、不自然さをも強調することで更なるリアリズムの高みに上り詰めることに成功しており、途中から現代版小津映画を観ているような気分になった。

様々な潜在化していた問題が一気に噴出している9・11テロ以降の世界はうつ状態に非常に似ていると監督は言う。初めての子供の死を経験しうつに陥った翔子は、カナオの大きな慈愛に満ちた夫婦の絆により再生の一歩を歩みだした。うつ状態の世界にいる私達は、今一度人と人との繋がりという社会の根本的な部分に立ち戻ってみる必要があるのかも知れない。

前のプログラムでは『BALIBO』がイントロダクション&映画終了後のQ&A付きで上映されていたため『ぐるりのこと。』の上映時間は何と1時間も遅れた。長時間待たされた後ではあったが、鑑賞後はそんなことも忘れてしまうほどとても晴れやかな気分で映画館を後にし、喧嘩していた彼と手を繋いで家路に着いた。


詳細:
『ぐるりのこと。(ALL AROUND US)』 
監督:橋口亮輔 主演:木村多江、リリー・フランキー

http://www.gururinokoto.jp/

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