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東・東南アジア地域と日本による地域経済統合とFTA(自由貿易協定)戦略

貿易自由化がもたらすメリット

 

2010年11月22日(月) 18:00~19:30

SouthbankにあるPriceWaterhouseCoopers社にて早稲田大学の浦田教授を招いたレクチャーが開催された。学生を含めローカルのジャーナリスト、日系企業の代表など約50名の聴講者が集まった。

テーマは「東・東南アジア地域と日本による地域経済統合とFTA(自由貿易協定)戦略」について。

2008年9月のリーマンブラザーズ社倒産を皮きりにアメリカから同時発生的に全世界へ飛び火していった世界金融恐慌(Global Financial Crisis)。
あれから2年が経過した今、東アジアでの復調の兆しが顕著となっている。

 

内需の拡大と輸出の回復からインドの経済成長率は加速。また中国も成長鈍化は見えるものの変わらず前年同月比を25%増の数値を残し、東アジアエリアの経済成長をけん引している。
 

ではなぜ世界の景気に逆行するようなかたちでこれらの国々は成長を続けているのだろうか。

 

その秘密が今回のテーマでもあるFTA(自由貿易協定)にある。

 

FTAとは、物品の関税、その他の制限的な通商規則、サービス貿易などの障壁など、通商上の障壁を取り除く自由貿易地域の結成を目的とした、2国間以上の国際協定である。
※Wikipediaより引用

 

FTA締結の結果として、特定2国間及び地域内での貿易をより活発にすることが可能となる。
つまり前述した世界金融恐慌の時に、FTAを多くの国と締結していた国は「外貨」を低リスクで獲得することが出来たのだ。


ヨーロッパにEUがあるように、アジアにはASEANという東・東南アジア諸国連合がある。世界的には出遅れたが1992年に締結されたASEAN自由貿易協定(AFTA)から始まった段階的な貿易の自由化は確実に実を結ぶ結果となった。

1980年代には均衡していたNAFTA(北米自由貿易協定)と東アジアAFTAの貿易における地域内依存度浸透率は、30年後の2007年にはAFTAが約10%も上回る結果となった。

地域間の協力により東アジアは世界からいち早く世界恐慌から抜け出したと言えよう。

 

ではFTAに関して、日本はどのような反応なのであろうか。
諸外国と比較すると遅いスタートとなったが、2002年のシンガポールとの協定をきっかけに現在ではASEAN諸国、メキシコなど締結先を拡大している段階である。

オーストラリアとは現在交渉中だ。

日本がFTA締結をする目的の一つにGDP上昇がある。

FTAが日本経済・社会に及ぼすインパクトとして、日系企業のマーケット拡大、天然資源の確保、締結国との友好関係構築、発展途上国への支援などがある。
一方で外部からの製品や技術が入りやすいことも市場の活性化につながり、競争に強い市場が出来上がる。

 

一見いいことばかりに見えるFTAだが、自国の産業を守るという観点からは厄介な政策でもある。
クリアをしていかなければならない点(自国産業の保護など)も多々あるが、とにかくFTA実現が日本にもたらすアドバンテージは大きい。

 

2国間もしくは地域間が100%貿易自由化の同意の下でスタートするのではなく、段階的に、また例外などもリストしながら推し進め、先々で100%貿易自由化の状態を構築することができれば、素人ながらも日本の未来は明るいものだと思えてくる。

 

 


講師 プロフィール
早稲田大学 大学院アジア太平洋研究学科
教授 浦田 秀次郎(うらた しゅうじろう)

1973年 慶応義塾大学 経済学部卒業
1976年 スタンフォード大学 経済学部 大学院修士号取得
1978年 スタンフォード大学 経済学部 大学院博士号取得

ブルッキングス研究所研究員、世界銀行エコノミスト、国民金融公庫総合研究所所長などを経て現在は経済産業研究所の研究員としても新たな経済・政策議論を発信中。

専門分野は国際経済学、経済発展論。

 


レポート:Yudai Kohchi(河内雄大)
 

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