ダライ・ラマ法王がメルボルンにやってきた！

笑顔に満ちた貴重な講演の様子をレポート

2011年6月15日掲載

チベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ法王が11日間にわたるオーストラリア訪問のため、メルボルンに到着。6月10日から13日にかけてコンベンションセンターにて講演が行われた。

今年4月には日本を訪れ、東京・文京区の護国寺で東日本大震災犠牲者の四十九日法要を行ったダライ・ラマ法王。「震災のニュースを知らされた時、日本の寺院や友人の顔が次々と目に浮かび、悲しみでいっぱいになった」と話し、日本の人々に勇気と希望をもって困難に立ち向かうよう呼びかけたという。

震災直後も僧侶らに日本に向けて般若心経を10万回唱えるよう呼びかけ、震災翌日インドのダラムサラにてそれが行われるなど、日本の震災被害を親身になって心配してくださる姿勢に日本人として深く感謝したい。

さて、今回の海外訪問は、今年5月にチベット亡命政府の政治的指導者としての立場を退くことが決定して以来、最初のものとなる。宗教的指導者としての活動に専念し始めたダライ・ラマ法王の動向に国内外からの関心は高く、土曜日に行われたパブリックカンバセーションのチケットは何日も前からSOLD OUT。当日は6000人もの人が集まり、開始前の会場入口には入場を待つ人の長い列が。

セキュリティチェックを終えるとチベット関連グッズや書籍のお店が現われ、講演の合間に買い物も楽しめる。

私たちが参加したこの日、会場は大きなタンカ（チベット仏教で使用される掛け軸形式の宗教画）と白いシクラメンの花に飾られ、その中央にダライ・ラマ法王の台座が。チベットを始めとして、カンボジア、ベトナムなどからの僧侶も参加し、荘厳な雰囲気。

チベット人やその他の参加者はもちろん、僧侶にとっても法王は雲の上のような存在。会場全体が緊張感をもって入場を待っているところへ、法王が登場した。

背後のスクリーンに映し出された彫像を見て、”断食したブッダだ”というジョーク！会場が一気に笑いに満ちた。

講演では菩薩の教えに沿った生き方や瞑想の仕方などについて話された。印象深かった言葉をいくつか挙げてみる。

・自分にとって敵だと思っている相手は実は忍耐力、相手を哀れむ心を鍛えるための最良の先生であり感謝すらするべきであるということ。

・もし怒りの感情をもってしまったとしても、深く呼吸することに集中し平静さを取り戻すこと。そうすることで怒りのエネルギーはどこかに消えて行くということ。

・今回の日本のような災害や不幸な出来事など起きてしまったことは変えることはできない。私たちの持つ智慧を使い、将来のことを考えて前に進むだけということ。

これまで若いうちから自分の国を追われ、数々の破壊と苦難を強いられてきたにも関わらず、非暴力主義を貫いているその背景を垣間見れた気がした。

講演は仏教に関する真面目な話を中心にしつつも、法王の明るくユーモア溢れるキャラクター、すべてを包み込むように優しい笑顔で会場は平和な空気が流れていた。

チベットにも一日も早く平和な日が訪れることを祈らずにはいられない。

法王の講演はメルボルンを皮切りに、全国各地で開催予定。

6月11日−13日 メルボルン
6月14日 キャンベラ
6月15日 ブリスベン
6月16日 サンシャインコースト
6月17日 ブリスベン
6月19日 パース
詳しくはwww.dalailamainaustralia.org

また、ブリスベンとパースでの講演はウェブを通じてライブ中継されるので、会場に行けなくても楽しめそうだ。
http://www.dalailama.com/live-australia

Brisbane Public Conversation
Friday 17th June - 1:30–3:30pm

Perth Public Conversation
Sunday 19th June 11:30am-1:30pm (9:30-11:30am in Perth)

（※時間はメルボルン時間です）

文：伊丹明日香 　写真：Daniele Cecchi