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テニス・ワールド・カップ

夢の新計画がメルボルンで実現か? 

2010年2月4日掲載

新しいメルボルンパークの構想図

メルボルン・パークの再開発計画。
一番上のドームは、現在、建築中の新スタディアム。サッカー、ラグビー専用のリクタングラー・スタディアム
その左側は、現在のハイセンス・アリーナ。その手前の四角の屋根は、新しく建設されるタウン・スクエアと呼ばれるお祭り広場。その手前の屋根付きは、現在のロッドレーバーアリーナ。中央の屋根付きの施設が、全面的に改造されるマーガレット・コート・アリーナ。一番手前は、現在の第二ショー・コート。左側には、新しく観客席付きのショーコートが建設される。そのほかにもいくつか新しい施設が作られる。新サッカー場のオープン式の競技場はAFLコリンウッドの練習場、レクサス・センター。
ここで第一回テニス・ワールドカップが開かれるか?

オーストラリアン・オープンには、世界中からテニス関係者がメルボルンに集まる。2010年オーストラリアン・オープンの真っ最中、ここで密かに、またオープンにひとつの重大な議論が戦わされていた。テニス・ワールド・カップだ。
現在、テニスには、ワールドカップは無い。4つのグランドスラムがテニスの頂点に君臨しているが、これは各プレーヤーが個人として戦うゲーム。ワールドカップは、国の代表として戦う大会なので別物。現在、各国を代表して戦う試合は、男子のデビスカップと女子のフェドカップがある。このふたつの大会にはいくつもの大きな問題がある。

デビスカップとフェドカップ

男子国別対抗戦デビスカップは、毎年開催される。対戦各国は、ホームとアウェーの戦いを行って、勝利国を決める。
世界のトップ16カ国が1回戦からトーナメント方式で戦う。世界各地で1回戦からトーナメントを行い、毎年12月に決勝が行われる。一方、世界各地域で予選を行い、各地域の上位8チームとデビスカップ1回戦で負けた8チームの16チームが戦い、勝利8チームが翌年のデビスカップに参加が出来る。
現在では142の国と地域が参加している。女子も男子と同様の方式を取っている。

現在のデビスカップ、フェドカップには、マスコミやテニスファンから見て興味を削ぐ大きな問題点が含まれている。男性女性で別の組織による運営であり、別の日程で行われる。第二に予選はともかく本戦も、ホーム&アウェイ方式なので、全チームが一同に会することが無い。開催期間も3月頃に1回戦から決勝の12月まで延々と8ヶ月ほどもかけてのんびりと戦っている。また全体のシステムが複雑で判りにくい。試合が長すぎるなど。1回戦に参加するチームも16チームと世界中の注目を集めるには程遠い。
そもそもデビスカップやフェドカップの名前を聞いたことが無い人も多いほど。サッカーのワールドカップが注目度が非常に高く巨額の資金を集めるのとは大違いである。

 オーストラリアは、かつてテニス大国であった。1900年代にオーストラリアは27回の優勝を誇る世界最強の国のひとつであった。しかし今年の全豪オープンではレイトン・ヒューイットとサマンサ・ストーサが共に4回戦で敗れて1976年以来の優勝を絶たれた。メルボルンには数多くのテニスコートがある。コミュニティ、学校、アパート、個人などのコートを入れると数百m歩くごとにテニスコートがあると云っても過言ではない。しかしテニス人口は急速に減りつつある。オーストラリアン・オープンの熱狂ぶりとは別にオーストラリアのテニスはさびしい状況になりつつあるののが実態。
このような事態を一気に解決するひとつの手段としてワールドカップ構想がメルボルンでも出てきた。

2010年オーストラリアン・オープンの実施以前の10月頃からメルボルンのThe Age, Herald Sunなどの紙上でワールドカップ構想が紙面をにぎわすようになった。AFL(オーストラリアン・フットボール)のかつての名選手などが出てきて、まだ真偽のほどは確かではないが、新聞紙上を賑わせていることは確かだ。

2010年オーストラリアン・オープンが終盤に差し掛かる1月26日、ビクトリア州ジョン・ブランビー首相(John Brunby)は、オーストラリアン・オープンのメルボルン・パークの再開発計画を発表した。オーストラリアン・オープンの開催を2036年まで確保する大胆なプランだ。センターコートであるロッドレーバー・アリーナとハイセンス・アリーナは、現在のまま残す。第三のコートであるマーガレット・コートアリーナを屋根付きのコートに大改造する。いくつかの屋根付き広場をを新設し、テニスコートも大幅に刷新する。

中央部をお祭り広場とする、いわゆるピアッツアスタイル。屋根付きの座席数を大幅に増やすこと。シティへのアクセスを良くすること。などで観客の利便性を増すとしている。もちろんテニス以外のメルボルンの大規模集会施設として利用することを目論んでいる。
巨額の投資をする理由として、大幅に増大するオーストラリアン・オープンの観客を快適に収容することと、同時にアジア、オーストラリアでは並ぶものがない一大多目的テニスセンターを作り上げることにあるとブランビー首相は語っている。
 

 オーストラリアン・オープンは、1988年にクーヨンテニスコートからメルボルン・パークに移ったが、その年の入場者は、25万人であった。2009年の入場者は、60万人に膨れ上がった。世界中でオーストラリアン・オープンの視聴者は、2億人以上と云われる。直接、間接的にメルボルンに入ってくる観光収入は莫大だ。新しいメディアセンター、練習コート、シティとの連絡をより便利にするアクセス。『今こそ、世界的な要求に対処する時期だ。』ブランビー首相は力強く述べている。

 ビクトリア州のこの決断は、第一回ワールドカップをメルボルンに誘致する構想と絡み合うと云われている。 ワールドカップが設立されるとデビスカップの地位が脅かされることは間違いない。またグランドスラムと云えども、ワールドカップの前にはテニス界トップの位置から滑り落ちる。
それならば、率先してワールドカップをメルボルンに誘致する構想も十分にありうる。
第一回のワールドカップは、36カ国。10日間で行うことが話し合われている。

ベルギーの国旗を手にするベルギーからの応援団。ベルギーは、ジャスティーヌ・エナン選手を始めとして強豪選手が多い。

ノバク・ジョコビッチを中心に、フェデラー、ナダルなどトップ選手はワールドカップ構想を歓迎している。既に選手会には提言が出されているとジョコビッチは語っている。一方で、アンディ・マレーなどは、現在でも過酷な日程であるのに不可能だと云っている。
まだまだ不透明な部分が多いが、テニス・ワールドカップが巨額の資金を生むのは、間違いない。先を読むことが得意なメルボルンが一手、先行する可能性は高い。

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