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食物思考~Thought for Food~(12) 子羊編

 1年に三度くらいでしょうか、私が突然、「肉~っ!」と叫び出す瞬間がやってくるのは。私はベジタリアンではありませんが、肉をほとんど食べないのです。私が「美味しいと思わない。」とこぼすと、母からは、「それはアナタ、本当にデリシャスなお肉を食べたことがないからだわ。」という言葉が返ってきます。それでは母上、私が幼いころに食卓で口にした肉はなんだったのですか。それでもスクスク育ちましたから、文句は言えない、言わないの。

 さて、先日、久々に肉を無性に摂取したいという気持ちに駆られた私は、だからと言って高級肉を求めるわけでもなく、いつもどおりにスーパーマーケットに出掛けたのであります。いつもと違うのは、チョコレート売り場よりも肉売り場での滞在時間が長くなること。

 そして肉に魅力を感じる自分に違和感を持ちつつ、肉売り場をうろつく私の目に留まったのは、哀れという形容詞がよく似合う子羊たち、ラムでございます。

 生後1年未満の子羊、またはその肉をラムと呼びますが、ファームでぴょこぴょこ歩いているめえめえ子羊を指差し、「見て、ラムだわよ!」などと叫ぶと、ヒンシュクを買ってしまいます。間違ってはいないハズなのに。ニワトリを見て、「チキンだわよ!」と言っているのならば責められても仕方ないかしら、と思いますが。




 それよりもラムと言えば皆さん、「臭いわよね!」とむげな物言いをなさいますが、いかがなものかと思います。あれは独特の風味と捉えるべきです。そもそも、肉は豚でも牛でもそれなりに臭いはあるもので、熟成が上手くなされている肉ならば、腐敗臭とは異なる臭みであるはず。人間の五感を悪い意味で刺激し、「クサイ!」と感じたのであれば、お腹を壊す前に捨てちゃってください。

 もうひとつ、ラムについてよく言われるのが「硬いわよね!」でございますが、それこそ「本当にデリシャスなラムを食べたことがない」のですよ。新鮮で良質なラムは柔らかいものです。肉をあまり食べない私の言うことですが、それは間違いないのです。なぜなら、私はその偏見を持ち続けていた一人なのですから。

 初めてラムを口にしたのは、人間よりも羊がわんさか暮らす国・ニュージーランドでした。知人が調理してくださったラム肉。それは噛み切るのが容易ではなく、ナイフを使っても筋らしきものが邪魔をしてなかなか切れず、なんとか口にしたはいいけれど、硬すぎて咀嚼できずに、味や臭みを感じる前に飲み込むほかありませんでした。そのころはピュアなハートの持ち主であった私。「ラム肉を楽しめないのは、私が大人の味覚を理解できないからだわ。」と真剣に思い込んで、「へえ、これがラムなの。美味しいですね。」と作り笑顔でその場をやり過ごしたのであります。そうして、私のラム肉に対する誤解は、その時からニュージーランドの別の知人宅で柔らかいラムを食する機会まで、実に3年にもおよびました。



 「臭くて硬い」と言われて久しい哀れな子羊たちですが、ラムステーキやハンバーグなどとして食べる際には、ミントソースと一緒にどうぞ。味の相性抜群、そして消臭効果もございます。また、カレーに入れる際には、煮込む前にラムをヨーグルトに浸しておくと柔らかくなります。

 ・・・子羊たちからすれば、若くして食べられる方がずっと哀れ?
 

コメント

以前のコメント

Chookie   (2009-06-01T01:11:22)
ヨシミさん>>きっと明日は口にくちばしが、背中に甲羅が・・・。
ヨシミ   (2009-05-31T21:14:52)
晩御飯に羊の腎臓を食べました。レバーよりもモサモサした感じがなく、意外と癖になりそうな食感でした!今日はお昼もアヒルの腎臓やらスッポンの足も食べたので、相当精がついたのではないでしょうか?

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私は、一日に一度は市場に行かなければ落ち着かないマーケットホリック。これは、そんな私と食物たちとの四方山話です。

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