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眞鍋 大度さんインタビュー

若きメディア・アーティストのみつめる世界とは…。

パソコンの普及率は目覚ましく、インターネット環境の整備も著しく発展している現代においても、プログラミング、メディア・デザイン等の言葉は難しいものとして認識されがちだ。
しかしそんなメディア・アート界において、ビジュアルとサウンドを融合させることで、年齢問わず、人々を虜にする作品を発表し続けるアーティストがいる。
眞鍋大度(マナベ・ダイト)さんだ。
世界的に注目を集める眞鍋さんにお話を伺った。

インタビュアー:Chihiro

 

【プロフィール】

Artist, Coder, Hacker, Sound designer, DJ, VJ

確固たるプログラミング技術と徹底的なリサーチ、柔軟なスタンスで、国内外を問わず数多くのプロジェクトに参加している。2009年1月に行われた Ars Electronica Center OpeningイベントではZachary Lieberman率いるYesYesNoとのコラボレート作品を発表。自身の筋電センサー、低周波発生器を用いたパフォーマンス、DJingも行った。 顔面を音楽のヴィジュアライザーとして扱ったYoutubeの実験映像がギーク系ブログで話題になり一ヶ月足らずで100万ビューを達成。2008年3 月、4nchor5 la6を設立、石橋素と共同主宰。Rhizomatiks(ライゾマティクス)取締役。

 

--SE、プログラマー、DJ等の幅広い肩書をお持ちですが、皆様にどのようにご紹介したらよいでしょうか?

色々なことをしていて、まだ肩書のないジャンルですので、全部羅列していただいてもいいですし…。
プログラミングを使って、何かしている、と。


--まずプログラミングありき、ですね?

そうですね。


--何に一番影響を受けられましたか?

ATARI(1972年にアメリカで創業したビデオゲーム会社)等の、小学校の時にやっていたゲームですね。


--色々な分野の創作活動をなさっていますが、一連の作品にテーマはありますか?

特に一貫したテーマはなくて、その時に興味を持っているものをやる、といった感じです。
 

--では、今、一番興味を引かれているものはなんでしょう?

カメラのレンズです。それと、紫外線レーザー。
 

--“scoreLight”という作品がありますが。

はい、あれはレーザーですね。
 

--非常に専門的で難解だと思われる分野において、ビジュアルやサウンドを組み合わせることにより、幅広い世代の方々が楽しめる作品を作られていますが、その点は何か意識なさっていますか?

凄く分かりにくいことをやったりもします。ただ、展覧会等では、来場者が楽しめなければならないので、その辺は気をつけているというより、最低限のマナーだと思っています。
 

--“Electric Stimulus to Face”を発表したことが、眞鍋さんの知名度を爆発的に上げるきっかけになったかと思います。その以前と以降とで創作に関する姿勢や物の捉え方等、変化したことはありますか?

それまではいろんなオファーがあったのですが、最近では“顔” (“Electric Stimulus to Face”)でしか呼ばれなくなったので、困ったなぁ、と。
 

--“Electric Stimulus to Face”以外の部分での表現やアプローチに関してはどのように考えてらっしゃいますか?

新しいものを作って、他のものをやりたいと思うのですが、やはりこれ(“Electric Stimulus to Face”)をやってほしい、となります。ヒット作のようなものを作ってしまうと、次をやらせてもらう機会が減りますね。
海外では特に難しい。初めて訪れる場所だと、やはりこれ(“Electric Stimulus to Face”)をやってほしい、となるので。
 

--“Electric Stimulus to Face”のイメージが強いので、まずはそれを…となるのですね。

そう! それを、と。
 

--アートとビジネスの結びつきに関しては、どのように考えてらっしゃいますか?

日本で僕のようにアーティストとして生計を立てて行くのはおそらく難しく、大学で教える、研究施設で研究員になる、助成金をもらうというようになると思います。
僕が選んだやり方は、ビジネスでも同じことができるような環境を作るということ。それは自分で会社を作り、作品をクライアントに見てもらうことで、ビジネスに結びつけることです。
 

--まずは環境を整える、ということですね。

そうですね。会社を作った当初はあまりたくさんの仕事はなかったのですが、今は様々なメンバーと仕事をしているので、色々なものが形になって、それが仕事になることが増えてきました。
 

--会社の取締役として動かれるということは、その分製作に携わる時間が限定されてしまうことになると思うのですが、その両立はどのようになさっているのでしょうか?

会社でしている仕事も、普段作っているものも変わらないですね。今は“作品”を“仕事”にしてくれるメンバーがいるので。
“Electric Stimulus to Face”であっても、あれは一見アート活動ですが、それをビジネスにもできます。
製作者側からは、境目というものはそんなに大きくありません。クライアントが美術館なのか、企業なのかという違いくらいでしょうか。
 

--日本でアートを仕事にしていくのは難しいのではないかということですが、それでもあえて目指したい!という方にメッセージをお願いします。

アーティストとしてだけで食べていけたら、たぶん一番良いと思います。
ものを作るだけで生活していくのは環境を整えたり、人とのつながりを作っていかなければならず大変なのですが、できないということはありません。
 

 眞鍋大度さん ホームページ:http://www.daito.ws/
 株式会社ライゾマティクス:http://www.rhizomatiks.com
 

 

【インタビューを終えて】
非常にタイトなスケジュールの中、丁寧にインタビューに答えてくださった眞鍋さん。「ネットとパソコンさえあれば何処ででも…」という身軽な姿勢は、気負ったものを感じさせず、むしろ訪れた土地を自然に己のホームへと変えてしまうのではないかと感じさせました。それこそが“環境を整える”という作業の一つなのかもしれません。
“プログラム=難解なもの”といった先入観なしに、是非とも彼の作品を見てみていただきたいと思います。

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