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映画『サカサマのパテマ』吉浦 康裕監督 インタビュー

日本で話題のアニメ映画作品がメルボルンに!

2013年11月9日に日本で初公開され、ぴあ初日満足度ランキングでも堂々の第1位を獲得するなど、現在話題沸騰中の吉浦康裕原作・脚本・監督によるアニメーション映画『サカサマのパテマ』が、メルボルン映画祭にもやって来た!作品にこめられた熱い思い、そしてメルボルンでの上映にかける意気込みを吉浦監督に語っていただきました。



吉浦 康裕  Yasuhiro Hoshiura
北海道出身福岡県育ち。アニメーション作家・映画監督。
大学在学中にアニメーション制作を開始し、作品を国内外で発表。卒業後は福岡にてフリーでショートアニメーション制作に携わりつつ、個人制作で商業アニメデビュー作品である『ペイル・コクーン』を完成させる。これを機に上京し、以降は少人数でのグループワークを主な制作スタイルとしている。2010年3月、初の劇場作品となる『イヴの時間 劇場版』を公開。(Wikipedia参照)



―まず、今回メルボルンでの上映に至るまでの経緯を教えてください

日本以外の国の方々が見ても純粋に楽しめるような映画を作りたい。そういったコンセプトのもと、生まれたのがこの『サカサマのパテマ』だったので、キャラクターの名前や姿、世界観などもあえて日本を連想させるようなものにはせず、吹き替えや字幕さえ変われば、どこの国で上映されても作品自体の世界観が素直に伝わるようなユニバーサルな作品になっています。そういった背景からメルボルンをはじめ海外での配給が決まりました。

 

かつてないユニークで斬新な「サカサマ」というテーマを映画にしようと思ったきっかけは?

実は僕自身の幼少期の体験が非常に大きく影響していて、広い場所でふと空を見上げた時、高いところから逆に空を見下ろしているような、さらには逆の重力で空の方に落っこちてしまうようなそんな不思議な感覚、まさに「サカサマ」の感覚を体験したのがきっかけです。その後大学に進み、アニメーション制作に没頭する中で、あの時のユニークで斬新な体験をいつか一つのアイデアとして世に送り出せないだろうかとずっと思っていました。そして今回ついにそれが「サカサマのパテマ」として実現出来たわけです。



―オーストラリア(メルボルン)の他にも海外上映されましたか?

はい。他にはフランスやイギリスの映画祭に参加しました。想定していたよりも海外からのオファーが多く、上映だけでもスイスをはじめ主にヨーロッパで行うことができました 。全てちゃんとした映画館で上映していただけたのが嬉しかったです。今後は北米、ルーマニアでの上映を予定しています。欲を言えば全世界を制覇したいくらいですが、進行中の他のプロジェクトもあったりするのでさすがに僕一人では厳しいですね(苦笑)。


―海外の方にも楽しんでもらえる作品がコンセプトとのお話でしたが、日本と海外の観客とでは何か反応に違いはありましたか?

海外はやはりストレートで素直なリアクションをされる方が多いのかなぁと感じました。また、おかしいから笑うというよりかは興味深いから笑うという印象も受けました。日本人とはまた違う??ツボで笑ったりする場面もあったりで中々おもしろかったです(笑) また、今回のメルボルンでの上映においては、中学生や学生の姿が多く見られたので驚きました。後で聞いたところによると、メルボルンの教育関係者の間で「先生が生徒に見せたいアニメ」に選ばれているとか??(笑)。
実際、「家族で観られるアニメ 」というのもコンセプトの一つだったので、国内外問わずそういった学校や教育の場でも取り上げられるのは非常にうれしい限りです。
また日本のアニメ自体が既に世界的に高い評価を得ているので、今回の海外上映でも大きなアドバンテージとなりました。



―メルボルンであれば絶景で有名な海岸線「グレートオーシャンロード」がありますが、旅行中に見た風景などから作品へのインスピレーションを受けたりしますか?

そうですね。モダン建築が好きなので、インドのチャンディーガルやコルビジェにインスパイアされた部分が多いです。パテマにおいては地上のアイガの世界にそれが反映されていたりします。


―監督にとってのアニメの魅力、可能性とは?

パテマで例えるならば、 「サカサマ」の重力なんて実際の物理学上にはありえない事ですよね。でもそれに違和感を感じることなく観客がスッと作品に素直に入り込める。アニメの場合、そんな架空の世界を表現するにあたり、実写に比べると自由度が格段に高くなります。それがアニメの最大の魅力でもあり強みでもあると思っています。そういった意味ではこの「サカサマのパテマ」はまさにアニメならではの企画であったと思います。



―今回、登場人物(キャラクター)の声がとてもよかったのですが、何か配慮した点はありますか?

僕自身が自らキャスティングやアフレコ監督も行っています。今回は本格的冒険活劇のアニメ映画にしたかったので、ベテランの声優陣を起用し作品により深みとリアリティを加えました。唯一パテマ役の藤井ゆきよさんだけが新人の声優さんだったのですが、彼女の声がとても良かったので起用しています。



―この映画で一番伝えたかったことは?

実はメッセージ性や内容というよりかは、とにかく真っ先に「素直に楽しんでもらえること」を最優先にした映画なんです。その上で、僕が幼少の頃に経験した「サカサマ」のおもしろさを少しでも皆さんに共感してもらえればと。実際この「サカサマ」のコンセプトは、企画当初はスタッフになかなか理解してもらえず、絵とストーリーを見せて初めて伝わった(笑)。皆様にも映画を通してそれが伝わりそのおもしろさを理解してもらえることが最大の喜びです。



―自分が「サカサマ」になったら世界はどう見える??映画をまだ見てない方へのメッセージ

ヒロインのパテマが逆さまである、というコンセプトのもと作り上げたこの作品は、一見シンプルなようで、よくよく見ていくうちに「あれ?」と思う部分や謎解きな部分も多く、色々な角度から大人や子供、そして国籍、人種を問わず楽しめる作品になっています。普段はアニメをあまり見ない人にもぜひ見てもらいたいですね。



―次回作と今後について

パテマ以降もいくつか短編アニメを制作しており、TSUTAYAで観られるのもあります。
もちろんそれとはまた別で長編映画も企画中進行中なので、今後にご期待ください。

 

 

>>編集後記

今回が南半球デビューだった吉浦監督。季節が真逆なことがとても新鮮だとか。
ぶっちゃけオーストラリアといえば、まさに映画「マッドマックス」のようなoutbackなイメージを持っていたそうですが、オーストラリアが誇るアートとカフェの街メルボルンに来てみてビックリ。オーストラリアへのイメージが180度変わったそうです。すでにベジマイトにもはまっておられました☆
今後オーストラリアで見た景色や風景からまた素敵な作品が輩出されるといいですね♪

 

Interviewer: Jun Hasegawa, Machiko Yamashita
Edit: Machiko Yamashita
 

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