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大工 Shaun & Neil インタビュー

日本で大工として経験を積んだ兄弟のインタビューです。

2009年11月25日掲載

【プロフィール】
兄:Shaun de Keyzer (1976年生まれ)
弟:Neil de Kayzer (1978年生まれ)
メルボルン生まれ、京都育ち。日本で大工として経験を積んだ後、生まれ故郷であるメルボルンに移住。現在は内装などの建築関係を含め、兄弟で色々なことを手がけるアーティストとして活動中。

インタビュアー:倉地 亜矢美

 

--京都にはどれくらい居たのですか?

Shaun
 僕が2歳半、弟は生まれて半年で京都に引っ越しました。義務教育は全部京都です。

 

--どうして大工という道に進んだのですか?

Shaun
 今ある京都の実家に11~12歳の時に引越したのですが、その家が半分しか完成していなくて、父が「家を一緒に作るぞ!」と言うので、その頃からこういった仕事に興味を持ち始めました。ベッドルームも大きいのが最初は1つしかなくて、家族全員6人がそこで寝ていました(笑)。その家は京都の亀岡にあるのですが、亀岡に居たのは結構長くて、まだ両親はそこに住んでいますし、亀岡から僕の家族と弟と妹でメルボルンに移り住みました。

 

--なぜメルボルンに移住を?

Neil
 もともと僕は妹と先にオーストラリアに来ていて、ゴールドコーストに住んでいました。それでメルボルンに移って、その後兄家族も日本から来ました。僕も兄も日本で大工をしていて、僕はオーストラリアでも大工をしていました。

--日本ではどのくらい大工業をしていたのですか?

Neil
 2~3年ですかね。大工も含めて建築関係はかれこれ10年くらい関わっています。日曜大工を合わせたら小学校のときからになります。元々父親が日曜大工が大好きで、ほらオージーって結構何でも自分で作ってしまうでしょ? そういった感じで、さきほどお話したように家も自分で建てて、プールも掘りました。半分しか出来ていなかった家は家族全員の力で建てました。でも父親は普段は普通のサラリーマンなんですけどね。休みの度に日曜大工です。だから僕達のルーツはその父親の日曜大工を手伝っていたことですね。それで、近所に日本の建設会社があって、兄が16歳からそこに勤め出しました。僕も追いかけて2年後くらいに同じところで勤め出しました。そこでは完全に日本建築をしていました。

 

--こちらでも大工業をしていたということですが…

Neil
 メルボルンに移ってきてから大工として働いていました。3ヶ月前くらいに辞めて、これからは兄と一緒に活動していく道を選びました。

 

--日本で大工をするのとこちらで大工をするのは、どんな違いがありますか?

Neil
 
こちらは完全に分業制です。たとえばフレームだったらフレーマーというフレーマーだけをする職業の人がいますし、内装だったら内装だけをする職人、ボードを張るだけの専門業者がいます。日本の場合は、大工というと基礎以外はほとんど全てを、例えば木の部分や内装、プラスター(塗り壁用材料)を張ったりといった仕事は全て大工がやります。でもこちらはプラスターでもプラスター屋さんがいて、フィクシング(ドア周りの細かい部分の仕事)はフィクシング専門の業者がやります。

 

--こちらでは一つの家を建てるのに、ものすごい数の人が関わっているということですね! どちらがやり易いですか?

Shaun
 沢山の人が関わるだけ単価も上がりますし、自分のイメージしているものが創り難いというのはありますよね。僕は何でも自分でしたい!と思うほうだから、日本のやり方のほうが合っているかもしれません。

Neil
 分業制なのは、多分こちらの物件が大きいからだと思います。結局、一人だと間に合わないんです。日本の物件と比べると、こちらのサイズは本当に大きい。道具も大きいですから。メジャーも8mで足りない時があります。日本では5mあれば困ったことは無いのに…(笑)。でも日本の建築のほうが、大きな太いしっかりした木を使います。こちらは小さい木を組み合わせて造りますね。

 

--オーストラリアの住宅はレンガを使ったものも多いですが、レンガも扱いますか?

Neil
 要望があれば応えます。ただレンガに関してはオーストラリアのほうが断然上ですね。綺麗に積みます。日本でここまで綺麗に積める人は中々いないと思います。

 

--大工業は日本でもこちらでも職人制度なのですか?

Shaun
 位置づけとしては僕らは弟子という立場でしたが、僕らが勤めていたところはそれほど堅い感じではなかったです。僕らの親方自身は日本古来の親方と弟子という雰囲気のところで修行してきた人でしたけど、会社自体はそんなに硬派な感じではなかったですね。

Neil
 オーストラリアは学校制です。4年間学校で勉強してライセンスを取得できます。日本の場合は親方の元で修行して一人前になったら、親方が取ってきた仕事を任してもらえるという方針ですが、オーストラリアはライセンス制ですね。自分がどれくらいの仕事が出来るのかということを証明するためです。ライセンスさえ取ればオーストラリアのどこででも職人として仕事が出来ます。僕もライセンスを取ろうと思ったのですが、4年というのが長いなと感じました。例えば4年勉強してもフレーミングだけの免許しか取得出来ません。僕はもっと色々なことが出来る立場で働きたいので、フレーミングだけのライセンスのために4年を費やすのは勿体無いなと思いました。

 

--今後はどういった形でビジネスを展開する予定ですか?

Neil
 このChanoyu Spaさんの件のような形で、日本でやってきたことを生かすような形で出来る範囲で手がけていこうと思っています。特に兄は日本建築業界での経験が僕よりも長く、大工としての腕もすごく良いですから、僕がデザインしたものを兄が具体化するという方針でやっています。

 

--日本で住宅関係を手がけていたときも、このような欄間などの内装を作られていたのですか?

Shaun
 作りましたけど、こういう自由なデザインではないですね。このChanoyu Spaさんのものは内側に朱色を入れたのですが、日本だとこういうデザインは変にタブー的なものがあります。こちらではそういうものがカッコいいと受け入れられます。

Neil

僕達個人的には日本のものにこだわっている訳では無いんです。日本のものを作ってほしいという要望があれば作りますけど、今後は日本のものだけを作っていこうとも思ってないですし、何でも作っていきたいという気持ちでいます。ただ、日本に住んでいて日本での経験がありますから、こういう欄間など日本的なものを要求された時にすぐに理解して作ることが出来る自信はあります。そういう意味でChanoyu Spaさんの案件は、本当に楽しくやらせてもらえました。

 

--Chanoyu Spaさんの内装で一番こだわったところは

Shaun
一番こだわったのは色かな。欄間に関しては色ですね。玄関の棚に関しては弟のデザインですね。天井の飾りは、天井の痛みを隠すために装飾したものです。

--カッコいいですね! 面白いデザインだと思います。

Neil
 僕らの作ったものを面白いと思ってくれて、何か面白いものを作ってほしいという要求があれば応えていきたいです。例えば「一部屋まるごと日本にしてほしい、窓から見える景色も日本の雰囲気にしてほしい」という要望があれば、僕達はすぐ出来ます。

Shaun
 「でもウッドデッキは全然日本風ではなく違う感じで…」と言われても喜んで対応します。そういう何にでも対応できる技術は日本の大工時代に得たものですが、アイデアに関しては父親の日曜大工から受け継いだものだと思います。幼少時代、一緒に家を建てたことからも沢山のことを学びました。プールも3年間手堀りして完成させました。そこで出た砂を違うところ、例えば家の底上げとか庭とかに使ったり、掘っていて岩が出てきたら、またそれを違うところに使ったり…。アイデアが沢山詰まっています。失敗も沢山ありましたけど。まだその家は現在進行中で、父親が色々ちょこちょこやっています。

 

 

 

--こちらに住んでいる日本人で、住宅関係で少し困ったことがあったときに頼れる存在がいるというのは嬉しいです。ちょっとここを直してほしい…という時に細かいところまでこちらの業者にお願いするのは心許ないことが多いですから。

Neil
 そうですね。例えばChanoyu Spaさんのオーナーも内装のために障子を買ったのですが、障子の敷居と鴨居を入れてくれる職人が居なくて困っていました。だから僕らに任してもらえることになりました。それがきっかけで内装を全て手がけることになりました。こちらで育った人に障子の写真を見せてもどういう構造になっているかなどの細かい部分は理解できないですよね。欄間を入れるアイデアも僕らのほうから提案しました。玄関の棚のデザインは和太鼓の曲線をイメージしています。僕らは日本で育ったし、ましてや大工の道を歩んできましたら、どんな細かいことに関しても、アイデアに関してもすぐ反応できる素地があります。現在はこちらでお茶の先生をしている方に頼まれて囲炉裏を製作しています。

Shaun
 僕らは決まった予算の中でも、その中でどうしてもこだわってしまいます。プライドが許さないというか。人件費を削ってでも、安っぽいものは絶対に作りたくないですね。そうやってこだわったものが次の仕事にも繋がると思っています。

Neil
 これからは大工以外のこともどんどんやっていきたいですね。タイルも鉄も、プラスチックだって扱いたいと思っていますから。アイデアはどんどん膨らみますし、後はどれだけShaunが形にしてくれるかっていう感じです(笑)。

--今はダンデノンにお住まいとお伺いしました。

Shaun
 元々父親の持ち家です。築80年くらいの古い家で、そこもちょこちょこ直しながら住んでいます。

 

--今後はメルボルンにしばらくお住まいの予定ですか?

Neil
 そうですね。メルボルン、気に入っています。

 

--どんな点が好きですか?

Neil
雰囲気も好きだし、あと、少しくらい大げさなことをしても受け入れてもらえるところですかね。日本は余計なことをすると叩かれるみたいなところがありますから。デザインに関しても受け入れられる範囲が日本に比べて広いと思います。どこにでもアートがありますし、どの家にも1つや2つはアートがありますよね。僕もアートやデザインといった範囲が好きなので、とても夢が広がります。僕は自分らのことをアーティストだと捉えている部分があります。もう少ししたらグラフィックデザインの学校に通う予定です。

Shaun
今の時代、スケッチやアイデアなどをコンピューターで見せるのが一番早いですからね。

 

--メルボルンでお気に入りのスポットは?

Shaun
ダンデノンから少し行ったメルボルン・ウォーター(ダム)の辺りが好きです。大きな公園になっていて、カンガルーも沢山いるし子供が遊べる遊具もあるし、暇さえあれば行っています。


Neil
あとはうちの近所の自転車道が好きでよく散歩していますよ。

 

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