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新土曜校、藤家管幸校長先生インタビュー

子供達の教育について、とってもためになるお話

 

「プロフィール」

藤家管幸(ふじいえ かんこう)
日本で32年の教職経験を経て、2005年4月からメルボルン国際日本語学校校長を勤める。2009年12月同校退職。2011年4月メルボルン補習校校長に就任予定。趣味;ハイキング、アメリカのカントリーミュージック、楽器(フィドル)演奏
 

インタビュアー:高阪 竜馬


--まず、メルボルン補習校を開校するに至った経緯を教えて下さい。

このメルボルン補習校の主旨は大きく2つあります。 
1つは、メルボルンで日本語を学びたいと思っている子供達が、今ある補習校に入りきれず入学待ちをしているという状況があり、それを解消すること。
もう1つは、この10年間で大きく変わった生徒の実態、保護者のニーズに対応した学校を作るということです。
大きくニーズが変化した今、従来の方法で授業を進めるのには限界があり、教員もとても苦労しています。そこでこの新しいメルボルン補習校の開校が必要となったのです。
 

--その大きく変わったという生徒の実態について教えて下さい。

1997、8年ごろの生徒の構成は、駐在員の子供が 6,7割程度、残りが永住の子供(オーストラリアで生まれた子)でした。その状況では、そのまま日本の教科書を使って授業をしても問題がなかったのです。しかし、2004年ごろから永住の子の数が急激に増えていき、2009年度には6,7割が永住の子、残りが駐在員の子という、生徒の構成の逆転が起こったのです。

永住の子供達にとっては英語が第一言語であり、日本語は主として母親が話すものだけ、一歩家の外に出たら日本語を全く使わないということが多いのです。その子達が日本語教材でなく、日本語ネイティブ向けの日本の教科書、国語を学ぶのはとても難しいんですよ。
ただ、日本で今まで普通に日本語教育を受けてきた駐在員の子にとっては、永住の子供達のレベルに合わせた授業では物足りない、退屈してしまうんです。

こういった子供達の日本語レベルの二極化が起こっている中で、授業を進めていくというのは大変難しいんです。特に中学生レベルの古典、漢文などになってくるともう大変ですよ。


--確かにどこに授業のレベルを合わせればいいか、難しい問題になってきますね。
--保護者のニーズについても教えていただけますか?


保護者のニーズは大きく3つに分かれます。
1つ目に、2、3年後には日本に帰る予定の子に対して、教科書をきちんと教えて欲しい、スピードアップしてどんどん教えてもらいたいというもの。
2つ目に、永住の子に対して、日本語の基礎をしっかりと教えて欲しい、中学校の教科書まで教えなくていいから、読み書きがきちんとできるくらいまで教えて欲しいというもの。
そして3つ目に、教科書もそこそこ進んでもらいたい、でもスピードアップしすぎて子供にストレスを与えたくもない、という1と2の真ん中くらいのもの。ここには永住と駐在員の子供達を交流させて、お互いの文化を学んで欲しい、という保護者のニーズも含まれます。
 

--生徒の日本語レベルも保護者のニーズも多様化していて、1つのクラスでそれを満たすのは大変そうですね。そういった状況をふまえ、新しい土曜校ではどのような対応しているのですか?

この3つニーズを1つのクラスで満たそうとするのには無理があります。そうするともうコースを分けるしかないんですね。1つ目と2つ目のコースを持っている学校はたくさんありますが、この3つのニーズを満たすコースを作っている学校は世界でまだないんです。3コース作れればいいんですが財政的にも厳しく、新しい学校ということでそこまではできない。そこで、日本での受験を想定したレベルが高い帰国コース、中学校9年間で小学校6年間の国語の教科書レベルを学ぶメインストリームコースの2つを小学4年生から作ることにしました。

二極化している両極の子供達を救う事ができれば、3つ目の子供達は今の土曜校が救ってくれると思うんです。なので今の土曜校ともどんどん交流していき、将来的に3つのニーズをすべて満たした学校を作れれば子供達のために一番いいのかなと考えています。

そして、中学生の授業を午後に設定しています。現地校では土曜日の午前中にスポーツ活動があるため、今まで午前中の授業に来られなかったり、遅れてきたりしていた子供達がいたためです。
また、4年生から算数を選択性にしており、今まで国語に100時間、数学に100時間あてていたのを、国語120時間、数学80時間にしています。国語の勉強にゆとりをもたせるためです。

 
 

--先日開催された学校説明会について教えてください。

150人以上の方が参加されました。待機児童の保護者の方が多かったと思いますが、まだ1歳に満たない子供を連れて、将来のために備えて説明を聞きに来ている保護者の方もいたのには驚きましたね。

私が話したことの中で、参加した方々が特に反応を見せた話題が2つありました。
1つは教科書にかける時間について。小学校2年生を例にとりますと、日本の学校では、1単元に10時間をかけて教えるとします。それに対し土曜校ではたったの3.8時間しかかけられないんです。別の言い方をすると、日本の学校では年間280時間を1冊の教科書にかけるのに対し、土曜校では120時間しかかけられません。さらに来年からは日本で教科書にかける時間が315時間に増えることになっています。その教科書に対して土曜校は依然として120時間しかかけられないのです。

この話をした時に、会場から驚きの声が上がりました。子供達にどれだけ負担がかかっているのか、土曜校がどれだけ大変なことをしているのかを数字の上から実感していただけたのだと思います。

もう1つは、小学6年生と中学3年生の教科書のエッセイの内容について。2つをスライドに映し、どちらが中学3年生用のエッセイか参加者に考えてもらったのですが、皆さん判別をつけるのに苦労されていました。永住の子供の保護者の中には、中学生に小学校の教科書を学ばせるということに少し抵抗がある方もいらっしゃいます。しかし小学6年生の教材でも、中学3年生用の文章と区別がつけられないくらいきちんとした文章を使っています。小学校の教科書をしっかり学べば、雑誌や新聞の基本的な文章は十分理解することができるんです。

 
 

--なるほど。教育現場に長く携わっている先生だからこそ分かることですね。
--話は変わりますが、メルボルンの印象について教えていただけますか?


いい街ですね。住む環境が格別にいいと思います。気候も大分慣れました。物価が高いというのはちょっと庶民にとって大変ですがね。


 

--それでは最後に、子供を持つ親御さんと教員に興味をもつ若者へメッセージをお願いします。

まず保護者の方へですが、言葉の指導、特に母語の指導をご家庭でしっかりしていただきたいと思います。7歳までに第一言語になる母語をしっかりと教え、その上で第二言語に触れさせるというのを始めて欲しいです。それが今までの状況をみていて大切だという気がします。教育の面から、考える力というのは非常に重要です。言葉は考えるためにあり、考えるためには言葉が必要といわれています。きちんとした言葉があって初めて深く考える事ができるのです。

次に教員に興味を持っている人達へ。実は教員探しには苦労するんです。オーストラリアの人に日本語を教えていたという人はよくいらっしゃるんですが、日本語ネイティブの子供に日本の教科書を使って教えたことがあるという人は少ないんです。この2つはやっぱり教え方が違うんですよね。でももしここの地域にいる方で、日本の教科書を使って子供達に教えたいという方がいたらぜひ連絡していただきたいと思います。ボランティア的な部分も多いため、子供たちが喜ぶ顔を見て、奉仕してよかったと思えるような先生を募集しています。自分の経験と力量を広げるためにもとてもいい経験になると思います。

--ありがとうございました

 

---編集後記---
穏やかな口調で、分かりやすく話してくれた藤家先生。メルボルンの子供達の教育へかける真摯な姿勢には、本当に尊敬させられました。またご趣味も多彩で、カントリーミュージックに至っては、カントリーの聖地でもあるアメリカのナッシュビルまで訪れるほどだとか。仕事も趣味も好きなことへ情熱的に取り組む姿勢がとても魅力的に映りました。新しい学校を立ち上げるということで色々大変だとは思いますが、子供達の為にもぜひ頑張っていただきたいと思います。

 

メルボルン補習校
(英語名:The Japanese Saturday College of Melbourne)
住所:9 Holloway Rd, Sandringham East, VIC 3191
Email: inquiry@jsc-mel.com
Web: www.jsc-mel.com
 

コメント

以前のコメント

白鳥   (2011-03-01)
ある意味楽しみ。
保護者   (2010-12-20)
多くの保護者や子供たち、そして教員らも待ち望んでいた新土曜校です。 学校運営の成功の鍵は、運営形態と理事会にあると言わざるをえません。新土曜校の強く、適切なリーダーシップのもとに各方面から協力者が集まるはずです。また、保護者の賢明な判断によって学校が成長していくものと思います。
母A   (2010-12-19)
メルボルン国際日本語学校に通学させていましたが、時間的な負担と子供の興味の移行が重なり退校しました。9年間で小学6年生レベルのコースがその頃あれば、息子には通わせて上げたかったですね。もう手遅れですが…;) 藤家先生の熱意が実行される学校になるようお祈りします。
ありがとう   (2010-12-07)
以前校長先生であったメルボルン国際日本語学校もこの先生のお陰でいい学校に再構築されたと聞いてます。 日本での長い経験がメルボルンで生かされてるのですね。
けん   (2010-12-02)
大変興味深いインタビュー記事でした。今後もこういった教育関連の記事があれば嬉しいです。他にも、地元の小学校、中学、高校の先生や校長などのインタビューがあると、子供を持つ親にとっては面白い内容になると思います。
えんこなおい   (2010-12-01)
色々な分野で色々な日本人が活躍しているのが嬉しいですね。こういう所でしか知ることができないのでナイスです。

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