アーティスト 加藤 かおり インタビュー
日本の折り紙がアートへ!
2010年5月28日掲載
メルボルンで行われる、注目の若手アーティストを集めたアートのお祭り、ネクスト・ウェイブ・フェスティバル(Next Wave Festival)に参加。ガートルード・コンテンポラリー・アート・スペース(Gertrude contemporary art space)にて展示をし、一気に注目を集めた日本人アーティストの加藤かおりさんにインタビュー!
[プロフィール]
加藤 かおり
アーティスト。折り紙の作品を中心にメルボルンで活動している。北海道 幕別町出身、ビクトリアン・カレッジ・オブ・ザ・アーツ(Victorian Collage of the Arts)メルボルン大学、大学院修士
インタビュアー:中村紀子
--メルボルンに来たきっかけを教えて下さい。
最初メルボルンに来たのは、2週間のホームステイプログラムに参加した時です。
当時は学校以外でも英語を習っていて、その教室が毎年メルボルンでのホームステイプログラムを設けていたので、高校1年生の時に参加してみました。
もともと留学に興味があり、その時のホームステイ経験から、今度は1年間メルボルンへ留学したいと考え、17歳の夏に渡航しました。
それが高校卒業まで、大学卒業までと、日本へ帰る予定を伸ばし続けてしまっています(笑)
--メルボルンでアートを勉強していて良かったことは?
メルボルンは芸術の街とも言われているように、アートや、デザイン、ファッションのイベント、企画もたくさんあって、とてもいい環境だと思います。沢山のところにアーティスト・ラン・スペース*があり、学生の頃から展示をする機会を作る事が出来る事はとても大きいと思います。
また、アート界で重要 な人達も、アーティストの知名度にあまりこだわらず作品を見てくれると思うし、作品が面白ければ、学生であっても無名でも、大きな展覧会やアートフェアの参加に招待してくれる事があるので、そういった所は良いなと思います。
また、卒業後もパートで何か仕事をしつつ、アトリエを借りて制作を続けている人たちもたくさ んいるので、いろんな面でやりやすい環境だと思います。
※ Artist run space:アーティスト達が運営しているギャラリーなどのこと
--逆に難しいことは?
アート制作している人が非常に多いので、いつも競争率が凄く高く感じます。
また、私が通う学校は、コンセプトを土台に教えていて、あまりビジネスや技術を学ぶ事がありません。だから、学校が終わった後の芸術関係の就職の事を考えると、少々微妙なところがありますね。
後はあえて言えば、ビザにいつも悩まされることでしょうか・・・。
--何故折り紙なのですか?
小さいころから折り紙が大好きで、いつも時間があれば、本を見ながら色々な物を作りました。私が小さい頃は、まだ現代の子どもたちが持っているようなおもちゃやゲームはなかったし、やっぱり折り紙で、おもちゃや、かぶるものを作って遊ぶことが多かったです。 ある程度練習していくと、今度は自分で幾何学模様や、折り方を作り出していく事が出き、折り方を色々研究しました。
でも、複雑な折り紙や模様ほど、一枚に込める時間が大きくなります。自分の手が紙に触れるのも当然多くなります。
自分の手で何度も素材に触れ、それがそのまま形になっていき、作品になっていく。 このプロセスは自分の中で大切だと感じています。
じっくり触れて折って作れば作るほど、なんだか自分 という人、素質が、紙に写り込んでいくようだから。
ちなみに、布やプラスチックでも挑戦してみましたが、どれもちゃんと折る事が出来ないか、途中で破れました。
--かおりさんの紙に対する考え方を教えて下さい。
紙はとっても凄いものだと思います。
紙は、生活の中でいろんな事に使われています。人々の言葉を運ぶ道具にも使うし、写真や絵など、何かの出来事、その状況、時間、色、雰囲気を保存する時にも使われます。
紙という身近な素材を使って(私の場合は折って)何かを作るという事は、かえってこれがアートだ!!と上から目線にならず、でもそんなに頭でっかちな事でもない・・・。紙は面白い位置にいる素材だと思っています。
それに紙って、破れるし、水がかかればすぐによれちゃうし、日がたてば色あせるし、燃えちゃうし、ぐしゃっとつぶす事も簡単にできる。
でもどこか驚くほど強い。 鉄とかプラスタとか、そういう硬くて丈夫な素材より、なんだかその壊れやすさ、崩れやすさ、変わりやすさ、または扱いづらさといった所は、現代の不安定な世の中にちょっと似ていると感じるところがあります。
最近は、自然界の幾何学構造からインスピレーションを受けて、それに基づく模様を折る事が多いです。
今現在は 自然、自然現象をおもなトピックとし、その中にある、構造、要素、それらを見たときの現代の人間の心理の移り変わりなどからインスピレーションを見つけて、幾何学模様の折り紙を使いながらそれらを追求中です。
--ネクスト・ウェイブ・フェステバルと通して個展をした感想を教えて下さい。
今回のグループ展は、ネクスト・ウェイブの若手のキュレイターを育てるプログラム、エマージング・キュレイター・プログラム(Emerging Curator Program)に採用されたアヌッシャ・ケニーさんが企画した展覧会になっています。
キュレイター*と一緒に仕事をした事はもちろん、一緒に展示をされた他のアーティストさん達との仲も深まり、展示しているギャラリーの人たちからも学ぶ事がたくさんありました。キュレーターの方が声をかけてくれて、そしてこのような形で作品を展示させてもらった事は、色々な意味で勉強になったので大変うれしいです。
*キュレイター(curator):展覧会を組織する人のこと
--これからの目標を教えて下さい。
まずは、自分のペースでじっくり研究を続けていけたらいいなと思っています。
また、メルボルンだけではなく、他の州や、海外でも制作や、展示ができるように取り組んでいきたいです。
現在行われている個展
『Mercy Street』
展示期間:2010年5月14日-6月12日
アーティスト: Sherry McLane Alejos (AUS/MEXICO), CJ Conway (AUS/US), Kaori Kato (AUS/JAPAN), Alanna Lorenzon (AUS), Nicholas Waddell (AUS)
キュレイター: Anusha Kenny
Gertrude Contemporary Art Space
住所:200 Gertrude Street Fitzroy Victoria 3065
ホームページ:http://www.gertrude.org.au
営業時間:火-金 AM11 - PM5.30 土 AM11- PM4.30
『PAPERWORK 1』
展示期間:2010年5月26日- 6月13日
c3 contemporary art space
The Abbotsford Convent
住所:1 St Heliers St. Abbotsford VIC 3067 Australia
電話番号:9415 3600
営業時間:水-土 AM10 - PM5
ホームページ: http://www.c3artspace.blogspot.com
これから予定している個展
2010年7月末~
ホテル・ソフィテル(Luxury Hotels Sofitel)メルボルン・オン・コリンズ(Melbourne on Collins)ロビーにて。
[インタビューを終えて]
私たちが日常的に使っている紙。それに対する情熱が感じられました。展覧会も多くの方々が訪れ大成功でした。ぜひ読者の方々にもかおりさんの作品を見にギャラリーに足を運んで欲しいです。