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メルボルン日本人学校校長 丸本 亙先生 インタビュー

“何事にも挑戦”その姿勢を子供たちへ伝えたい

2009年5月21日掲載



【プロフィール】
丸本 亙 Wataru Marumoto
1954年生まれ。横浜出身、埼玉大学卒業。日本では、31年という教員生活の中で、3年間横浜の小学校にて校長も経験している。息子と母親を日本に残し、2009年3月14日に来豪した後「メルボルン日本人学校」の校長に就任し現在に至る。

インタビュアー:長谷川 潤、武吉 恵理

 

--今回メルボルンにいらっしゃったきっかけについて教えていただけますか。

本当のきっかけというのは、私の妻の方が「ぜひ海外へ」という希望があったことです。ちょうど妻と、海外に出たいねという話をしている頃に、海外での教員募集があるということを知りまして応募しました。その後、横浜市と文部科学省で面接を受けて海外派遣の名簿に載りまして、一年間待った頃にメルボルンへ行ってくださいと文部科学省から通知をいただきました。


--その通知をいただく前に、プライベートでメルボルンにいらっしゃったことは?

実は来たことがありませんでしたので、最初メルボルンと聞いても、どんな場所か分かりませんでした。しかし、色々な方から、メルボルンは大変素晴らしい街で景色も綺麗で、人々もとても温かいという話を聞きました。本当に素晴らしい街に行けることになったという思いで、今年の3月14日にメルボルンにやって来ました


--メルボルンに派遣されると最初に聞かれたときにどう思われましたか?

大変嬉しかったです。文化的に素晴らしい街だということもありますが、個人的には時差がないことが良かったです。子供たちを日本に残してきていますので、あまりにも時差がありすぎると連絡を取りにくくなってしまいますから。ですが今は時差が1時間ですので、時差を気にすることもなく日本にいる三人の子供たちとスカイプを通して連絡ができるので嬉しいです。


--実際に来られて、メルボルンの第一印象はいかがでしょうか。

やはり、イメージしていた通りです。街並みもきれいですし、人々も優しいですね。近所の方も、朝会うと気軽に声を掛けてくださいます。実は英語が大の苦手なものですから、そういった場面でもなかなかお話ができないのですが、こちらの方は簡単な英語を使って、身振り手振りでコミュニケーションをとってくださいます。そういった所からも、本当に優しい街に来たなという思いがあります。


--メルボルン日本人学校の第一印象について教えていただけますか。

日本では、生徒数が大体800人程在籍している大規模な学校にいました。それとは対照的に今回は62名という小さな学校に来ましたが、始業式、入学式に子どもたちに会うと本当に明るくて可愛いです。そして前向きですね。早速、これは楽しみだなという印象を受けています。62名という人数ですから子供たちの顔も名前もすぐに一致すると思います。今で大体3分の2ぐらいの子どもたちの名前と顔が一致するようになってきたので、ぜひ早く全員の顔と名前を覚えて積極的に接していきたいなと思っています。

 

--これからの学校経営にあたって、何かテーマや目標などがあればお聞かせください。

小鍛治先生(前校長先生)の経営方針も当然引き継いで行きますけれども、そのうえで「楽しい学校を作る」ということに重点を置いていきたいと思っています。私自身、これまで学校経営をしてきた中で、学校自体が楽しいというところからスタートしていかなければならないという思いがあります。“楽しい学校作り”というのは、子どもたちが学校に来て勉強がわかる、そして友達関係が上手くいっていつもニコニコして学校から帰れるということだと思っています。そうなると保護者の方々も安心していただけると思います。そんな学校を作っていかなければいけないのではないかと思っています。児童生徒皆が“楽しいな”と思えて、来ていただいた方にも“楽しいな” “いい学校だな”と思っていただけるような学校を作っていけたらなと思っています。


--海外から見てみて、改めて日本の教育の良い点というのはどういったところでしょうか?

他との比較はまだできない状態ですけれども、日本の教育の良い点は、子どもたち一人一人を大切にして指導していこうというところですね。個性を伸ばしていくという部分では日本の教育は優れているのではないかと思います。


--日本のメディアは現在の日本の教育現場について色々と取り上げていますが、先生は現在の日本の教育現場についてどう思っていらっしゃいますか。

学校現場の中で色々と問題になっているというよりも、メディアがいじめや学級崩壊の問題を多く取り上げているという印象を受けますね。実際に現場にいますと、いじめや学級崩壊がそんなに多いわけではありません。メディアで取り上げられてしまうと、当然みなさんはそちらに目がいってしまいますよね。日本の各学校ではそれぞれ素晴らしい教育をされているところが多いですし、また子どもたちも前向きにやっている子たちが多いと私は思います。もちろん、そういう問題がある学校もありますが、その学校はその学校なりに問題を解決しようと多大なる努力をされていると思います。ですから、私はそういった問題はあまりクローズアップされない方がいいのではないかなという思いは持っています。


--少し抽象的な質問になってしまうかもしれませんが、先生にとって「教育」とは何でしょうか?

やはり子どもたち一人一人の成長をしっかりと見取る。先生がそういう形で関わっていき、一人一人の学習のレベルと人間性を引き上げていくことだと思います。


--オーストラリアでは日本語教師を目指してがんばっていらっしゃる方がたくさんいるのですが、これから教師・教員になる方、若い世代の方へ、先輩として何かメッセージなどございますか?

一番大切なのは“子どもが大好きであること”。子どもと関わっていることが楽しいという気持ちがないのであれば、正直言って教師になってほしくないですね。仕事としてお金を稼ぐために先生になるのではなく、やはり子どもたちと関わることが楽しい、子どもたちを成長させることが、僕にとって、私にとって素晴らしいことなのだという思いを持っている、そういう意志の強い方に教師になってもらいたいなと思います。


--先生はどの教科を教えていらっしゃるのですか?

大学ではもともと数学・算数でしたが、途中からは体育になりました。学校の事情ですが、どうしても小学校には男の先生が少ないので、初めて勤務した学校で体育をやるようになってから現在に至っています。


--教科それぞれに特徴があると思うのですが、体育の魅力は何でしょうか?

“出来るようになること”ですね。私は小学校で体育を教えるにあたり3つの目標をもっています。跳び箱を飛ばせてあげたい。鉄棒で逆上がりができるようにさせてあげたい。水泳で25メートルを泳がせてあげたい。この3つが出来るようになるというのはすごく大きい事だと思います。私の経験上、この中のひとつが出来るようになって学習の力も伸びたという子がたくさんいます。夢中で挑戦したことによって、やれば出来るというのが分かり、勉強も頑張ってみようということにつながり、学習の力も伸びたという子がたくさんいますから。私はこの体育という教科は素晴らしい教科だなと思いますね。初任の頃の学校は、水泳大会があったりマラソン大会があったりという形で、みんなで競い合いあった時代でした。今の日本では、競い合うということが難しくなってきている一面もあり、マラソンも長い距離を走らせるということはなくなってきました…。でも、体験したことは必ず活きてくると思っています。


--先生はなにかスポーツなどされていますか?

私はサッカーが大好きで、小学校5年生の頃からサッカーを始めました。教員になってからもずっと続けていまして、40歳ぐらいまでやっていました。最近はあまり動けませんので、もっぱらサッカー観戦をしています。自分の好きな日本のチームが「浦和レッズ」なのですが、横浜から埼玉まで応援しに行っていました。横浜にもサッカーチームがありますが、私の大学が浦和にあった関係で浦和のチームが好きですね。


--6月に行われる、オーストラリア対日本の試合には行かれるのですか?

はい、もちろん見に行きます。まだ日本にいる時に、こちらの先生からメールをいただいたのですが、その先生のメールアドレスに“レッズ”という言葉が入っていまして。ということは「浦和レッズ」のファンの方だなということで意気投合し、連絡を取っていました。その先生に、オーストラリア対日本のチケットを取りましょうか?と誘っていただき、早速チケットも取っていただきました。日本で行われた対オーストラリア戦の試合は横浜スタジアムでしたので、見に行きました。実は自分の教え子に日本サッカー協会に勤めている者がいるものですから、できれば本校に来てもらえないかという交渉をしているところです。


--では、オーストラリアに来たからこそ、これからやってみたいなということはありますか?

実は私は旅行が大好きで、一応日本は全県周っています。ですから、オーストラリアにも素晴らしいところがたくさんあると聞いていますので、是非出かけていきたいと思っています。また、たくさんゴルフ場があるということも聞いておりますので、ゴルフも是非させていただきたいなと考えています。


--先生のお気に入りのアイテムやこだわりなどはございますか?

特にこだわっている事というのはないですね。ただ、スポーツが好きですからスポーツ関係のものを集めたりしています。特にサッカーのユニフォームとかですね。この間フッティーを見させていただきました。日本ではあまり知られていないスポーツで、またラグビーとも違うので興味深く見させてもらいました。

--愛読書やオススメの本などは?

そうですね。私が読むのは推理小説が多いですね。西村京太郎や森村誠一の推理小説をよく読んでいます。


--音楽はいかがですか?

実は音楽は苦手でしてね。でもカラオケは大好きです。演歌など、歌うことは大好きなのですが、楽器が出来ないものですから…。


--カラオケで歌われる十八番は?

よく歌うのは、「酒と泪と男と女」ですね。先ほどもお話したように英語が苦手なので、日本から持ってきた日本のCDを休みの日にゆっくり家で聞いています。


--先生の座右の銘、または好きな言葉などありましたら教えていただけますか?

座右の銘といわれると、それほど大袈裟なものはないのですが…「成せば成る 成さねば成らぬ何事も 成らぬは人の成さぬなりけり」という言葉が私の心の中にあります。やはり何でもやってみなきゃダメ、挑戦してみなきゃ何事も前に進まないというのがありますからね。挑戦してほしいなという気持ちで、よく入学式などではチャレンジということについてお話したりしています。自分自身もこれからも挑戦していきたいなという思いをもっています。


--日本人学校の中で、これから先生が挑戦して行きたいことは何かございますか?

これからもっと学校をオープンにして、保護者の方にもどんどん学校に来てもらいたいと思っています。安全の問題上、すべてオープンという形にはなかなか出来ないのですが、出来る限り保護者の方に学校に来ていただき、学校の様子を実際に見ていただいて、学校に対する思いとかを話していただければと思っています。また校長室もオープンにしたいという話をしています。そういう形でいろんな方とお話して、学校をより良い方向へ進めていけたらいいなと思っています。


--では、保護者の方へ伝えたい事とは?

学校へ是非足を運んでください。そして、思いを学校に伝えてください。出来ること出来ないことがありますから、すべてOKとは言えませんが、まず伝えていただかなければ何を望んでいるのかが分かりませんので、是非いろんなお考えを出しいただけたらと思います。


--生徒の皆さんに伝えたいメッセージは?

可能性がたくさんある子ども達ですから、失敗を恐れずに色んなことに挑戦してほしいです。そうすることによって、また日本に戻った時に活きてくることがたくさんあると思います。オーストラリアでしかできないこともあるだろうし、あるいはオーストラリアだからこそできることもあるだろうし、いろいろなことがあると思います。できれば失敗を恐れずにいろいろなことをやってほしいと思いますね。


--先生が尊敬する方はいらっしゃいますか?

特に尊敬している人というのはいないのですが、自分が教員になりたいと思ったきっかけを作ってくださったのが小学校1年生の時の担任の斉藤先生でした。今でも年賀状のやり取りをさせていただいていますが、尊敬という形とは異なるかもしれませんが、私の進む道を決めさせていただいたという点からは斉藤先生が尊敬できる方のように思います。


--それはなぜ?

そうですね。斉藤先生は本当に優しかったです。それで学校に行くのが楽しかったですね。なので、自分も先生になれたらいいなとほのかな思いを抱きました。小学校の卒業文集には学校の先生になりたいと書いています。ですから、そういう意味では自分の目指す道に進めたのかなと思っています。そのきっかけを作って下さったのが、1年生の時の担任である斉藤先生なのかなと。


--最後になりますが、オーストラリアで日本語を勉強されている現地の方にメッセージをいただけますか?

日本語は、一つの言葉でもたくさんの表現の仕方があって、凄く優しく伝えられたり厳しく伝えられたり、言い方によって変わってきます。そのニュアンスを掴んでいただけると、日本語って楽しいなと思っていただけると思いますね。例えばこちらにきて1番思ったのは、「よろしくお願いします。」という言葉を英語で伝えたいのですが、そういう言葉にぴったりの英語が無いということでした。その他にも、「いただきます」、「ごちそうさま」という言葉がありますよね。それらも英語で何と言うのですかと聞いたところ「無い」といわれました。日本の美しい言葉をオーストラリアの方にも知っていただいて、使っていただけたら嬉しいなと思いますね。




メルボルン日本人学校HP:
http://www.jsm.vic.edu.au/

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