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今、やりたいことをやっているから、後悔はない

22歳の佐藤健選手、AFLローカル・リーグでプレー中!

2013年5月7日掲載

 

 

佐藤選手とUpway TigersのDain Howeコーチ

 


今、シーズン真っ盛りのAFL。



大スタジアムで数万人という観衆に囲まれながら、スター・プレイヤーたちが最高峰のプレーを繰り広げるAFLプレミアシップ・リーグは、この季節、ファンならずとも必ずどこかで目にし、耳にしているはずだ。

 

このAFL、実はプロ・リーグ以外にも国内各地に数多くのセミプロ、アマチュア・リーグが存在するのを知っているだろうか?

 

今のようなオーストラリア随一の巨大なプロスポーツ・リーグとなる前、1960年代ごろまでは、地元出身の青年たちが仕事の合間にプレーするという、地域に密着した競技だったAFL。その地元感が今も息づくのがこのローカル・リーグだ。



実際にローカル・リーグのゲームに足を運ぶと、プレーヤーの実力、組織としてのリーグとチームの規模、サポーターの数…どれを取ってもあなどれないレベルの高さに驚く。大きなチームは60人のプレーヤーを抱え、出場できない選手もいるほど。コーチやトレーナーも複数名おり、大きなクラブハウスやメンバーシップ制度で固定ファンを持つチームもある。

 

AFL発祥の地であるVIC州は特にその数が多く、2013年現在でメルボルン近郊・地方にまんべんなく50近くのリーグが散在。それぞれに6~10以上のチームが所属し、4月から9月までの冬の間、地元のグラウンドで熱戦を繰り広げる。いかにこのスポーツが人々に愛され、プレーされているか。ローカル・リーグはその層の厚さを証明する。


そんなローカル・リーグの1つYarra Valley Mountain District Football Leagueで、プレーする日本人青年がいる。


5月4日に行われたゲームで、第1クオーター終了後、コーチの説明を聞く。
リザーブのスターティング・メンバーとしてプレーした。

 

佐藤健、22歳。東京の駒沢大学を今年卒業、3月から同リーグの名門チームUpway Tigersのメンバーとして、楕円形の赤いボールを追う。


日本人の父、アメリカ人の母を持つ4人兄弟の長男。中学、高校では遊び程度に友人と野球、バスケットボールをしていたくらい。楽しかったが、続けるほどではなかった。


大 学でフッティーに出会い、AFL JAPANリーグの駒沢マグパイズで4年間プレー。当時いっしょにリーグで戦ったことのある友人曰くその実力は「飛び抜けていた」。日本代表チームの「サ ムライズ」キャプテンとして、2011年、メルボルンとシドニーで行われたインターナショナル・カップに出場。サムライズは21チーム中12位とまずまずの 結果ながら、佐藤はWorld Teamの選手として選出された。World Teamのメンバー、つまりオーストラリア以外の各国から選り抜かれた、世界でもっとも優秀なAFLプレーヤーとして、認められたのだ。


それまでも佐藤の実力を知る関係者に「メルボルンでシーズンを体験してみたら」と勧められてはいた。それが、この2011年のインターナショナル・カップで経験を経て「またメルボルンに戻ろう」という決意になったという。日本でUpway Tigersの関係者に出会い、大学卒業後、このチームでのプレーを決めた。

 

 
「He has lots of energy」とコーチに言わせる佐藤は、体格、スタミナ、スピードともに地元選手にまったく見劣りしない



AFLの街メルボルンで、自分の実力を試してみたい。ここまで佐藤を夢中にさせるAFLの魅力は、何なのだろう。


「みんなが、ひとつになって戦える。これだけチームワークが必要なスポーツはほかにはないと思います」と佐藤。AFLを表現する言葉としてよく使われる「フィジカル」「当たりが強い」ということよりも、佐藤にとってAFLは「チームプレー」のスポーツだという。

 

Upway Tigersのコーチも、常に「チームに貢献するプレーをしろ」と言う。直接ボールに絡まなくても、味方のためにブロックをしたり、という小さなプレー。常にボールのありかを追っている観客の目には止まりにくいプレーだが、チームメイトは必ず見ている。

 

「うしろのディフェンスから『今のいいプレーだぞ』と言われたりすると、チームに貢献できたんだなとうれしくなる」。

 

そんなプレーの積み重ねで、味方の信頼を勝ち取っていく。これまで3試合出て、少しずつボールが集まるようになってきた。毎回、自分のプレーができるようになってきた。

 

 

 

Howeコーチは佐藤について、こう話す。「”ケニー(佐藤の愛称)”は3試合どれもよくプレーをリードし、貢献している。チームに加わった時点から、ほかのプレーヤーと同レベルでプレーできているし、チームのスタイルにもよく合う。ビープ・テスト(体力テスト)ではなんとクラブで一番の数値だったよ。ファースト・クラスの選手だ」と褒めちぎる。


今はリザーブ、2軍チーム同士の試合での出場だが、今後1軍チームのシニアでプレーさせる可能性は高いという。実は4日の試合でシニアにケガによる欠場者が出、ケニー出場のチャンスがあった。が残念ながらポジションが違っていた。


「He's a beauty(彼はすばらしいね)」。
 

チームメイトも「すごくいいヤツ、いいプレーヤーだよ」と評価し、サポーターからも「ケニーはよくやってるぞ」と愛される。


これら周囲の言葉を佐藤に伝えると「いや、まだまだです」と謙遜しながらも、「まずはシニアに上がって、プレーしたい」と意気込みを見せる。

 


この日はラダー1位のチームを107-46と大差で下し、Upway Tigersリザーブスは1位に。今のところ4戦4勝だ

 

まずは今のシーズン、9月までをやりきる。そのあとのことは何も決めていない。ずっとこっちにいるのか、フッティーをやりつづけるのか。それも分からない。


「将来に不安? もちろんあります。でも今やりたいことを、やっている。後悔はしていないです」。
 

今、自分が好きなことだけに、力を出し切りたい。先のことは分からなくても、今はただ、フッティーに打ち込んで、自分がどこまでたどり着けるのか、ギリギリまで試しみたい。
 

「見極めはつけよう、と思っています。止めるときはきっぱり止める」。
 

ストイックな情熱と、自分を客観的に見る冷静さを併せ持つ。


22歳の日本人プレーヤーは、AFLの本場メルボルンでどこまでその実力を見せていくことができるか。シーズンは、まだ始まったばかりだ。

 

佐藤健選手ブログ:ken-sato.doorblog.jp

クラウドファンディング・サイト『WESYM (ウィシム)』で、佐藤選手を支援しよう!:wesym.com/project/kensato

 

文・写真:田部井紀子

コメント

以前のコメント

ジャッキー   (2013-05-10)
頑張れケニー!! 日本から応援していますよ。 いつか応援に行きますね!!MCGだったら最高だな。 JAFLも応援しています!!

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